氷雨と大牙……上陸、鬼が生まれる島……3
氷雨の足元には、無数の引きちぎった蜘蛛の糸が付着しており、糸に絡まるように、石や草が張り付いている。
蜘蛛の体には氷雨と五郎の斬撃の跡が残るも、ダメージと言うほどの傷にはなっていなかった。
大牙は息を飲んだ。
氷雨程の実力者が、ダメージを与えられないような鬼の存在に、助けに行きたいと言う、気持ちと、“無茶をするな”と言われてきた、氷雨の言葉がぶつかりあう。
そんな最中、氷雨が五郎に指示を出す。
「もう一度だッ! 次の一手で決めるぞ、五郎ッ!」
「わかってやすよッ! ウリャア!」
氷雨ではなく、五郎が鬼斬り刀を構え、異能を纏わせた輝く稲妻の刃が蜘蛛に襲い掛かる。
その瞬間、蜘蛛の体が色を変え、五郎の力強い一撃がぶつかった瞬間、異能が跳ね飛ばされる。
異能が消えると同時に、鬼斬り刀の刃には、体に無数に空いた穴から糸が放たれ、切れ味を鈍らせる。
「くそ、またかよ!」
「まだまだッ!」
五郎の背後から、蜘蛛に向けて斬り掛かる氷雨、しかし、刃が触れた瞬間、蜘蛛の体から凄まじい勢いで、糸が氷雨に襲い掛かる。
氷雨の体が、勢いよく、吹き飛ばされて、木に体を叩きつけられる。
直ぐに氷雨は、体に張り付いた糸を水の刃で斬り、脱出を行う。
しかし、糸を完全に体から切り離す事が出来ず、更に氷雨の動きに枷が増えていく。
だが、その一連の流れは、大牙達に冷静な判断をさせる事になる。
再度、氷雨と五郎の連携攻撃が開始される瞬間、大牙は夜夢と一体化する。
そして、紅琉奈と大牙が五郎の一撃に合わせるように、奇襲を掛けていく。
蜘蛛も、突如として、現れた大牙と紅琉奈の姿に動揺するも、直ぐに向きを変更し、攻撃に対する防御を行おうとする。
しかし、三ヶ所からの一斉攻撃は蜘蛛の防御する事は出来ず、蜘蛛の体に深い傷が一気に刻まれていく。
氷雨が更に追い討ちを掛けるように、鬼斬り刀を体に突き立てると、異能を発動する。
蜘蛛の体内から、水の刃が一気に体外へと突き出す。
蜘蛛が、動かなくなると、氷雨はニッコリと笑みを浮かべた。
「大牙、本当にありがとうな、本当に助かったぞ」
島の鬼達の異常な強さに氷雨は、危機感を感じながら、次にどうするかを考え始めていた。