表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/116

氷雨と大牙……大牙と夜夢が二人きり1

 朝の冷たい空気、山に陽の光が射し込み、静けさに包まれる樹海。


 小屋の扉を開き、伸びをする大牙。


 そんな朝の静けさを掻き消す女の叫び。


「キャアァァ!」


「うわあぁぁぁ!」


 女の叫び声に続くように野太い男の叫び声、大牙は慌てて声がした方角に走っていく。


 大牙が辿り着いた先には湖があり、大牙の前には、頬を真っ赤に腫らし、気絶する五郎の姿と、服を脱ぎ、生まれたままの姿の夜夢の姿があった。


 着痩せする体型なのであろう、(たわわ)に実った、美しい二つの胸を前に大牙の鼻から一筋の真っ赤な鼻血が流れ、目の前が暗くなり、ふらついた頭のままに気絶する。


 次に目が覚めた時、大牙は木の枝に吊るされており、五郎が叫び声を上げていた。


「わざとじゃないんだよ! 偶然だ! 顔を洗いに来ただけだ!」


「そうけ、でもなぁ……草むらから、動かずにずっと居たらば、無実も言い訳にしか、聞こえねぇ! いっぺん、閻魔(えんま)様に、謝罪してこ!」


「ちょ、ちょっとまて! 冗談にも、洒落にもならねぇぞ、うわあぁぁぁ! 糞女ァァァァ!」


 五郎が滝から、滝壺に向けて蹴り落とされる。


 叫び声と共に、鈍い“ズダンッ!”と、言う音が小さく聞こえる。


 青ざめる大牙、しかし、そんな表情は盲目の夜夢に確認される事はない。


「次はオメェだ! 餓鬼んちょが、乙女のす、素肌を覗くなんて、今から……二度とそんな事が出来ねぇようにしてやるかんな!」


「あ、あの……」


 必死に状況を回避しようと、声を出す大牙。


「なんか、言いたい事があるなら、きいてやっぞ?」


 夜夢の声に大牙は呼吸を整える。


「あの、本当にごめんなさい。覗くつもりはなかったです……声に反応して、走って来たけど……す、凄く綺麗でした」


 その瞬間、縛られ吊るされたままの大牙の顔面を手で掴む夜夢。


「綺麗だと……ふざけんなぁ、オラの何処が綺麗だっつんだ!」


 大牙に対して、苛立ちを露にしながら、顔につけた布を外す。


 布が取られた夜夢の両目は、鬼の爪で斜めに三本の線が入っており、眼は完全に開けない状態になっている。


「これが綺麗か? 顔は鬼にやられて、誰も見ねぇ、そんな化物みたいな、傷のある、オラが綺麗か!」


「俺、心眼さんの事、化物なんて思わない! 凄く綺麗だと思う!」


 口をへの字にする夜夢の顔が紅く染まる。


「ふん、色ボケが、あと……心眼は、あだ名だ……夜夢って名前がある……んだからんな」


 大牙に名を伝えた夜夢の姿は、照れ隠しをする少女のようであり、大牙は夜夢に気づかれないままに、照れていた。


 互いに照れながらも、直ぐに現実に引き戻すように、顔を布で覆う夜夢。


 枝から、大牙を降ろすと夜夢は、五郎を探してくるように指示を出す。その際に夜夢は名を伝えないように伝えた。


「大牙は、無実だが、あの五郎って奴は、有罪だぁ! アイツみてぇな奴は、厳しくしねぇと駄目だ!」


 五郎は直ぐに見つかるも、風邪をひいたようで、 見つかってからの三日間を寝込んで過ごす事になる。


 その間、大牙と夜夢は二人だけで、修行を開始する。


 最初の修行は、大牙が布を使い、視界がない状態で攻撃を耳で聞き、回避すると言う物であった。


「傀動ってのは、全身に神経を集中させてねぇといけね! つまり、戦場は集中力が途切れた瞬間にすべてが終る、いいな」


 本当の、一日目の修行が開始する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ