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秋葉原ヲタク白書28 私の彼はアキバハンマー

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第28話です。


今回は、秋葉原でヲタクが謎の特殊部隊により次々と逮捕・連行される事件が相次ぎ、メイド長の後輩も拉致されます。


その裏には、どうやら公安警察の新盗聴システムの稼働があるようですが、そのシステムのアルゴリズムには不具合が…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 メイド長、逮捕


「おかえりなさいませ、御主人様に御嬢様。あら?自宅警備員(特殊部隊のコスプレイヤー)の御一行かしら?」

「メイドカフェ"シュガースター"メイド長カリナ。本名、権田原 房枝。国家の安全侵害および管理貿易違反の疑いで逮捕する」

「ひええっ?!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ミユリ!ミユリ!いるの?またまたアキバがタイヘンよっ!」

「あらー、エリカじゃない?久しぶりじゃないの。生きてた?」

「そ、そーなの。実は私この度…ってソンなコトより"シュガー"のカリナが万世警察に喰われたわよっ!貴女、何か聞いてる?」


ココは僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷(メイドバー)

別名"中性子星(パルサー)バー"で、怪電波に操られたヲタクが続々と集まる。


で、常連を掻き分け、爆乳を揺らして真っ青な顔で御帰宅して来るのはエリカさん。

ミユリさんの親友で、それを見込んで先日は偽装不倫のフラれ役とかお願いしてる←


あ、本職はヤリ手の司法書士w

しかも、風営法にヤタラ強い←


「カリナちゃん、真面目な子なのに…オムライスにお絵描きしてたら突然、特殊部隊が突入して来たって聞いたけど。万世警察だったの?万警さんに特殊部隊なんているの?」

「えっ?特殊部隊?何ソレ?ソレこそ聞いてナイわ!何が起きてるの?一体」


実は、最近アキバで突然ヲタクが逮捕されるケースが増えている。

そう逝えば、この前もこんなコトが、と常連達が口々に語り出す。


「白昼の中央通りでさ、ドンキの前とか歩いてたら、突然ヲタクが押し倒されて!その上に次々と黒覆面の特殊部隊が折り重なって…サイレンサー付きのMP-5って初めて見た。カッコよかった」

「明け方のネカフェで、朝食がわりに無料ポップコーンの列に並んでたら、突然、全身黒迷彩の特殊部隊が踏み込んで来て、前に並んでた女を(さら)ってった。お陰で俺からポップコーン取り放題になり腹壊した」

「サイフ忘れて来たのにキャッチ(のメイド)に釣られてセクキャバ逝ったら万警に突き出された」


うーん最後のは関係なさそうだw

ソレからMP-5は 傑作(ベストセラー)短機関銃←


とにかく、誰かがアキバのヲタクを計画的に逮捕し始めたようだ。

恐らく、本人には告げられてるのだろうが、何の罪なのかも不明。


ソレに全身真っ黒の特殊部隊は何者?真っ黒がお約束とは逝え、よくわからない。

拉致した後は勾留とかされてるみたいで、恐らく警察関係だとは思うけど不気味。


「ところでエリカ、何で貴女がヲタク拉致に首を突っ込んでるの?カリナちゃんの深夜営業許可とか取ってあげた御縁?」

「えっ?いや、その、何となく気になった…と逝うか、じ、実は、ちょっち"ウチの人"が、ですね…」

「えっ?ええっ?今、"ウチの人"とか逝った?待ってょ!"ウチの人"って誰ょ?誰なの?さぁさぁ、誰なのかしら?キッパリ教えて頂戴!」


カウンターの中からヤイノヤイノ責め立てるミユリさんは何やら愉快そうで余裕の笑顔。

いつもは男勝りのエリカさんが、珍しくロープ際まで追い込まれてヒタスラ防戦一方だw


「だ・か・ら!実は、そのぉ、さっきから逝おうと思ってんのにミユリが…で、私コト、エリカですケド、この度、メデタく橘エリカとなりそうな、ならなさそうな…」

「えええっ!あのヤメ検の敏腕弁護士、橘ミツルさんとエリカがお付き合いデモしてると逝うのでしょうか?どーしよー?」

「やめてょ、空々しい。ミユリったらカリオストロの銭形警部みたい」


ええええええええっ?!


いや、空々しいも何も僕は全く聞いてナイw

橘ミツルって、僕の小学校の同級生なのに!


「で、"ウチの人"が引き受けたの。カリナの国選弁護人」


第2章 私の彼は国選弁護人


国選弁護人とは、貧しくて弁護士が雇えない人に国が費用持ちで送り込む無料弁護士。

大抵は、まだ駆け出しとか、目下売り込み中の若い弁護士が選任されるのが通例だが。


タチマンは、TVショーなんかで顔が売れてる大物弁護士なんで、こーゆー貧乏臭い司法の現場には御縁が薄いと思ってたけど。


「ソコが、彼のステキなトコロよっ!私の彼は貧しき者を救う法の世界のナイトなんだからっ!」

「イキナリ乙女かょ!イキナリはステーキだけで十分だな。ソレに奴は小学生の時にクラスのNo.1美女のスク水に…」

「そ・れ・は!もぉ終わった話でしょ?で、作家とメイド長のコンビさん!今回はヤルのヤラないの?」


えっ?何を?


「だから、調査よっ!アキバのコトなら何でもお任せナンでしょ!忙しいタチマン様を助けてあげてよっ!私の彼なのよっ!」

「あーら。弁護士事務所の調査員ならエリカの方が適任でしょ?司法書士の資格があれば違法調査で相手に訴えられても何かと便利そう」

「でも、私には…ナイものがあるから」


と逝いながらエリカさんは…爆乳を寄せ谷間を強調して僕から落としにかかるw

うーん爆乳エリカ様には…この世にナイものなどナイのではナイかと思ひマス←


「よしっ!次はミユリね!カリナちゃんは可愛い後輩メイドなんでしょ?今、拘置されてるのよっ!彼女を助けなきゃ!今こそ御屋敷(メイドバー)のヲタクパワーを結集するのよっ!」

「そ、そう逝われると…どぉしますか、テリィ様?」

「…しょうがないなー。みんな、力を貸してくれ!とりあえずスピア、いる?」


カウンターの中で長い溜め息をつくミユリさんの顔色を伺いながらも、僕に逝われてサイバー屋のスピアが自分のPCを開く。


「はーい、テリィたん。何して欲しい?」

「昨日の朝の"24クラブ"の防犯カメラの画像。あ、昭和通り口店じゃなくて電気街口店の方」

「喜んでーって逝いたいけど昨日の朝だと消されちゃってるカモ。でもやってみる!」


ジャージ姿で、恐らくその下は白スク水のスピアがものスゴい勢いでハッキング開始。

常連のアトムさんが、彼女の横に立ちソッチじゃなくてコッチの店だょとか指を差す。


果たして…


「あったー!さすがはネカフェの大手。1週間分の画像が記録されてる」

「じゃ巻き戻して…巻き戻して…あ、ソコ!」

「おおっ!スゲェ」


みんなで覗き込む小さな画面の中で、黒迷彩の特殊部隊がヲタクを拉致している。

声かけして外へ連れ出すとかじゃなくて、両脇から力ずくで抑えて文字通り拉致w


「コイツがネカフェで何をやってたのかを調べよう。奴のネカフェの中での動き、わかるかな?使ってたPCとかハッキング可能?」

「カメラを切り替えながら追っかけてみる。アトムさん、店内の防犯カメラの配置とか覚えてる?」

「えっと、確かドリンクバーに1台、マンガ棚にも、もう1台あったかな。あ、アレは煙探知機だったかなw」


少々時間はかかったが、スピアは奴のブースを割り出し使用したPCを特定する。

早速ハッキングしてみたら、既に履歴は消去されていたけど、復元は可能らしい。


「あ、スピア!ソレに奴の後ろの鏡にPC画像が映ってるょ!」

「鋭い!ズームしてみる…無茶苦茶ピンボケだけど、コレなら補正出来るカモ」

「いつかの闇アプリ、試してみてょ」


何処でスピアが拾ってきたのか知らないが、プリクラの画像補正アプリを加工した闇アプリでピンボケ画像が1発で超クリアにw


素晴らしい!

ん?コレは…


「世界地図?南極?南極から世界征服を狙う連中と逝えば…」

「げっ!まさか時間ナチス(僕の宿敵w)が探してるエルドラD(隠された財宝w)への地図だったりして…」

「違うわ。だって線が引かれてるのが南氷洋だもの。この線は航路じゃない?この地図は南極への航海図よっ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ソコへミユリさんに逝われた常連達が1人のヲタクを連れて来る。

あ、決して拉致とかはしておりませんwコレはあくまで任意同行w


「ココがミユリさんの御屋敷かぁ!いつもカリナから話は聞いてたけど…おぉ!貴女がミユリさんですか?…う、美しいw」

「おかえりなさいませ、御主人様。はじめまして、ですか?」

「メイドカフェ"シュガースター"メイド長カリナのTO(トップヲタク)で、マイルと申します。ただいま戻りました」


おおっ。礼儀正しくて、しかも爽やかだ。

最近の若いヲタクも捨てたモンじゃない。


「カリナちゃんのTOさんね?確か"レールジェンヌ"時代からの推しだったとか?」

「えっ?そんなコトまで御存知なんですか?メイド仲間の情報網って怖いなw…でも、自分は鉄(道)ヲタ(ク)であるコト、誇りに思ってマスんで」

「ソレは素敵なスタンスですね。ソレに…カリナちゃんの鉄道娘コスプレ、可愛かったものね」


鉄ちゃんカフェ"レールジェンヌ"は、車掌コスプレでの御給仕がウリの鉄道カフェ。

パーツ通り沿いにあって、マスコミにもよく取り上げられてたが約1年で力尽き閉店。


「カリナは"レールジェンヌ"を看取ってから"シュガースター"のメイド長に引き抜かれて頑張ってたんデス。その矢先に突然こんな…」

「彼女は、何かの活動とかに参加してなかったのかな。例えば、その、犯罪に関わるような活動とかさ?」

「まさか。コスプレ好きのタダのヲタク女子ですょ?先週の僕の誕生日には、手作りのケーキを焼いてくれたのに…あぁ、何でこんなコトになったんだ!」


わ!泣くな!男だろ!

頼むから泣くなー!笑


ところが…


「いいえ!ソレは御主人様が知らないだけ。御主人様の知らない世界で、彼女はテロリストをやっていたのだと思います!」

「おいおい!スピア、何を逝い出すんだ!御主人様の涙を甘く見るなょ!マイルさんに謝れ!」

「ごめんなさい、テリィたん。でも、コレを見て」


そして、スピアは僕にPCを見せたが、その一方で半開きのジャージの隙間からコレまた立派な胸の谷間を(彼女はトランジスタグラマーなんだ)w


「テリィたん!ソッチじゃなくて!」

「スピア!貴女も貴女ょ!ワザとでしょ!」

「眼福だょー」←


発言は、スピア、ミユリさん、僕の順番だけど、まぁ順番なんかはこの際どーでもよくて←、スピアが示すPC画面には…


「日本が再開した商業捕鯨を行う船団の航路、構成、寄港地一覧…って奴はこんなコト、調べてたのか?ってか何?コレ?」

「テリィたん、彼の正体は、過激な抗議活動で知られる国際環境保護団体"グリーンビート"の日本支部長。アキバのネカフェにこもって日本の商業捕鯨を阻止すべく実力行使の作戦を練っていたのよっ!」

「…と逝うコトは、おぉ!コッチの資料は、捕鯨船団の襲撃計画だ。世界中の反捕鯨団体が持つ抗議船を南氷洋に集めて、日本の船団を襲うつもりか!作戦名は"群狼(ウルフパック)"。海の狼、あの船団を追え、って気分はもうUボートかょ」


ネカフェで捕まったヲタクは…つまり"環境テロリスト"だったようだ。

"環境"と付くと何か正しいような気もするが、つまりは過激派だょね。


となると、彼を夜明けのネカフェで捉え、船団襲撃を未然に防いだ謎の特殊部隊は、もしかすると法の番人なのか?


そして、カノンさんは…まさか動物愛護かなんかがコジれて、いつの間にやら"環境テロリスト"の女闘士に変身?


「絶対ナイ!だって、彼女は僕の誕生日に手作りケーキを焼いてお祝いしてくれる…(以下省略)」

「だ・か・ら!ソレは世間を欺く"表の顔"なのっ!ホントにバカょね、男って」

「うーん、あのカノンちゃんが…悪いけど私も信じられないわ。カノンちゃんの方を信じる。ねぇスピア、もう1人の、ほら、ドンキの前、だったっけ、押し倒されたヲタクさんも調べてくれないかしら?」


スピアが黙って僕を見るので、仕方なく僕は頷いたんだけど、ソレでスピアがネットとかを急いで漁り始める気配もない。


「ソレがダメなの」

「え?調べてくれないの?」

「じゃなくて…私の手に負えないの」


えっ?どーゆーコトなのかな?

スピア以上の凄腕ハッカーか?


「違うの。スピアさんでも無理よ。この相手はNGOの活動家みたいにネットに痕跡なんか残さない。だって、もっと非情な世界の住人だから」

「サリィさん!やっぱり絡んでると思ったょ。あ、ミユリさんに呼ばれたんだね。で、彼は…誰?」

「スリーパー(浸透工作員)よ。半島の」


既に常連で満員の御屋敷に改めて御帰宅して来たのは黒のライダースのサリィさんだ。

彼女も特殊部隊員で、コレでやっと御屋敷のヲタクパワー最後のピースが揃った感じ。


「元は日本旅券狙いで背乗(はいの)りしてたケチな身元ロンダリング要員だったんだけど。最近、ホラ、対韓輸出規制とかあったでしょ?彼も、本心では補助工作員のまま地下にいたかったでしょうに、恐らく総局指示で地上に姿を見せるようになって…となると、コッチも目を瞑ってるコトが出来なくなったってワケ」

「えっ?あの派手に立ち回ってる黒覆面の特殊部隊ってベータ・ストライク(サリィさん所属の特殊部隊)だったの?」

「まさか。アレは警視庁公安部(ソトニ)のシマだから多分SAT(警視庁の特殊部隊)だと思う。でも、アキバで白昼堂々と…ウチならあんなヤボ、絶対にやらナイし」←


やはり、警察関係の騒ぎだったのかw

でも、何で対韓規制が"北"に影響?


ま、そんなコトより…


「国際環境テロリストに半島のスリーパーかょ。でも、ソレにカリナさんがどう絡むのかな?まさか、国際的陰謀を一手に仕切る闇のコーディネーターをやってました、とか?」

「そんなバカな!だって、彼女は僕の誕生日に手作りケーキを焼いて祝ってくれる…(以下省略)」

「…うーん。そうなの?やっぱり?実は、最近チヨダ(公安警察)絡みに多いのょね。こーゆートラブル」


え、どーゆートラブル?


「うーん誤認逮捕とマデは逝わないけど、明らかに一般人(パンピー)なのに特殊部隊で袋にしちゃいました、みたいな」

「ええっ?まるで戦前の特高警察じゃないか。そんな絵に描いたような人権侵害が何で起きるの?令和ってそーゆー時代なの?」

「実は…チヨダが最近導入した通信傍受・諜報戦略システムなんだけど、何か調子が悪いみたいなのょね。"ジェシュロン"って逝うんだけど」


"ジェシュロン"だと?何ソレ?


第3章 ヲタクなアルゴリズム


僕達は見られてイル←


世界中を飛び交うメール、写真、音声、動画、接続履歴などは、全て盗聴されている。

アメリカ主導で構築された世界盗聴システムが"エシュロン"で、その"日本版"が…


"ジェシュロン"…なのか?

ネーミングがイージーだょw


「とにかく!公安が鳴り物入りで稼動させて潜伏中の環境テロリストや半島のスリーパーをバンバン検挙して、確かにスゴいなって思うけど…うーん、そのメイドさんなんか、話聞く限りじゃ、どー考えても"シロ"だし」

「そうなんです!だって、彼女は僕の誕生日に手作りケーキを焼いて祝ってくれる…(以下省略)」

「システムのアルゴリズムに問題があるって噂ょ。盗聴情報の分析手法に偏りがあるから特定の行動をとると自動的に国家の安全を脅かす存在にされてしまうの。おー怖っ」


おー怖っ、じゃナイょ!とんでもない話だw

そんなイカれたシステム野放しにするなょ!


「そのアルゴリズムとやらは、誰が書いたの?ソイツ死刑でしょ!早く書き直してょ!そのアルゴリズムのせいで留置所送りになったメイドがいるんだょ!」

「だ・か・ら!未だ、そーゆー噂があるって話!"ジェシュロン"のソフトウェアシステムは、ある検索エンジンの会社が納入したんだけど、もちろん、その会社は自社製アルゴリズムは完璧だと逝い張ってる。実は偏ってましたゴメンナサイなんて逝うハズないし」

「ふざけんな!無実の罪(恐らく)で勾留されてるメイドの身にもなれ!許せん!」


ソレは御屋敷にいるヲタク全員の思いだ。

僕はもちろんだがスピアも決心を固める←


「わかりました。その検索会社、私では手に負えないけど、アテがあるから内部を探ってもらいます。でも、その前に…マイル御主人様!」

「ハ、ハイッ!」

「カリナさんが焼いたお誕生ケーキってどんなのですかっ!?ちゃんと写メとか撮りましたかっ!?」


マイルさんがイソイソと写メを見せる。

謎のドヤ顔がイマイチ気に入らないが…


カリナ作のお誕生ケーキは…鉄ヲタのTOが喜びそうなドクターイエローケーキ。

あ、ドクターイエローは、線路の歪みや架線を点検する黄色い新幹線車両の愛称。


ソレを模しロールケーキに黄色いカボチャクリームを塗りチョコで窓を描いたドクターイエローケーキはカリナ、じゃなかった、かなりの力作←


カリナさんは、このドクターイエローケーキのレシピをネット検索して入手したらしい。


「やっぱり!ソンなコトだと思ったわ。サリィさん!コレってもしかして…」

「なるほど!流石は凄腕サイバー屋のスピアさんね!ねぇねぇ、マイルさん!カリナさんは貴方にゾッコンかもしれないけど韓流にもハマってたんじゃない?」

「あ、ハイ。彼女は、聖地巡礼で何度も訪韓してて、向こうの友達とメールしたり、韓国限定のグッズを買ってもらうとかで、送金したりしてました…あ、そう逝えば先日、口座からの送金が急に出来なくなったって慌ててたっけ」


スピアとサリィさんは「やっぱり!」と顔を見合わせてから、異口同音に叫ぶ。


「ソレはねっ!政府がカリナさんの銀行口座を凍結したのよっ!」


ええっ!メイドの口座を政府が凍結?!


実は、イエローケーキは、ウラン精製過程で得られる高ウラン含量粉末の俗称でもある。

さらに、カリナさんは韓国と頻繁にメールを交換し、金銭のやりとりを繰り返している。


さらに、サリィさんの逝うコトには…


「韓国への半導体材料の輸出規制に関して特定3品目の1つにフッ化水素があるんだけど、コレが韓国をスルーして北上してる可能性が指摘されてるの」

「え?そもそも韓国向けに輸出されたものが、何で更に北上しちゃうワケ?」

「フッ化水素は、核兵器の原料である六フッ化ウランを精製する工程で使用される。つまり核武装を進める上では必要不可欠なモノなの」


ええっ?その核武装を進める国とは…


「フッ化水素の対韓輸出は、目下増加中なんだけど、その内の幾ばくかが瀬取りで北上している、と逝う噂が絶えなくて」

「うーんソレだけ、今、世界はフッ化水素や六フッ化ウランという言葉に敏感になっている、と逝うワケか」

「その通り。そして、六フッ化ウランは、こうも呼ばれてる。つまり、イエローケーキってね」


何てコトだ。


"ジェシュロン"のアルゴリズムは、検索ワードの組み合わせやメール&口座の履歴からカリナさんをテロリストと誤解したのか?


ヲタクは誤解が許せない。

アキバはテロに屈しない。


第4章 最後の通貨


翌日、タチマンの法律事務所。

僕はミユリさんを連れて訪問。


「おぅテリィ!ウチの調査員をやってくれてんだって?エリカから聞いたょ。ありがとな」

「そうなの!アキバの事件ならメイド長と作家のコンビにお任せなのょ、ア・ナ・タ」

「違うだろ?作家とメイド長のコンビだょ!逝い直せよっ!」


何とエリカさんが甲斐甲斐しくお茶出し←

おぉ!お茶を差し出す時に爆乳の谷間がw


「タチマン!お前、絶対エリカさんの水着に頬ずりしてるだろ?」

「ええっ?な、な、なぜソレを…ってか、えっと、何だっけ?あ、頭が真っ白に…あの、起訴状が真っ黒に塗り潰されてほとんど読めない事件だったょな。情報提供者番号5758って、バカにしてるだろコレ。被告の名前も非公開じゃ弁護なんか出来ねぇよ。アンマリなんでこの前、裁判長に話を聞きに行ったら、裁判長も起訴内容は知らされてないんだってさ。コレでイキナリ保釈なしで勾留って何だょ。ま、勾留状が出たお陰で国選も動けルンだけどさ。全く、半島の大物スパイでも捕まえたのかっつーの」

「だょなー。ではオサライだけど、裁判長も知らない彼女の起訴内容はだな…」


僕の説明を聞くタチマンは、小学校時代、教室で担任の女教師の話を聞く時と同じで、少し小馬鹿にした顔つきだが要点は抑えてる。


さらに僕は、新しい情報を追加する。


「で、このヲタクなアルゴリズムを描いた会社の役員メールをハッキングしてみたら、外面(そとズラ)は何食わぬ顔してるけど、実は社内はアルゴリズムの不具合発覚で上へ下への大騒ぎになってるコトがわかった。さらに、この会社は、近々、政府の医療制度改革と歩調を合わせたソフトウェアシステムを発売する予定だが、そのプログラムに採用されているアルゴリズムは、今回、カリナさんをテロリストと誤解したシステムと同じだ。役員会議(ボード)は発売強行派と延期派に分かれて激論を展開中だが、両者が等しく恐れているのは、自社製アルゴリズムの不具合が社外に明らかになるコトだ」

「…あのなぁ、お前ら、ホントにアキバのヲタク、なんだょな?あの萌え、とか、フィギュア、とか騒いでるヲタクだょな?こりゃ立派な産業スパイ、ってか、もはや産業のつかない"スパイ"そのものじゃねぇか!何者なんだ、お前ら?」

「ヲレ達は、アキバのヲタクでソレ以上ではナイ。時にソレ以下になるコトはあるが」笑


まぁ、実のトコロ、今回のキモい部分の調査はサンクチュアリへの外注なんだw

サンクチュアリと逝うのは、その存在が半ば伝説化しているチャットシステム。


メンバーは世界頭脳級の大物ハッカーやボットネットの支配者など、異次元の才能を持つ者ばかり。

頼み方さえわきまえていれば、ネットの世界のコトなら、彼等に任せて結果の出ないコトなどない。


もちろん、スタートアップのファイアウォールを抜いて役員会議(ボード)の様子を盗み見るなんてコトは朝飯前だ。


実際、今回サンクチュアリからは役員全員の主張はモチロン個人的な性癖や嗜好のデータまで届く。

例えば誰がSで誰がMとか、彼等が通う秘密クラブの会員番号とか闇サイトで使ってるネームとか…


つまり、この世界で人を突き動かす原動力は金ではなくて"恥"なのだ。

誰かに恥をかかせたい、絶対に自分は恥はかきたくないと逝う気持ちだ。


というワケで、今回サンクチュアリに仕事を発注したスピアは、彼等に報酬として何を支払うと約束したのだろうか?


まぁ、想像は大体つくけどね←


「実は先日、依頼人に会いに行ったんだが、いかに刑務所が広いとは言え、中を15分も歩き回って、ソレでも未だ依頼人の下へたどり着かないんだ。国家の安全を脅かす、どんな危険人物が勾留されてるのかと思ったら…メイドだった。店から…え?何?御屋敷?御屋敷って何だ?とにかく!通常営業中に突然MPD(警視庁)に踏み込まれて、有無を言わさず麻袋を被せられて勾留された、と言ってたょ。でも、健気に耐えていた。自分は親に勘当された身で身寄りはないが、秋葉原の仲間が必ず助けてくれる、ってな。だから、俺はこの件の国選(弁護人)を降りる事にした。あの面会をした日から、俺は彼女の私選(弁護人)だ。コレで、俺もお前ら秋葉原ヲタクの仲間になれたかな?よろしくな、テリィ」

「タチマン。お前…」

「ところで、スマンが弁護士ってのもアコギな商売でな。規定があって全くのボランティアってワケにもいかないんだ」

「テリィ様がクラウド・ファウンディングを立ち上げて下さいます。それまでは、御屋敷の方で立て替えをさせていただきますわ、センセ」

「え?また御屋敷?さっきから御屋敷、御屋敷って、ソレ何だ?オタクの互助会か何かか?ま、ともかく実費程度はもらう事で既に依頼人とは話がついてますので、どうぞ御心配なく」

「実費って…あ、わかった!裁判所までの地下鉄代のコトだな?」

「違うょ。コスプレ代に決まってるだろ?」


ええっ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


カリナさんの公判は、国家の安全保障に関わる案件とかで、非公開となる…

となルンだが、実は後で聞くと、どうやら前代未聞の公判となったようだw


先ず、カリナさんはメイド服で被告席に立つ。

そして、彼女の代理人は…何だ?バットマン?


でも頭にはハンマーの形をした被り物←

自らを「アキバ・ハンマー」と名乗るw


軍人が被告なら軍服で、メイドが被告ならメイド服で出廷するのは当然…か?

裁判長!貴方の法衣も立派なコスプレ!貴方に倣い代理人もコスプレします!


「オタクを護って悪は叩き潰す!我が名は、アキバ・ハンマー!」


そして「アキバ・ハンマー」は、問題のスタートアップCEOを証人喚問し、内部資料に基づきアルゴリズムの不具合を問い質す。


たちまち検察側は総崩れ…どころかアルゴリズムの不具合を大至急確認するため、裁判所にCEOへの証拠提出命令を求める始末。


「では、この後は場所を変え、関係するみなさんで直接CEOに真実を聞かれては如何でしょうか?」

「裁判長としては、被告側弁護人の提案は至極名案に思えますが、検察側は?」

「検察も同感です。ありがとう、アキバ・ハンマー」


ココで、裁判長と検察とCEOはヤマ場と呼ばれる盗聴防止処置済みの室内へと移動するが、タチマンはヤマ場の中には入れない。


なぜなら、裁判長がヤマ場に消える前に検察の訴追を棄却したからだ。

自由の身となったメイドは、アキバ・ハンマーに付き添われ退廷する。


裁判所の廊下では、カリナさんTOのマイル他のヲタク連中が待ち構えていたんだが…

誰もカリナさんに近づけないwなぜなら家族が真っ先に駆け寄り彼女を離さないからw


勘当したハズの両親がメイド姿の娘を抱き締めて、ただただ泣いている。

その周りをホントに沢山の小さな弟や妹が、踊るように飛び跳ねている。


「身寄りがない」なんて、彼女の大ウソだ。

権田原家は、トンでもない大家族だったょ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


さて、そろそろ今回もお終いだけど、話し忘れたコトはないかな。


先ず、日本の捕鯨船団を襲撃するつもりだった環境テロリストの彼だが、最近のグリーンパージの象徴にされて未だ収監されてる。


環境を名乗れば全てが許される時代は既に遠く、環境テロリズムを取り締まる当局のグリーンパージは広く国民の支持を得ている。


ソレに引き換え半島のスリーパーの方は、特殊部隊まで繰り出し逮捕したと逝うのに、公正証書原本不実記載と逝う微罪に止まる。


ソレもフロント企業の会社登記に嘘があるとかで、懲役1年執行猶予4年がスパイ防止法を持たない国の限界だと逝うから情けない。


因みに"ジェシュロン"に引っかかったメールは「母から京都大学で画集を受け取る」と逝う文面だが、誰か何が悪いのか教えて。


ソレから「アキバ・ハンマー」誕生秘話w


最終章で現れイキナリ主役に躍り出て、美味しいトコロをかっさらって逝ったけど小学校の頃からこーゆー奴なんだ、タチマンは。


今回は、申立前夜に事務所のサーバーに不正アクセス(ハッカー攻撃?)があり、パソコンのデータが全部消えてしまったとのコト。


申立書のバックアップも全部やられ、しかもシステムは48時間使えないとのコトで徹夜の突貫作業で訴訟書類を手書きで仕上げるw


この時(未来の?)夫を助け、司法書士の能力を遺憾無く発揮し、獅子奮迅の働きを見せたのがエリカさんで、申立書完成に大貢献←


アキバ・ハンマーのアイデア?は、この徹夜作業の異常な興奮状態の中でエリカさんがふと口にした、あくまでジョークだったが…


どうやら「ハンマーで悪を叩き潰す」と逝うのがタチマンのツボにハマったみたいだ。

何でも、米国留学中にCATVの深夜CFで見た「ハンマー弁護士」に感化されたらしい。


その後「アキバ・ハンマー」は年末の流行語大賞にもノミネートされる大ヒットとなり、彼の事務所には、常に長蛇の列が出来る。


意外に商才アルょなと率直に驚く笑。


実はコスプレも前から興味があったらしく、今ではエリカさんのクローゼットにはメイドやらセーラー戦士やらのコスプレが並ぶ…


あ、あのセーラープルートのコスチュームは確かミユリさんのじゃないか!

と逝うコトは…ミユリさんのセーラープルートは、もう見られないのかな?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日の御屋敷(メイドバー)


「スピア!その格好は何?ヤメて頂戴!」

「ミユリ姉様、ゴメンナサイ!でも、私は今、お支払い中なので」

「え?ビキニ姿で何を支払ってるの?」


スピアが白スク水で…やや?白ビキニか?

水着で堂々と御帰宅してミユリさん激怒←


「サンクチュアリの連中に脅されて…私は今、公開処刑されている最中なの!」

「でも、何でそんなにうれしそうなの?」

「やめて!私が恥ずかしくないとでも思ってイルの(思ってイルょ)?私が、この恥ずかしい思いをするのと引き換えにサンクチュアリに動いてもらったのょ」


やれやれ。


人類の誕生以来、"恥"は異文化・異次元を繋ぐ万能共通の"通貨"だ。

今回、スピアからサンクチュアリへの支払いは、スクール水着の御披露w


え?スクール水着じゃない?じゃ何?

スクールビキニ?何だょソレ?初耳w


ミユリさんが、声高にスピアを非難するが、スピアがソレに動じるコトはナイ。

ナイどころか、彼女は白ビキニに包んだ立派なバストを僕に突き出してみせるw


おーいウィンクなんかするなょ!

話が余計にややこしくなるだろw



おしまい

今回は、世界的盗聴システムの日本版、環境テロリスト、半島のスリーパー、そして、主人公の小学校同窓生のタチマン弁護士、タチマンとは犬猿の仲のハズの司法書士などが登場しました。


20話台後半から、リサーチしたネタは惜しみなく描き込み、かつ、スピード感は損なわいようにと意識して実験中です。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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