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村人を夜国へ……5

突如として舞い上がる粉塵を確認した皆がそれを合図と言わんばかりに動き出していく。


五郎と慶水は土煙を確認すると即座に鬼が囚われている檻を目指し特攻を開始する。

激しい稲妻が大地を震わし、激しい轟音が辺り一帯に鳴り響く。


「雷国は流派 “赤進甲弾流せきしんこうだんりゅう”が五郎、今より風国を敵とし修羅にならんッ! 刃向かうは命を失う事としれぃッ!」


風国兵を吹き飛ばし仁王立ちする五郎、更にその背後で巨大な水飛沫が天高く上がる。


「なんで、名乗っちゃうんですか……今回は名乗りとか必要ないんですよ」っと、頭を悩ますように首を左右にふる慶水。


騒ぎを聞きつけた兵士達が槍を手に2人を取り囲むように集まり出す。

しかし、騒ぎを聞いても集まるのは守備兵として配備された12人の兵のみであり、本来の増援部隊が現れる事はない、風国兵は自分達に起きた予想だにしない出来事に最初の粉塵の存在を忘れており兵士達は来る事のない増援部隊を待つもそうはならなかった。


風国兵を軽く倒すと五郎と慶水は檻に入れられた鬼達にとどめを刺していく。


「胸糞悪いぜ!」

「それは同意します……風国といい雷国といい、何を考えているのか……鬼を飼うなどやはり理解に苦しむな」

「何処の国にもよぅ……頭の悪いヤツっているだろう? それが偶然にも国のお偉いさんだっただけの話しだろ」

「違いないな」


敵はたったの2人と考えていた兵士達は即座に肉塊になり、無数の鬼の檻が次々に落雷と水弾により黒い霧となり空に消えていった。


戦闘が各所で起こると大牙も同様に動き出していた。紅琉奈と夜夢を待つと言う選択もあったが大牙は土煙の勢いから紅琉奈達が戦闘を開始した事を即座に理解する。

大牙は刃を手に握ると悩まず、鬼達の檻を見張っていた兵士に向かって襲いかかっていく。


「なんだ? うわぁぁぁッ!」


見回りの兵士に大牙が襲い掛かる、突如現れた敵に対して1人目の兵士は首を飛ばされ、それに気づいたもう1名が慌てて槍を前に突き出す。

しかし、大牙に槍はあっさりとかわされると振り向きざまに握られた刃が兵士の腹部から背骨に向けて振り抜かれたのだった。


時が過ぎる、風国に夜が来ると、その大地は鬼と無数の風国兵の屍で埋め尽くされていた。

配備されていた風国兵は皆が一般の兵士であり、傀動を相手に戦える様な強者は存在していなかった。

更に本来は数で防衛を行うはずだった風国軍であったが、一番最初に奇襲が行われたのが増援を目的として町を占領していた部隊であった事実も大きかったと言えるだろう。


しかし、風国の鬼檻の大半が僅かな時間に襲撃され、その結果、夜国から遠くない地域で大きく戦力が失われた事実は風国本土に知らされる事はなかった。

その理由は異変を知らせる者も生き残った兵士も存在しなかったからに他ならない。


真夜中になり、各自が夜襲を狙い動き出す。

少数精鋭の者達は自身の力を過信せず、風国兵が待機する町や村を狙い、殲滅後、逃げる風国民に対して「夜国を目指せ」とだけ、伝えて回っていた。


朝日が風国の大地を照らす、その日、風国各所で事態が明らかになり、慌てた風国軍は直ぐに調査を命じられる。

しかし、既に敵である大牙達の姿はその場にはなく、無惨に打ち捨てられた兵士の骸と村人の消えた村や町だけが血生臭い空気に包まれているばかりであった。


そんな焦る風国を無視するように、大牙達は夜国と風国の国境付近の捨てられた村へと戻っていた。


村には既に黒雲と白雲が帰還しており、集まった残りの非戦闘員である村人達が今か今かと列を作っていた。


「実にあっさりと受け入れて貰えたが、受け入れられなかったらどうする気だったんかね……」

「夜島様、そうならなかったのですから、悩んでも仕方ないですぞ」

「ですな!」

先に報告の為、夜国へと戻っていた夜島と庵時、楽夜坊の姿があり、庵時の部下である“月影衆”を連れて舞い戻っていた。


黒雲と白雲の二隻に乗り込んだ村人を乗せると二隻は先日と同じように夜国に向けて飛び立っていく。

夜国へと向かうさ中、黒雲の内部から地上を移動する少数の集団が幾つかいる事が確認される。


「百姫様、どうしますか……敵、と言うには、余りにその……非武装と言うか、しかも夜国の国境を目指してるように見えますが?」

黒雷の船員が報告すると百姫は両手を組みながら悩むが、それは直ぐに終わり指示を口にする。


「よし! 先ずは確認するよ、馬黄と銀大は置いてきちまったし、誰か地上に行けるかい!」


百姫の言葉に数名の船員が移動を開始すると黒雲が地上へとゆっくり降下し、空には白雲が待機する形となった。


地上に降りた黒雷の船員の姿に怯えた村人達であったが、話を説明され、船内に風国の民を見ると泣きながら訳を語り、避難するように言われた事実を部下から聞かされた百姫は目に見える範囲で見つけた村人達を黒雲と白雲に乗せ、夜国へと戻って行くのであった。

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