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氷雨と大牙……山を狩る者

 百仮と紅琉奈のぶつかり合いが終わり、夜がやってくる。


 多くの疑問が残る最中、百仮は、紅琉奈と大牙に対して、巻物を紐解く(ひもと)、両者の名前を書き出すと、百仮は二人の親指に、赤色の粉を溶いた水を塗る。


 巻物に記された名前、その下に作られた四角い枠、二人は百仮に言われるがままに

、親指を押し当てる。


「本日より、其方達は傀動となる。鬼を斬る異能となったのだ。紅琉奈の能力は、大牙も理解しただろう」


 そう言うと、百仮は氷雨にも、紅琉奈の能力について、説明を開始する。


 紅琉奈は、鬼の中でも数少ない、稀少種である鬼々である。


 鬼々は、個体確認数が少なく、能力が一律ではないと言う事が、特徴の一つである。


 姿は無鬼と変わらない、過去の確認例では、人の戦場にて、兜より、角を出した状態の男の鬼々が、敵将を討ち取ると、褒美として、鬼が住み着いた土地を欲し、全ての鬼を食らい尽くしたと言う話すらある。


 鬼々とは、一概に、悪とするのが難しい存在であり、味方に引き込めば、天下に一歩、平定、敵にすれば、犠牲は万を越えるであろうとされている。


 過去に術者が集まり、鬼を殲滅せんと、した際、その土地を縄張りにしていた鬼々が、術者の放った炎が、容易く跳ね返され、全滅したとする報告も存在していた。


 だからこそ、百仮は、紅琉奈に手を出せない現状になってしまっていたのだ。


 百仮は、その日の晩に、小屋を後にして、山を降りた。


 紅琉奈と大牙は、傀動衆としては、仮であり、百仮を含む老師衆への報告もあり、旅立ちを急いだのだ。


 夕餉の時間になり、緊張と緊迫感に包まれた食事が始まる。


 大牙を真ん中に、囲炉裏の左右に座る紅琉奈と氷雨。


「マズイ……これ、毒キノコ……」


 睨むように、氷雨に視線を向ける紅琉奈。


「言っておくが、それは、大牙が集めてきた食材だ……食いたくないなら、食わなくて構わん、私が有り難くいただくのみだ」


 強い口調でそう語る氷雨。


 囲炉裏を挟み、睨み合う二人の姿に、食事が進まない大牙。


「あ、あのさ、氷雨も、紅琉奈も、仲良くしようよ」


「半人前が、もう、いっぱしの口をきくか? 偉くなったなぁ……大牙よ?」


 氷雨の言葉に大牙の額から、嫌な汗が流れる。


「ワタシも、大牙も、傀動だ……同等で何が悪い? (ひが)みか? 案外、小心者だな」


「喧嘩を売っているなら、勝ってやるぞ?」


「安くないぞ? 高くつくが、やるなら……やってやる」


 大牙が止めるのも、聞かず、外に出る。


 そんな時、大牙が二人に提案を口にする。


「ちょっとまって、な、ならさ! どっちが、大きな獲物を捕れるかを競おうよ……それなら、明日のご飯も豪華になるし……なんて」


「わかった!」

「構わんぞ!」


 紅琉奈と氷雨は、大牙の提案に賛成すると、夜の山に消えていく。


 そこから、朝までの間、ざわめき、騒音が鳴り響く、山から、獣の雄叫びが鳴り止む事はなかった。

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