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氷雨と大牙……向かう先に4

 百姫の目の前の光景は想像したそれとは違っていた。


 血を流した同胞達、その中には銀大の姿があり、百姫の感情が沸き上がって涙に変わる。


 無言で銀大のそばに膝を下ろし、優しく抱き抱える。


「銀大、バカだねぇ……なんでこんな事」


「はぁ……はぁ……姐さん、すみません。ヘマしちまいました……」


「喋らなくていい……馬黄、銀大を頼めるか、少しでいいんだが」


 百姫の声に即座に反応し、武器を納めると馬黄が銀大の元に移動する。


 それを確認すると百姫は、ゆっくりと大牙に、頭を下げ、その足で氷雨と五郎の方に歩いていく。


 大牙が止めに入ろうとするも、氷雨が大牙にわかるように首を左右に振る。


 それを理解すると大牙は、少し心配しながらも指示に従った。


 氷雨と正面から向き合う百姫、そして、百姫が氷雨に向けて謝罪を申し入れたのだ。


「今回の件、此方の敗けを認める、勝手な話したが、見逃してくれないか、頼む」


 戦わずして敗北を認めると言う内容に馬黄を始め、皆がざわめき、耳を疑いながら、百姫を見つめる。


「な、何を言ってるんですか! 姐様、敗けを認めるなんて、私達はまだ、それに姐様の力なら、必ず勝てます!」


 馬黄の声に大牙が一瞬身構える、しかし、氷雨が大牙に動かぬように合図を送る。


 百姫もまた、馬黄に対して首を左右に振る。


「そんな、姐様……」


 小さな馬黄の声と共に、涙が頬を流れる。


 静かに百姫が喋り出す。


「あの傷だと、今すぐに治療しないとアイツは助からない……頼む受けいれて貰えないか?」


 氷雨は、軽く頷く。


「ああ、構わない。直ぐに治療してやりな、人間同士でやりあうのは苦手なんだ」


「恩にきるよ、アンタも来なよ。敗北を認めたんだ、襲うような真似はしないと、百姫の名に誓う、怪我してんだろ?」


 百姫の提案に五郎が賛成すると氷雨は、大牙を近くに呼び。


「大牙、すまないがそういう事だ、暴れんじゃないよ?」


「……わかってる、でも、氷雨に何かあれば、約束は破る……」


「嗚呼、その時は仕方ないさ……」


 話がまとまると、直ぐに銀大が雲船に運ばれていく。


 そして、百姫と共に、氷雨、五郎、大牙の三人も雲船に案内される事となる。


 複雑な表情の馬黄の姿があったが、それでも、皆が納得して、1つの戦闘が終結したのだ。


 雲船の内部は不思議な構造になっており、無数の広い部屋が橋により繋がれたような構造になっている。


 そんな雲船の内部では、大怪我をした銀大の治療が速やかに行われていく。


 長く他国に潜伏する事もある黒雷に取って、雲船程、安定した治療が出来る場所は存在しない。


 止血から、縫合と一命をとり止める為の処置に十数人の医療班が必死になっていく。


 銀大が落ち着くまでの数時間という時間の中で百姫と氷雨達が向き合い話す場が設けられることとなる。


 その間も、大牙に対する黒雷内部の視線は鋭いものであった事は言うまでもない。

 

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