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氷雨と大牙……夕暮れの訪問者、その名は五郎

 夕暮れの予期せぬ、訪問者は、招かれざる客でしかない。


 紅琉奈は、男に対し殺気を放つ。


 男が大牙の間合いギリギリに近づいていたからだ。


 しかし、大牙は、紅琉奈に微笑むと、口を動かし、“大丈夫”と声を出さずに伝える。


 紅琉奈の後ろから、氷雨が肩を軽く叩く。


「本当に危うくなったら、大牙は自分で身を守る、それよりも、周囲を警戒するぞ……一人で来たなら、余程の手練れか、生粋の馬鹿だ……まあ、普通なら伏兵、つまり仲間がいる筈だ」


 氷雨の言葉に紅琉奈が、困った表情を浮かべる。


「山から、気配しない……アイツ、多分一人だよ……村でわざと、気絶したんだ!」


 激怒して、先に仕掛けようと考える紅琉奈、しかし、それを再度、氷雨が止める。


「大牙を甘やかすな……奴も傀動になると、自分から選んだんだ。つまり、今の状況を自力で回避しないと、成長しないんだよ」


 会話が終わり、二人の視線が大牙と、うどん屋に現れた男に向けられる。


 男は、大きく息を吸うと、自身の名を叫ぶ。


「オレは、雷国(らいこく)が、鳳雷(ほうらい)に生まれし、六国傀動衆の一人、五郎(ごろう)だ! 先日の、風鬼(ふうき)の一件で、話にきた」


 先日の風鬼が話題に出ると、氷雨も貞享が変わったと言わんばかりに、鞘に手をかける。


 傀動同士でも、争いは実際に起こりえる、些細な事からも起こるが、一番多いのは、鬼の取り合いである。


 鬼は黒い霧になる際に、心臓が石化し、宝石(鬼水晶)と言われる宝石に姿を変える。


 鬼水晶は色や形が異なるが、全てに共通している事がある、炎に焚べると鉄になるのだ。


 鬼水晶からなる鉄は鬼鋼(おにはがね)と呼ばれ、鬼斬り刀の素材となる。


 その為、鬼水晶は宝石の状態でも、鬼鋼の状態でも高値で取引される。


 風鬼の鬼水晶は、間違いなく、氷雨が所持しており、五郎と名乗る傀動がそれを、奪いに来たならば、大きく話が変わる。


 氷雨は、耳を澄ませ、会話を聞く。


「オレは風鬼を追っていた。奴が縄張りにしていたのが、此処から一日半程離れた、村でな、その礼を言いに来た」


 五郎は、笑いながら語る。


 大牙との、会話が終わりに差し掛かると、氷雨と紅琉奈が顔を出す。


 しかし、次の瞬間、紅琉奈を見た五郎の瞳が大きく開き、背中に背負われた巨大な鬼斬り刀に手を伸ばす。


「最初に見たときから、違和感があったが……その女、鬼だろ……なんで、鬼斬りが鬼といやがる!」


 そう声に出した瞬間、紅琉奈も五郎が敵であると認識したのだろう、視線が鋭くなり、臨戦態勢に入る。


 和やかに終わると思われた、夕暮れの一刻は、激しく激化しようとしていた。


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