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アタシの耳元で、彼は低く囁く。
「ひっ!」
あまりにも艶のある声に、腰の辺りがゾクゾクする。
「ちょっ、やめましょう? そろそろチェックアウトの時間でしょう?」
壁にかけてある時計を見ると、すでにお昼が近い。
「ああ、大丈夫。連休いっぱいまではこの部屋、抑えたから」
えっ…それって…。
おフロに入ってあたたかくなったはずの体が、どんどん冷たくなっていく。
「どうせ予定は入れていないんだろう?」
「そっそうです、けど…だからと言って、ここで過ごすつもりはありません!」
「わたしかキミの部屋でもいいけど?」
「それは激しくお断りします!」
この人、思っていた以上に人の話を聞かない上に、ワガママだ!
「なら、ここでいいな」
そう言うと、バスローブの腰紐を解かれた。
「きゃあ!?」
「うん、その声可愛いね」
「白神課長、いい加減に…」
「こういう時には名前で呼び合うのが、マナーってものだよ」
「むっ邑斗さん」
「よくできたね。柚野」
頭を優しく撫でられ、思わず緊張が緩む。
しかしこの人は油断ならない人だということを、アタシはすっかり忘れていた。
目の前でニッコリ微笑み、とんでもないことを言い出すまでは…。
「じゃあ、ご褒美に気持ち良くさせてあげよう」
ぎっぎやあああああっ!
…アタシの心からの絶叫は、彼の唇によって封じられた。
<完>