風国からの提案……2
風国からの提案に氷雨は悩む事なく、それを了承する。
余りにあっさりと受け入れた氷雨に羽尾は首を軽く傾げる。
「あっさりでしたねぇ、もう少し抵抗があると思ってましたのに、いや、実に嬉しいさぁ、なら、直ぐに向かいましょう!」
既に雲船は移動の用意が出来ていた。船内では、既に百姫と百仮、羽尾で話がまとまっていたのだ。
氷雨達が雲船に移動すると、銀大達が出迎える。
「よう、大牙。久々だな! だが、お前等が船に来たって事は、このまま、風国に逆戻りか……はあ」
銀大の態度から、大牙は風国が“厄介な存在なんだ”と、感じる。
しかし、既に話は決まっている。
そうなれば、急ぐ他に選択肢等、有りはしない。
氷雨を含む六人と、夜国から夜島を筆頭に四名が風国に出向く。
夜国から風国に向かう者達。
一人目──庵時。
夜島の信頼する家臣であり、夜城の梟の長を勤める存在、忍集団である、“月影衆”の長も兼任している。
二人目──楽夜坊。
大牙と一番最初に、試合で戦った夜国の武士の一人である。
最初こそ、大牙に怒りの矛先を向けるも、実力を認めている一人である。
三人目──夜公仁。
楽夜坊と同様に大牙に破れた二人目の挑戦者である。
武を極めんと鍛練の日々を重ねていた努力家であり、氷雨が始めた訓練に率先して参加した人物である。
そんな四人が加わり、風国の端に位置する夜国との国境を目指して雲船が進んでいく。
本土に向かう訳ではない為、短い距離の移動となるが、それでも二日は掛かる距離であった。
その間、船内では、先行して風国に向かった銀大達から、氷雨達が話を聞く事となる。
現在の風国は、近隣の国々と比べ、鬼は遥かに多い、しかし、風国は鬼避けの術を使い、人々と鬼の住む土地を区切る事で平和に暮らしている。
しかし、近年の鬼達の数が増えすぎた為、風国の傀動が駆逐に向かう事になる。
多くの鬼を屠るも、その数は減らず、少しでも減らす事に協力すれば、風国は夜国の考えに力を貸すと言う結果になったのだ。
黒雷の面々も、風国でその力を存分に示し、話がまとまろうとしていた矢先に、百仮の元に、氷雨達に監視がつくやも知れぬと、信頼する人物から連絡が入ったのだ。
その討伐数は、氷雨、大牙、紅琉奈、五郎を対象にした物であった。
討伐総数は三百を越えており、大半が大牙と五郎の物であった。
二人は、討伐数が少ないが、討伐報告をしていなかった為の結果であった。
氷雨と行動を共にしていた紅琉奈は、多少の数で済んでいたが、明かに膨大な数に百仮は、呆れていたが、風国から鬼の討伐の話を聞き、協力を持ち掛けたのであった。




