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氷雨と大牙……修山の呪導衆

 氷雨は不敵に笑みを浮かべると、捕らえた男達を一ヶ所に集め、特別な札を用意すると、男達の背中にそれを貼り付け、術を口にする。


 男達の背中から、札の姿が見えなくなり、その後、全員が解放される。


 大牙と紅琉奈が、不思議そうに氷雨を見つめる。


 本当に逃がして大丈夫だったのか、また、襲うにくるんじゃないか……多くの疑問が大牙の中に生まれていた。


 そんな時、紅琉奈が大牙の手を掴む。


「大丈夫、ワタシが大牙を守る。安心して」


 そんな言葉に、感謝する大牙であったが、氷雨が声をかける。


「二人して、ずいぶん余裕だな? なんなら、次から、お前達が相手をしろ……双雷の奴はしつこいからな」


 そんな、雷動の一派との、軽い小競合いが終わりを迎えた。


 雷動の男達を、本人達が乗ってきた馬に縛りあげる。


「さあ、雷国に戻れ馬ども、此所からなら、すぐだからな」


 軽く先頭の馬の尻を叩き、馬達が駆け出す姿を確りと確認した後、五郎への質問が開始される。


 雷動の男達と、どの程度の繋がりがあるのか、氷雨達の元に来たのは偶然だったのか、多くの問いが、五郎にむけられていく。


 最初こそ、黙りを続けていた五郎であったが、すぐに質問に対する返答をする。


「オレは、雷動の門下だ。もう、昔の話したがな……」


 大牙と紅琉奈が顔を見合わせる。


「あの、五郎さん。気を落とさないでくださいね?」


「人間の学歴は、自然界では無意味だ。気にするな、五郎」


 二人の言葉に溜め息を吐く氷雨。


 震えながら、怒りを露にする五郎。


「オレは無事に卒業しとるわ! それよりも、何故、修山の管理者が、鬼とつるむ! 老師衆が知れば、六国傀動衆の内部に(ひず)みがうまれよう! 軽率(けいそつ)だと思わないのか!」


 五郎の最もらしい言葉に、氷雨が、嫌味に笑う。


「先に喧嘩を売ったのは、雷国の雷動……しかも、上位三位の双雷だ、骨身が痺れるくらいの礼をして貰わねばならぬだろ?」


「おい、あんた……まさか、本気でいってるんじゃないだろうな!」


 五郎の慌てようは、凄まじく、その顔色は次第に青ざめていく。


 そんな五郎をよそに、氷雨はある提案を五郎に持ちかける。


「のぉ、五郎よ、よく考えよ。うちの大牙と紅琉奈と共に強くなる気はないか? どうせ、今のお前さんでは、雷動でも、たいした地位は有るまい? お前の異能次第で、呪導衆(じゅどうしゅう)への」


 悪魔の囁きでしかない、氷雨の言葉、しかし、それは五郎に取っての転機であった。


 実際に五郎の仕事は、傀動として、名を馳せる兄弟子の雷動達が取りこぼした鬼の追跡と討伐であり、手柄はすべて、兄弟子達が拐っていくと言う、酷いものであった。


 氷雨は、修行の際に雷動の仕組みを知り、得られる知識と技を手にして早々に雷動を後にしていた。


 本来ならば、雷動は、死ぬまで雷動の名を貫かねばならない、しかし、そんな雷動の力すら、及ばぬ傀動の組織が存在する。


 名を【呪導衆(じゅどうしゅう)】といい、氷雨や、百仮といった、特殊な異能を扱う者が集まった傀動衆の一つである。


 五郎が軽く頷くと、氷雨は勝利を確信したように笑みを浮かべる、と、同時に紅琉奈の事を分かりやすく、五郎に説明したのだ。


 最初こそ信じられない様子であった五郎も、三日も、共に時間を過ごす頃には考えが変わり始めていた。


 そんな五郎の感情とは裏腹に、雷動一派から、氷雨が送った札の返答が返される。


 氷雨の札は、雷動の一派が、本国である雷国に入ると同時に空に浮き上がる“浮き札”と呼ばれる伝言用のモノであり、脅迫や威圧など、敵に対して使われる道具の一つである。


 空に写し出された、文字は雷国、国民の目に触れる事となる。


 内容は……


『今回の、非礼に対し、両者の代表を五名選び、決闘にて決着を望む。氷雨』


 大胆不敵にも、相手の国で、五対五の試合を申し込み、更に国民を利用して逃げられない状況を造り出していた。

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