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氷雨と大牙……炎王、閻樹と鬼々の紅琉奈1

 大牙達の前方には、薄い絹のみを纏った赤髪に褐色の肌をした美しくも危ない香りを漂わせた若い女性が腰掛けている。


「久しいなぁ、なんじゃ、氷雨? 数年会わなんだら、子が出来たのか、父親似か?」


 不思議そうにそう語る褐色の女性(炎王)


「違う、違う、こいつは大牙、成り行きで弟子となったんだ。あとは、大牙の後ろにいるのが、紅琉奈、黒服が夜夢、デカ物が五郎だ」


 全員の顔をゆっくりと観察する炎王。


「どれも、他国か……相変わらず面白いのぉ……挨拶が遅れたな、妾は炎国を束ねる炎王、閻樹(えんじゅ)だ。よくぞ、参られたな、あ、皆も面を上げよ」


 炎国炎王──閻樹(えんじゅ)


 赤髪に褐色の肌と、炎国でも、数少ない肌の色をした人物である。


 年齢は十八、幼さが若干残ってはいるが、豊満な胸と、細身ながらに引き締まった肉体が大人の女性としての危うい魅力を漂わしている。


 性格は面倒くさがり、しかし、民の為ならば、一国を相手に戦すら厭わぬ存在として他国に知られている。


 幼くして仮の王となった存在で、幼子でありながら、槍の才に恵まれ、重臣であった謙影(けんえい)に武を学ぶ事でその才を開花させる。


 その後、炎国の王としての試練を重ねていく事となり、家臣や民が閻樹の存在を真に認める頃には、百の無鬼を相手に槍を向ける程の勇ましき王へと変貌していった。




 氷雨は静かに頭を下げ、炎王に対して、最初に謝罪を口にする。


「今回の炎国国境に傷をつけてしまったのは、うちの馬鹿だ、本当に済まない」


 周囲がざわめく最中、閻樹(えんじゅ)が煙管を煙草盆(たばこぼん)に“カンッカンッ!”と、叩く。


「静まれ!」


 閻樹の言葉に静まる家臣達、そのまま、氷雨は話を続ける。


 相手が雷国の存在であった事実を語り終わると家臣達は再度ざわめき出す。


 しかし、次は閻樹ではなく、利庵が口を開く。


「閻樹様は、“静まれ”と言った筈だが……聞く耳なくば、その方らの耳は不要と判断するが……閻樹様、宜しいですか?」

 

 ざわめきは、一瞬で鳴り止み、閻樹に向かい皆が頭を下げる。


「おいおい、利庵……家臣()の耳がなくなってしまったら、妾が退屈する。客人も居るのだ、余り物騒な発言は控えよ、よいな?」


 利庵は静かに後ろに下がり、頭を下げる。


 氷雨の話をすべて聞いた後、閻樹が立ち上がる。


「妾の国に傷をつけたのはお前か? 小さいの……」


 大牙に扇子(せんす)を向けながら笑う閻樹。


 その行為に紅琉奈が苛立ちを露にすると、利庵が即座に動く。


 しかし、閻樹は利庵に笑いながら語り掛ける。


「よい、妾は退屈なのじゃ、掛かってくる者は拒まぬでな……この小さいのを傷つければ、お前が遊んでくれるのか? 危うき娘よ?」


 その言葉に紅琉奈が瞳を真っ赤に染める。


「大牙に何かしたら、お前を赦さないッ!」


 その瞬間、家臣達が刀に手を掛けるも、閻樹は手を開き、動くなと無言で命じる。


 大牙が見たのは、紅琉奈と同じ危険な瞳をギラつかせる閻樹の姿であった。

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