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山を下って、野盗退治

 病み上がりの大牙を連れて、雪化粧に染められた山道を歩く氷雨。

 足取りが覚束無い大牙を気遣うように歩く氷雨。


 通常の倍程の時間を掛けて山の(ふもと)にある村に向かっていく。


 山を降りて直ぐ、休憩をする為、川沿いの立ち寄る氷雨と大牙、しかし、その直後、氷雨の瞳が鋭く輝く。


「待ち伏せ……じゃ、なさそうだな? 誰だい……ちょっと今、虫の居所が悪いんだけど?」


 川辺の林から複数の男達が武器を手に姿を現す。殺意の無い表情とは裏腹に太陽に照らされた刃が悪意を放つ。

 一歩前に出た、野盗の頭が目的を口にする。


「虫の居所が悪いんだとよ? なら、直ぐに退散するか、取り敢えず、金目の物と……いや、全部拐うとするか、ガキは安いが、いい面だしな……女も銀髪とは珍しい」


 明らかに欲に支配された表情を向ける野盗の頭は、喋るのをやめると手下に手で合図をする。


 氷雨を押さえようと男達が囲むように動き出す。

 男達が武器を氷雨に向けた瞬間、勢いよく複数の吹き矢が男達の首に目掛けて放たれる。


「大牙ッ! 先に手を出すな! どんな場合でも、先に手を出せば、筋が通らんだろうが、まったく……短気な奴め」


 五人の野盗がその場に倒れ、野盗の頭は一人何が起きたか理解できずに困惑したように辺りを見渡す。


「な、ちょ、ちょっと待てや! なんだ、こりゃあ……う、ウワアァァッ!」


 刀を手に氷雨に向かって走り出す野盗の頭、それを合図に氷雨が刀を抜き、速攻の峰打(みねう)ちを放ち、気絶させる。


「ぐぁ……」


 六人の野盗を撃退する事に成功した氷雨は、野盗が持っていた縄で全員を縛りあげる。


 それから直ぐに氷雨の拳骨が大牙の頭上から振り下ろされる。


「痛っ! 今の本当に痛いよ、氷雨」


「ちょっとくらい力を入れなければ、また同じことを繰り返すだろうが! 薬だと思って確り受け止めろ! 馬鹿弟子が!」


「次から気を付けるよ……」


「うむ、ならば、戦利品の回収といくか、手を出すなよ、大牙」


 そこから、氷雨は野盗の頭を押さえつけると、有り金と隠れ家の場所を聞き出す。


 隠れ家まで、案内させると確認後に村の付近まで連れていく。


 氷雨は野盗の人数分の丸薬を袋から取り出し、見せつけるように指で摘まむ。


「さて、丸薬を飲んで貰う時間だ? 嫌なら、無理矢理捩じ込むが、どうする?」


 ぼこぼこに腫れた顔面の野盗達は、無言で頷き、その丸薬を涙ながらに水と共に飲み干す。


 直ぐに野盗達は眠り始め、その様子を心配そうに見つめる大牙に氷雨は不敵に笑いながら、声を掛ける。


「安心しろ、眠っただけだ。まあ、数時間程、記憶がなくなるが、それは、それだ。こいつ等は村の前に放置して、先に別の村に向かうぞ、大牙」


 その後、野盗は村に発見され、町に運ばれる事となる。


 野盗が役人からの質問攻めにあっている際、氷雨と大牙は野盗の隠れ家から持てるだけの隠し金を強奪し、氷雨が買い出しの際に利用する山近くにある隠れ家へと運び込む。


 三回程の往復を終えると、氷雨は野盗の隠れ家に火を放ち、証拠をすべて灰にする。


「氷雨、本当に良かったの? 流石にやり過ぎじゃない?」


「悪党から貰うんだから、良いんだよ。それよりも、急いで他の村にも話をつけにいかないとな」


 氷雨は笑いながら、大牙と共に村を回り、猟師達が結界を破壊した事実を伝えて回った。


 その日は、山の下にある隠れ家に二人は泊まり、二日間掛けて、近隣の村を訪問したのだった。


 猟師の住んでいた村からは、村長から謝罪の言葉と僅かばかりの礼金が氷雨に渡され、和解と言う形ですべての話がまとまったのであった。

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