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氷雨と大牙……紅琉奈の怒り2

 突如、攻撃対象とされた雷動の中級者達は、慌てて逃げようとするも、紅琉奈の動きから、逃げる事は難しいと悟り、持っていた鬼斬り刀を震えながらに向ける。


「く、来んなよ! 来たら一斉に斬り掛かるからな!」


 一人の中級者が勇ましくも、剣を構えると、学生を含む全員が刀を構えたのだ。


 慌てる教官、そんな様子を窺う氷雨、本気で危険ならば、紅琉奈を止めねばならないと覚悟を決める。


 そして、紅琉奈が、中級者と学生の間合いに、踏み込んだ瞬間、最初の一振りが紅琉奈に向けて放たれる。


 多勢に無勢といった数の強行、戦場ならば、確実に敵を追い詰める事が出来たであろう……しかし、それは練度が確りとある軍人や集団が行う事に意味がある。


 素人が虎を捕まえようと集まり、追い込もうと、それは蛮勇(ばんゆう)でしかない。


 紅琉奈に放たれた鬼斬り刀を、容易く回避すると、刃の部分を指で掴み、中級者の懐に凄まじい蹴りを入れる。


 刀を手放すように吹き飛ばされる、中級者、他の学生達が同様する最中、紅琉奈は、般若の面に作られた開けた口に鬼斬り刀を当てると、刃から噛み砕き、飲み込んでいく。


 “バリバリッ!”


 異様な光景と耳に入り込む、砕かれる刀の音に、誰もが足を(すく)ませた。


 その恐怖から逃げるように、刀を捨てる、学生達、中級者も、刀は捨てなかったが、握り締めたまま、走り出していく。


 追おうとする紅琉奈に教官が追いつき、剣を向ける。


 言葉が交わされず、睨み合う両者、しかし、決定的な差が其処には存在していた。


 紅琉奈は、教官である男に興味がなく、語らないだけであったが、教官の男は、目の前の存在に恐怖を感じて、言葉を発せなかったのだ。


 そして、紅琉奈は、逃げた存在を追うために目の前で刀を構える教官を排除しに掛かる。


 それは一瞬であった……紅琉奈の指先が、刃となり、教官の顔面に五本の斬撃を刻む。


 教官が応戦しようと刀を振った瞬間、掌を鋼鉄の盾のように変化させる紅琉奈。


 刀は、無慈悲に止められ、教官は絶句し、次の瞬間には、大きく蹴り上げられ、大地に背を叩きつけた。


 教官は微かに残る意識の中で、中級者、学生といった逃げた者達の悲鳴が叫ばれると、それは一ヶ所に集められていく。


 そして、教官本人も、紅琉奈に服の襟を掴まれ、乱暴に引きずられていく。


 連れていかれた先には、足や肩などから出血し、怯えきった姿の者達の姿があった。


「よく見ろ……」


 紅琉奈はそう呟くと、近くにいた学生の足を刃で貫く。


「うわぁぁッ! いだい、いだいよぅ! なんでオレなんだよ、クソッ!」


 その光景に教官が目を瞑ろうとするも「見ろ……」と紅琉奈が呟く。


 次々に学生が斬りつけられる最中、紅琉奈は問いかける。


「お前達は、これが可笑しいか? 楽しいか? 腹を抱えて笑うのか?」


 言葉が意味する事は、教官と学生達が、無鬼達に対して、刃を放ち、苦しめ笑っていた事実を指していた。


 意味を悟ったその場にいた、全ての者は、死を悟り絶望した。


 そんな中、紅琉奈は教官を含む全ての鬼斬り刀を噛み砕くと、その場を後にしたのだ。


 氷雨は、悩むも、紅琉奈の後を追う。


 雷動達から、離れた場所で向かい合う、紅琉奈と氷雨。


「やりすぎだ! あんなにすれば、直ぐにバレるだろうが!」


 叱るように、声をあげる氷雨。


「大丈夫、もう終わる……」


 氷雨は紅琉奈の言葉に、自身が判断ミスをした事実に気づく。


 確かに雷動達の側に生きた無鬼達の臭いはしなかった。

 しかし、野生の獣達は確実に近づいていたのだ。


 氷雨が戻る頃には、獣の群れと戦う雷動達の姿があったが全滅は時間の問題であった。


 氷雨は、改めて、紅琉奈と言う存在の恐ろしさを胸に刻んだのである。

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