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氷雨と大牙……向かう先に2

 一瞬で逃げ場を失う形となるが、大牙は誰よりも冷静であった。

 夜夢が一体化しているからであろう、落ち着いた様子で周囲を見渡すと、指示を口にしたのである。


「五郎さん、氷雨を守って、あと兵隊のことも頼みます……俺はあの顎髭(あごひげ)の男と、女の相手を出来るだけやってみる」


 五郎は耳を疑いながらも、怪我の悪化した氷雨が戦えない事実を理解していた。


 それと同時に大牙一人では、どちらとも対等には戦えない現実が存在していた。

 紅琉奈と一体化して、二人を相手にする事が唯一の突破口であると判断する他なかったのだ。


 そんな大牙と五郎の会話が終わるのを待ちくたびれたと言う表情で銀大が得物を力強く握り、一気に駆け出していく。


「だらだら、話してんじゃねぇよ! 姐さんにバレちまうじゃねぇか!」


 渾身の一撃が一筋の閃光となって五郎に向かって光の刃が放たれる。


「悪いがな、話が丸聞こえなんだよ! バカが!」


 五郎が放たれた閃光の斬撃、しかし、大剣を盾のように地面に突き立てると接触した瞬間、激しい光を放ち、刃が防がれる。


 五郎が“わかってた”と言わんばかりに、防御に徹した瞬間、大牙が新たな鬼斬り刀を握り絞めると、紅琉奈の能力を刀に流し込む。


 片手には鬼斬り刀を握り、片手に紅琉奈の力で手甲型の(ひじ)まで延びた盾が姿を現す。


 その途端、兵隊達に大牙が斬り掛かる。


 突然の事で動揺する兵隊達が、次々に大牙の刃に斬り伏せられていく。


「うわあぁ!」

「ちくしょう……腕が……」


 余りの早業に馬黄と銀大の反応が遅れた結界、五人の兵隊が手首に斬撃をくらい、つながっつはいるが、その場で武器を扱える状態ではなかった。


 慌てて馬黄が、部下と大牙を離すように雷砲(光る玉)を撃ち放つ。


「落ち着きな、チッ、私達がいながら、部下を不意打ちで負傷させたなんて、姐様に叱られるじゃないか!」


 激しい土煙が舞い上がる最中、銀大に目掛けて、大牙の斬撃が放たれる。


 銀大がなん寸かの僅かな距離で斬撃を回避した瞬間、大牙の力を甘く見ていた事実に気づかされる。


「馬黄、コイツは俺が相手してやる! 五郎の裏切り者を確実に仕留めろ!」


「命令とか、嫌い、でも、仕方ないわね……どっちが先に合流するかしら、まあ、いっか」


 大牙と銀大が真っ向から向き合う形になる。


 銀大の鬼斬り刀が、激しく輝き、稲妻をまとった刃で、大牙に向けて斬り掛かる。


「取り敢えず、お前も始末する対象なんでな、大人しく死んどけぇ!」


 勢いのある斬撃、大牙の鬼斬り刀に凄まじい一撃がのし掛かる。


 次の瞬間、銀大は大牙が刀を傾け、刃を滑らせる感覚に恐怖に似た感覚を肌に感じていた。


 大牙の手甲が前に突き出された瞬間、先端が鋭い刃に変化し、銀大の腹部に切先が突き刺さる。


「ぐっ……あぁ、やりやがる、だがな……甘いんだよ!」


 突き刺さった手甲をしっかりと握ると銀大は、大牙の頭部に目掛けて頭突きを放つ。


「う、あ」


 大牙が予想外の一撃に片目を瞑った瞬間、銀大の手が、手甲から離され、腹部から切先が流れるように抜けていく。


「アア、いてぇ……クソガキが……」

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