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氷雨と大牙……洞穴の先に3

 突如として、姿を現した男達は、一斉に槍を前に構えると、鬼に向けて、槍を投げ放つ。


 次から次に投げらる槍、ニヤついた表情を浮かべていた男が腰にぶら下げていた、酒瓶を取り、口に酒を含むと一気に吹き掛ける。


「少し勿体無いが、最後の奢りだ! しっかりと味わえ、鬼野郎!」


『キサマッ!』


「鬼が言葉を発するまで、成長したか……随分だな、まあ、終わりには、かわりないがな」


 男は、煙草を取り出しマッチに火をつける。


「ふぅ~……煙草まではやらねぇぞ。あばよ」


 火の付いたマッチが鬼に向けて、投げられると、炎が一気に燃え上がる。


 最初の槍の殆どが、鬼の足に命中しており、逃げることすら出来ない状態の鬼が苦しみながら、燃えていく。


 そんな最中、氷雨も二体の鬼を凍らせる事で沈黙させていた。


 二体の鬼の顔が怨みに歪み、その顔を見つめ、微かに涙を流した氷雨は、氷に向けて、鬼斬り刀を振り下ろす。


 粉々になった氷から、黒い霧が生まれ、消えていく。


「さらばだ、大切な友よ……」


 臥弾に形見となるであろう、鬼斬り刀の先端を布に包む。


 終わりと同時に、氷雨の中で、多くの疑問が生まれていた。


 何故、出来たばかりの島に、臥弾の娘夫婦を模した鬼がいたのか……


 何故、人が踏みいっていない島に言葉を喋る鬼が存在したのか……


 そして、突如として、姿を現した男達は何者なのか……


 氷雨が慌てて、大牙達の元に向かうと、鬼に火を放った男が紅琉奈を睨み付けている。


「おいおい、噂の利庵を倒した鬼女か? って自己紹介しないとだな。俺は豪雪(ごうせつ)だ」


 不思議そうに紅琉奈を見る男、身長の高い威圧感のある風貌と鍛えられた肉体、少し長めの赤髪がボサボサの状態で更に荒々しい雰囲気を引き立てている。


 手に握られた戦斧(せんぷ)には、水国特有の水龍が彫られている。


「俺は水国の生まれでな、炎王に気に入られて、今は炎国の将をしている」


 軽い自己紹介が終わると、氷雨達も自身の紹介を軽く済ませる。


「でだが、アンタ等、他の島に調査に行くんじゃなかったのか? なんでこんな所に?」


 出来たばかりの島に氷雨達がいる理由を聞かれ、詳細を語る氷雨。


 島が突如現れ、襲われていた調査船を助けた話、更に乗ってきた調査船に負傷者を乗せて、逃がした話を伝える。


 しかし、豪雪は話を聞き、頭を悩ませる。


「そいつは不味いな……俺達は、被害のあった調査船の傀動から、緊急を報せる術式が届き、此の島に辿り着いたが、他の調査船からの術式は届いてないぞ?」


 その意味を理解するように頷く氷雨。


 氷雨達が乗ってきた調査船は、既に沈没している可能性が頭に過る。


 しかし、豪雪は更に最悪な推測を口にする。

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