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「うっ…」
「しかもそのままわたしをベッドに押し倒した」
「うぐぐっ…」
「そして服を脱ぎ出し、わたしの服も脱がせて…」
「わーっ! もういいです! ゴメンなさい、すみません!」
アタシは耐え切れなくなって、布団に顔を埋めた。
どーせそんなことだろうと思いました!
…体の奥にあるダルさは、とてもお酒のせいにはできない。
それにこの妙にスッキリした感覚も、覚えがある。
たまったモノが、スッキリしたんだ。してしまったんだ。
シクシク…。
「…って言うか、何で反撃しないんですか? 白神課長」
思わず恨みがましくなってしまう。
いくら酔っ払っていたとは言え、男性の力であれば容易く動きを封じられただろうに…。
するとキョトンとした顔をされた。
「そりゃあキミ、据え膳を喰わない男なんていないだろう?」
あっさり認めた!? 自分の下心を。
「20歳も年下の魅力的なキミに迫られちゃあね」
…そうだった。アタシとこの人は20歳も違ったんだった。
今、アタシは28歳。
この歳で、しかも女で営業課の課長になれたのは、アタシだけだった。
そのぐらい成績が良かっただけのこと。
他の営業課の課長は男性ばかりで、やっかみは多かったけど、彼だけはまともに話をしてくれた。
まあ社交辞令的な話ばかりだったけど…少なくとも体を許すほど仲は良くなかったはずだ。
しかも恋愛感情なんて一切なかった!
アタシは独身で恋人もいなかったけど、彼に片想いなんてしていなかったのに…。
…お酒のせいかな? それとも浮かれた気分のせい?
よりにもよって、ライバルと寝ちゃうなんて…大失態!
「そんなに落ち込まれると、こっちも落ち込むんだけどな」
そう言いながらタオルで頭を拭く。
しかしそう言われても、結局誘ったのはアタシの方だし、誘いに乗った彼を恨みたい気持ちはあるけど、でもやっぱり悪いのはアタシだ。
彼は据え膳と言ったが、女であるアタシに恥をかかせない為だったかもしれない。
女から誘ったのに、断ったら後に恨まれると思ったのかも…。
「あの、白神課長」
「うん」
「その、本当にすみませんでした。ホテル代はアタシが払いますので、お先にどうぞ」
いくら会社から離れた所にあるホテルとは言え、知り合いがいない可能性は低い。
一緒にホテルに出たところを見られたら、もう会社にはいられない。