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風国と雷国……1

一晩で大きく動き出した風国の地、国境付近の鬼檻から遠く離れたそこに風国の首都は存在していた。

炎国の城を思わせる風国城、その城内では慌ただしく大臣や宰相といった現風国を支配する者達が情報に追われていた。

どんな時でも情報とは武器であり、それは自身を有利に導く力となるからに他ならない。

その為、各自が自身の部下を使い敵である存在の情報を手に入れようと動き出していた。


そんな慌ただしく動く風国の内情を知ってか知らずか、風国王城の正門が開門される、開門された先には十数人の男達の姿があり、城内に向けて歩みを進めていく。


王都からそう遠くない場所に存在するのは、同盟国となり、支援と言う名目で雷国から送られてきた部隊が駐屯地とする広い平原であった。

最初こそ、陣を作り、小さな部落の様な形であったが、それは次第に姿を変えていく。

風国軍とは違い、厳しく訓練された精鋭部隊、1万に近い雷国兵達が既に風国に入り、瞬く間に強固な基地を作り上げていた。


雷国は風国に基地を建てる事で風国の地に自分達の土地を事実的に手に入れていたのである。

何者にも侵入を許さない雷国のやり方に風国からも幾つかの反対意見がではじめており、雷国との考えの違いに風王は頭を抱える日々が続いていた。

しかし、その日、「風王に謁見したい」と言う理由で王城にやって来た者達こそ、雷国の将軍とその部下であり、風国王城内部に姿を現すと風王の周囲をゆっくりと見回す。

そして、ニヤリッと笑う。

王の側近の中で不快そうな表情を浮かべる者の前へと移動する。


「何か言いたそうですな?」

「なんですかな、藪から棒に……」

「いやぁ……顔に書いてありますなぁ、我々が不快だと、実に不愉快だ……」


風王の前で突如、抜刀する雷国の将軍、その刃は速く、質問された側近の一人が斬り殺される。


「将軍! な、何て事を、直ぐに医療班を呼べ!」


風王は即座に声を荒らげる。それを聞き直ぐに医療班が駆けつける。

更に兵士達が雷国の将軍と兵士を取り囲む様に謁見の間へと集まり出す。


しかし、それを止めたのは他でもない風王であった。


「よい、先ずは理由を話してもらえるかな?」

堂々とした態度を装いながら、身体の震えを押さえつける風王。


「いきなりの無礼をお許しいただく、我々の存在をよく思わず、あまつさえ雷国と風国の未来を軽んじる輩が複数いたので、反乱分子として王の目の前で始末させていただいた」


一切悪びれる様子がなく、寧ろ、感謝をしろと言わんばかりのふてぶてしい態度を取る将軍の姿に風国の宰相達が目を細める。


「我々、雷国は風国と協力関係にありますが対等ではない……風王、それとも我々を捕らえて雷国()()争いますか?」


「なんと無礼な! 一国の将が我等が王を愚弄するか

!」

宰相であろう男が声を荒らげた瞬間、稲妻が宰相に放たれる。

叫び声すら無く、宰相だった物が黒く煙をあげてその場に転がる。


「えっと、なんでしたか……あ、そうそう、で、どうされますか?」


「わかった、此度の件は一切責任は追求しない事とする」

「話が早くて助かりますなぁ……それでは失礼する。これからも雷国と風国に栄光あらん事を……アハハ!」


風国は、この瞬間から雷国の属国となったのであった。


そんな将軍が指揮する雷国基地に向けて歩く者の姿があった。

まるで散歩でもするかの様な歩みで基地へと近づいていく者は百仮であった。


「風国に雷国の旗印か……長生きすると面白いもんが見れるもんよなぁ……じゃが、見納めになるじゃろうて、ゆっくり眺めるかのぅ……」


百仮の面が笑い顔の面から大癋見(べしみ)の面に付け変わる。

癋見(べしみ)、能面の一種で下あごに力を入れ、口をぐっと結んだ表情の鬼神面。主に天狗となる大癋見、地獄の鬼などに用いる小癋見にわけられる。


面を付け替えた百仮は即座に動き出していた。

同時に百仮とは違う方向からも大牙、紅琉奈、夜夢、氷雨の4名、更に別方向からも五郎と慶水、夜島と夜国の面々が動き出していく。


突然現れた複数の人影に即座に雷国兵達が防衛を開始する。

正面から数百の雷国の精鋭部隊が得物を手に隊列を組みながら前進していく。

その正面には、一際目立つ兜を被った男の姿があり、全身を金色の鎧を身につけ、その手には鎧とは正反対の真っ黒な矛が握られており、普通の矛の2倍はあろう先端が百仮に向けられている。


「何者かッ! 名を名乗れッ!」

大地を震わせる様に叫ばれた言葉、百仮は仮面をつけたまま、ただ微笑みを浮かべていた。

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