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雷国の武道家と水国の格闘家……4

 傲慢な程の武への執着を語る五善ごぜんは、怒りに満ちた荒々しい轟雷(ごうらい)が放つ剣術を間近で観察するようにして、紙一重(かみひとえ)で回避して見せる。


 轟雷の放つ剣の速度は凄まじく、門下生達すら、見切れない程であったが、五善はそれを確実に回避し、更に笑みを浮かべ始めていた。


「よいのぉ! 実に迷いの無い一振りではないか、実に見事……じゃが、それが限界か」


 次第に轟雷の肉体に掛かる負荷が掛かり始め、筋肉が熱で膨張し、骨を(きし)ませていくように“ググッ”と音が鳴り始める。


 五善からは、楽しそうな笑みは消え、残念そうな悲しみに満ちた表情が露になる。


「ヌシとは、この先も戦って見たいと感じたが、残念じゃ……既に未来はないのだなぁ……二度目の死を、儂がくれてやる轟雷、あの世での手合わせまでに強くなっとれよ」


 五善がそう語ると、轟雷が大きく剣を振り抜いた次の瞬間、力を込めた拳が打ち出される。


 轟雷の脇腹から心臓と片腕をえぐるように放たれた巨大な(いかずち)をまとった拳が全てを削りとる。


 全体の1/3を失う形になった轟雷が正面に向かって倒れ込み、黒く濁った血液で大地が紅く染まる。


 片手を屍となった轟雷に向けて動かし、十字架を中に描くと両手を合わせる五善。


「本当に惜しい存在であった、ヌシの死は尊い物であり、救いにいけなんだ自身を今は呪うばかりじゃで」


 その瞬間、雷国傀動達が手も足も出なかった轟雷が完全に沈黙する。


 後方からは、前に押し出されるように、範囲型の攻撃が飛ばされており、二角や三角、無鬼の集団が一斉に五善率いる赤進甲弾流の門下生達に襲い掛かっていく。


 残った屍兵と鬼が勢いに任せて襲い掛かる最中、五善は退屈そうに顔をしかめる。


 その表情を見た門下生達が仕方ないといった表情を浮かべながら、屍達に次々と死を与えていく。


「五善様、未だに多くの敵が前にいるのですから、感情を顔に出さぬように御願い致します」


 門下生の一人がそう語ると五善は、表情を改め、厳しい表情を露にする。


「そうさなぁ……急ぐかのぉ」


 両手に再度、雷を集めると五善は静かに駆け出す。


 屍兵達は、向かってくる五善に対して群がるように駆け出していく。


 次の瞬間には屍兵が吹き飛ばされ、肉塊に姿を変える。


 触れた全てを焼き尽くすような凄まじい雷と屍の焦げた臭いが血の臭いと共に戦場に充満する。


 そこからの戦況はあっという間に屍兵と鬼流の鬼が駆逐される形となり、雷国は厄介者としていた者達により、救われる事となったのだ。


 この雷国最大の危機は、五善を一気に表舞台へと駆け抜けさせる事となり、雷国に武道の流派、赤進甲弾流の名が知られる事となる。


 初代、師範──五善は雷国に新たな力の可能性を示し、武を極める道を死ぬまで貫くをやめず、生涯を武に捧げたのだ。


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