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雷国の武道家と水国の格闘家……5

 雷国で力をつけた五善は、門下生達を各々の故郷に帰郷させ、道場を開くように伝えていた。


 そんな各国の道場も、時間と共に力を失う事になる。


 雷国では、五善の死後、残された地位と財を巡る家督争いが絶えず、家督を手にする為に力を付けるという、五善の目指した武を極めんとする理想とは程遠い状態になっていた。


 次第に力を失いながら、生き残る五善の子孫達、そんな没落という言葉が見えかくれする最中、力ある後継者が生まれ出す。


 しかし、それは兄弟で家督を争う血で血を繋ぐという結果に繋がっていく。


 兄よりも自身が優れると思う者は、兄を手に掛け、更に自身を脅かす存在は生まれて直ぐに事故に見せかけて消していくといった最悪の時代すら存在していた。


 だが、時代と共に武道を極めるという、考えは次第に薄れていく。


 拳を握る必要性を感じなくなった時代、赤進甲弾流は、完全に拳を捨てる道を進んでいく。


 その理由は、現在の師範となった五郎の兄により、鬼斬り刀を用いた剣術を取り入れるようになったのである。


 兄は自身の名を──雷剣と名乗り始める。


 そんなある日、五郎は他の兄弟達と食事をしている最中、凄まじい眠気に襲われる。


 遠退く意識、次に目覚めると、五郎の手足は椅子に縛りつけられていた。


「な、なんだよ、これ!」


 目覚めた五郎が声を出した瞬間、兄である雷剣が、五郎の顔を掴みあげる。


「よいか、五郎……貴様はオレに生かされたんだ! 今より格闘を捨てよ、剣を使え……よいな。その為にオレがお前に試練をくれてやる、お前の魂を削り禁術を授けてやるよ」


 五郎の兄は、弟の手足に禁術を刻む。


「武道など、捨てよ! 貴様には意味がないからな……だが、最後に兄としての優しさだ。禁術の解き方を教えてやる……それは魂を削る覚悟をすれば、禁術は解除される」


「そんな、兄貴……嘘だよね、そんな事って」 


「お前はオレの弟で唯一、剣を握らなかったからな、オレはお前が大切なんだ……どれくらい大切かわかるか? わかりやすく見せてやるよ……五郎」


 そう語ると雷剣は、弟である五郎の前で剣の扱える雷剣の弟であり、五郎の兄にあたる二人を死に至らしめるまで、剣の修行と語り、笑いながら切り刻み続けたのだ。


 五郎は現実を直視出来ず、兄からの洗脳が始まり、武を極めんと志していた五郎の心にも暗示が刻まれていく。


 そんな五郎の心に光が差し込んだのは、幼馴染み達の存在であった。


「五郎ッ! なんで剣なんか? アンタおかしいよ!」


 幼き日の百姫の叫びにも似た訴えが続いていく。


 しかし、それをよく思わなかった雷剣は、五郎に六国を旅するように命じる。


 五郎は、暗示が溶け掛けたまま、幼くして旅に出る事となる。


 その事実を知り、百姫は力をつける道を選択する事となる。


 五郎の暗示は静かに解けていく、そんなある日、雷国に戻った五郎に新たな命令が下される。


 逃がした風鬼を追うように命令され、氷雨や大牙と出会った事で暗示が解けていったのだ。


 そして、現在──五郎は魂を犠牲に禁術を解き、力を解放したのだ。


 五郎は、幼くして、その武の才能を露にしており、既に拳を捨て始めていた赤進甲弾流で(うと)ましい存在になっていたのだ。


 しかし、その反面、剣の際は余りなく……雷剣はそれを知ると、一族皆殺し等の噂を和らげる為に生かす道を選択したのだ。


 そんな五郎が拳を構える先には、水国の格闘家、慶水が拳を構えている。


「雷国、伝説の赤進甲弾流は死んだと聞いていましたが、嬉しく思います」


 そう語ると慶水は両手に異能を流し込む。


「お前、まさか……」


 五郎の反応に頷く慶水が口を開く。


「えぇ、私はその昔、雷国で戦った赤進甲弾流、初代師範──五善様と共に戦った門下生の子孫です」

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