氷雨と大牙……雷動の男達、上位三位、その名は双雷
大牙と紅琉奈は、氷雨の後を追い、山道に向かう。
至る所に倒れている男達、その殆どが、鬼斬り刀を手にしており、傀動である事は明らかであった。
「えげつないな、取り敢えず生きてるみたいだけど……」
大牙は周囲を警戒しながら、紅琉奈と共に、氷雨を探していく。
捜し始めて、十五分……氷雨の通ったあとだろう、数人の男達が、腹部や、股間を押さえて、うずくまっている。
余りに、酷い光景に、大牙は息を飲む。
そんな最中、氷雨が、雷動の一人である、男の頭を力強く握り、こめかみに、力を加えている。
「ぐあぁぁぁッ! 離しやがれ!」
氷雨に怒鳴り付ける男。
「五月蝿いんだよ、お前達の考えは解ってるからな、私の弟子に対して、新人潰し……しかも、私の管理する山で……今すぐにお前達の頭を見つけて後悔させてやる」
その言葉通りに、雷動の男達を見つけていく。
そして、指令を出していたであろう、男の傀動を捕まえる。
予想外だったのか、氷雨に捕まった際、男は理解できないと言う、表情を浮かべた。
雷動の男達は総勢で三十人を越えており、本来なら、追い詰められる事はなかっただろう。
しかし、予想外の五郎の存在と、氷雨自身が、雷動で修行をしたことがある事実が勝利を結んだのだ。
氷雨が、五郎に使った鎖は、雷動の中でも、上位に位置する者が弟子に罰を与える際に使う道具であった。
「我等に、手を出すとは、雷国の傀動衆、全てを敵に回す覚悟と見てよいのだな!」
指令を出していた男が、勝ち誇ったように声をあげる。
しかし、冷静な氷雨は、静かに刀を抜くと、その刃を首に押し当てる。
「私は、過去にお前達の頭に、私に手を出すなと、約束させた……更に私の物に手を出すなとも約束させた……解るか?」
氷雨の言葉が正しく、約束を違えたのが、雷動側であれば、責任問題となる。
雷動側の言葉が止まる、当然だが、そのような約束の存在は男達には、知らされていない。
「さあ、話し合いだ! お前達を私の元に送ったのは、誰だい?」
「俺達に指示を出したのは……雷動の上位三位の双雷様だ……俺達は殺される……」
俺の言葉に、氷雨が微笑み、笑い出す。
「そうか、アイツが、今の第三位か……ならば、挨拶に行かねばな……」