氷雨と大牙……上陸、鬼が生まれる島……2
二手に分断された事実と、予期せぬ、小鬼達の存在に覚悟を決める大牙。
しかし、敵の数は海上で戦った怪鳥と比べても多く、小鬼達の敵意は殺気となり、大牙達に向けられる。
「キギャアッ!」
まるで合図を送るように一体の小鬼が奇声を上げる。
その瞬間、小鬼達が武器を手に一斉に駆け出し、大牙達のもとに襲い掛かる。
だが、小鬼達の誤算は、紅琉奈の存在と、成長した大牙が、並みの傀動達よりも遥かに強かった事にあった。
飛び掛かる小鬼に対して、大牙が吹き矢を放ち、小鬼達の視線が一瞬、放れた瞬間、紅琉奈が全身を羽織っていた着物の袖を刃に変化させると回転するように動き、次々に小鬼を切り裂きながら、中心に移動していく。
その間も、夜夢が大牙に狙うべき小鬼を指示に、紅琉奈の援護を行う。
紅琉奈が道を作ると、大牙と夜夢が一気に駆け出し、洞穴へと突き進む。
洞穴へと侵入すると、武器を持たぬ小鬼達が慌てふためくも、大牙と夜夢は、容赦なく、小鬼に斬り掛かる。
外の小鬼が無惨に切り刻まれ、洞穴に合流すると、大牙と夜夢も相当数を倒した後であった。
紅琉奈も、大牙の戦いに若干の驚きを感じていたが、洞穴の先に存在する植物のような本体に殺気を向ける。
小鬼達が居なくなり、植物型の鬼が慌てて、形がまともに形成されていない小鬼を蕾から外に放つ。
しかし、外に放たれた小鬼は、その場で崩れ去っていく。
大牙が刃を向け、無言のままに植物型の鬼を一突きにする。
「クギャア……」
鈍い叫び声が洞窟内にこだまする。
瞬く間に、島での戦闘を終わらせた大牙達、その足で急ぎ、氷雨達を探しに向かう。
夜夢が杖を叩き、島全体を把握すると、顔を青くさせる。
「大牙、紅琉奈、ていへんだ、この植物型の鬼が、まだ、いっぺい居る! 先に何とかすねぇと、島全体が小鬼の巣になっつまうよ」
大牙は、悩む事をやめると、近場から植物型の鬼を駆逐する事を決める。
その提案に賛成すると、夜夢の案内で大牙達は次の洞穴へと移動していく。
植物型の鬼は、本体が身を隠し、兵隊である小鬼を作り出し、獲物を探すというタイプの鬼だと大牙達は理解する。
兵隊を駆逐する紅琉奈と、本体を叩く大牙、うまく立ち回るも、氷雨達の捜索は難しく、大牙達の心配が募っていく。
「くそ、なんで、こんなに!」
「できたばかりの島だって、いうのに、あり得ねぇ、数の鬼だなぁ」
大牙と夜夢の疲労も次第に溜まり出す。
紅琉奈はそんな二人を気遣うように、戦い続けており、太陽が次第に傾き出していく。
夜になる前に合流せねばと焦る大牙、そんな時、夜夢が慌てて声を出す。
「大牙、氷雨様たつが、近くにいるよ、なんかと戦ってるみてえだ」
夜夢の言葉に、大牙は合流を決める。
三人が慌てて駆け出していく先に、氷雨と五郎の姿があり、その目の前には、蜘蛛のような姿をした鬼の姿が存在しており、氷雨達は、戦闘の真っ最中であった。




