7
…と終われるハズもなく、連休明けて、アタシはグッタリしたまま会社へ出勤した。
「おはようございます。課長」
「波希課長、おはようございます」
「うん…。おはよう」
みんな、充実した連休を過ごしたんだろう。
輝く笑顔が眩しい…。
二課のオフィスルームに入ると、次々と仕事の確認が入る。
落ち込んでもいられないな。
一通り終えると、自分の席に座った。
課長ということで、誰よりも良い机とイスを与えられている。
…でも今はちょっと恨めしい。
座り心地が良すぎて、眠りたくなるからだ。
「波希課長、お疲れですか? 連休、休まれなかったんですか?」
二課で一番若い女性社員が、熱いコーヒーを淹れてくれた。
「ある意味、休んだことは休んだんだけど、ね…」
連休中、一度も服を着ずに過ごしたことなんて今までなかった。
「あ~、何にもしないで過ごすと、逆に疲れるというやつですか?」
「…いや、何もしないことはなかったんだけど」
ベッドの中では強制的に…って、ダメだ!
思い出してはいけない。
アタシの今までの人生の中で、最大の汚点だ!
「アレ? そう言えば課長の着ているスーツ、連休前に着ていたのと同じですねぇ?」
「ぶっ!」
思わずコーヒーをふき出してしまった。
すっスーツはいつの間にか彼がホテルのクリーニングに出していたので、綺麗にはなっていた。
今日はそれを着て、ホテルから出勤したからなぁ…。
「くっクリーニングに出してたから、忘れてたわ」
「そうですか。でもよくお似合いですよ」
「あっありがとう。そろそろ仕事に戻りましょう。先月の成績は良かったけど、今月はまた違うんだから」
「そうですね。一課に負けないように、頑張りましょう!」
女性社員は鼻息荒くして、自分の席に戻った。
二課のみんなは先月の成績が良かったせいで、仕事にも集中している。
目の仇にしていた一課にようやく勝てたのだ。
おかげでアタシの課長としての株も上がったし、めでたしめでたし…で終わりたかった。
気が抜けすぎると、よくない。
アタシは気持ちを引き締め、仕事に取り掛かることにした。
さっき言った通り、先月は良かったけれど今月はどうなるか分からない。
特に一課の連中、負けた悔しさもあるからかなり気合が入っているだろう。
とにかく、あのホテルのことはいったん忘れて、仕事に集中しよう!