氷雨と大牙……海上の戦い目覚める力……2
緊迫した最中、紅琉奈が抱きついた瞬間、夜夢の手と大牙の手が触れる。
氷雨が目を疑うような輝きと共に、夜夢の姿が消えると大牙の腕に刻まれた【夜夢】の文字が光輝くと同時に、紅琉奈の姿も消える。
二人の姿が突如として消え、明らかに雰囲気が変化する大牙の姿がそこにあった。
大牙の片眼が紅く輝き、紅琉奈と同様に体を宙に浮かす。
そして、怪鳥型の鬼に向けて、鬼斬り刀を構えると、海上に向けて、駆け出していく。
調査船の甲板で防衛に専念する傀動達、そんな最中、五郎が慌てて、海面に向けて大剣を向け、異能を全力で発動する。
体内の電流が大剣を輝かせると、飛び立った大牙の背後に迫る怪鳥型の鬼の真下にある海面目掛けて、全力で振り切る。
「背中は、任せやがれッ! オリャッ!」
怒濤の叫びと共に五郎が電流を海面にぶつける、大きく破裂した海水が怪鳥に襲い掛かる。
いきなりの事に動揺する怪鳥に対して、大牙が即座に斬り掛かっていく。
大牙の片眼には、鬼の急所を教えるように体内の一部分が、激しく輝いて見えており、首を落とさずに、次々と怪鳥を沈めていく。
怪鳥達も、異変に気づき、直ぐに離れようとするが、それを氷雨は決して赦さなかった。
「私の弟子達が、奮闘しているんだ、最後まで付き合うのが礼儀であろう? ハアァァッ!」
海上に巨大な結界が作り出され、結界を無理矢理抜けようとする怪鳥達の姿が其処に存在していた。
「無駄だ、戦用の結界だ、ついでに言えば、水辺で私の結界から逃げられる奴なんて、いねぇんだよ!」
悪魔のような邪悪な笑みを浮かべ、腕を斜め下に向ける。
海面から海水が無数の手のように伸びると瞬く間に怪鳥達の羽を鷲掴みにしていく。
「大牙達の引き立て役というのも、悪くないか、大牙ッ! 五郎ッ! 殲滅させるぞ!」
「はい!」
「おいよ!」
「「ハアァァァァッ!」」
大牙と五郎の異能が同時に発動していく。
大牙が高速で空を移動し、急所を貫いていき、五郎はその反対側から電流を使い、怪鳥達を次々に感電させていく。
そんな勢いに当てられたのだろう、傀動達も攻撃に参加していく。
気づけば、調査船は次第に船体を襲われていた調査船の方に傾け、結界ギリギリの所まで移動していた。