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氷雨と大牙……外海の悪夢5

 大牙は、静かに紅琉奈に手を伸ばす。


 傷だらけで大牙の手を掴むように手を伸ばし返す紅琉奈。


「紅琉奈、少し休んでる間に、俺に力を貸してくれ」


「……うん、全部を大牙に貸してあげる」


 紅琉奈が大牙の体内に吸い込まれていく。


 片目を紅く染め、片手に握った脇差しが紅琉奈の能力で立派な太刀に姿を変える。


 まるで、鬼になったような大牙の姿に敵味方関係なく、動揺させた。


「なんで、人間が人間を襲うんだよ……なんで……こんなにイライラさせるんだよ!」


 一瞬で空気を一変させた大牙に対して、船内からも次々に敵傀動と罪人達が姿を現す。


「片眼が色違いのガキが、そんな物を使えんのかよ? ははは」


「いいから、直ぐに片付けるぞ! 後ろの船からも直ぐに奴等が来る! 急ぐぞ」


 大牙の見た目を含め、子供であると判断すると、気を失っている氷雨と五郎に近づく男達。


「……近づくなよ」


「……? あはは」


 ニヤつきながら、歩みを止めない男達、大牙の言葉に聞く耳を持たない男達がゆっくりと近くと、気絶している氷雨と五郎に手を伸ばす。


 大牙は、静かに息を吐くと、鋭い眼光を、滑らせるように刃を追従させる。


 男達の伸ばされた腕が下から、宙に向けて、吹き飛ばされる。


「ぐあぁ、腕が、腕がッ!」


 それを合図に男達が大牙を囲むが、其処に優しく、人の命を大切に思う大牙の姿は存在しなかった。


 直ぐに氷雨と五郎を船尾に運ぶと、後ろからあがってきた豪雪の部下に二人を預ける。


「二人を頼みます。あと、船を切り離してくれ」


 その言葉に、質問をしようとする兵士、しかし、その言葉は、口から出る事はなかった。


 其ほどに、大牙の只ならぬ雰囲気に全員が飲み込まれていた。


 大牙の構えた太刀が力強く振り下ろされる、それと同時に次第に巨大化する太刀の姿があり、船尾から振り下ろされた刃は、斜めに鋭く船首まで到達すると、甲板から前方が海面に落下し、船が斜めに傾いていく。


「な、なんなんだ! アイツを止めるぞ!」


 男達が必死に動き出すも、大牙は表情を変えず、静かに刃を真っ直ぐに振り払う。


「お前達は、赦さないッ!」


 大牙の目から涙が流れ、悲しみが怨みに飲み込まれて、更に怨みは憎悪に浸食されていく。


 瞳が次第に赤黒く染まると殺気を、纏った刃が男達の悲鳴と共に全てを切り伏せる。


 大牙のそこからの行動は、皆が耳を疑う物であった。


 一人で、不確定船を沈黙させる結果となり、大牙はそれと同時に意識を失った。


 敵の生存者は数名、その者達も、手足には酷い斬撃のあとが残り、両足がない者すら存在した。


 不確定船は、完全に沈められる事となり、生き残った最後の軍艦には、乗船人数を越える人数が乗り込む事となった。

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