氷雨と大牙……外海の悪夢3
巨大な不確定船に対する奇襲は成功し、激しい反撃があったが、大牙達は勝利を勝ち取る結果となる。
しかし、その代償として、船首側から攻撃を開始した艦船一隻が、正面に設置されていた砲台により、船体に大きな損傷を受ける形となった。
艦船の航行は難しく、捕らえた不確定船の乗組員と戦闘員を考えれば、残り四隻の艦船では、移動が難しいと言う決断にいたる。
そんな最中、不確定船を鎖で繋ぎ、牽引しながら、港に戻る案が検討される。
話し合いの結果、巨大な不確定船を一度、沖に動かし、四方から鎖で連結し、前方と両サイドから、不確定船を引き、後方の一隻が動きを監視するという形で話が決まる。
沖に移動を開始した巨大な不確定船の全体が明らかになり、繋がれた四本の鎖により、牽引が開始される。
牽引されている船内では、簡単な尋問が開始され、船の目的と建造までの流れが明らかにされる。
切っ掛けは単純な物であった。
炎国で悪事を働き、島流しにされた一人の男がいた。
男は腕のいい造船職人であり、多くの炎国で使われる艦船の設計から造船を担う存在として、知らぬ者はいないとまで、炎国全土に名を轟かしていた。
しかし、男は最強の船を造船したいという欲に支配され、新たな船を次々に作り出していった。
そんな最中、事件が起こる事となる。
造船所の大爆発であった。
爆発が起きた理由は男の試作していた新型の船体用の炉が誘爆した結果であり、造船所のあった周囲を巻き込み、大きな損害を与えた。
罪人となった男は、罪状を伝えられ、島流しとなる。
その男は死ぬまで、造船を続け、後に流れついた罪人達が集まりだし、船を根城に造船が繰り返えされていく。
男が生涯を賭けて造り上げた最後の船が、不確定船であった。
本来の性能をいかせぬままに放置されていた不確定船は、帆を張ることで無理矢理動かしている状態であった。
そんな不確定船内に拘束されていた船員と傀動達は、港に戻る最中に暴れだしたのだ。




