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自分の部屋だと思っていたけれど、ここは…ホテルの一室だった。
しかも寝ているベッドは、ダブルベッド!?
「う~ん。混乱しているところ悪いんだけど、前、隠した方がいいよ」
「前って…きゃあああっ!」
なっ何にも着ていない!
慌てて布団を手繰り寄せ、隠した。
「えっ、しっ下着は…」
キョロキョロと周囲を見回すと、ベッドの下に脱ぎ散らした衣類が…!
サーーーっと勢い良く、血の気が下がる。
ズキズキと頭が痛むごとに、記憶が断片的に思い浮かぶ。
「あの、白神課長?」
「何だい? 波希課長」
波希柚野、アタシの名前だ。
「昨夜…一体何があったか、教えてもらえます?」
「うん、そうだねぇ…」
白神課長はベッドに腰を下ろし、顎に手を当てた。
「まず昨夜、わたしは昔の知人と会って、飲み屋に行ったんだ。話は弾んで、朝方まで飲んでしまった」
アタシと似たような状況だったんだ。
「それでうっかり終電に乗り過ごしてしまってね。始発を待とうかと駅に向かっていたんだ」
ここまで同じとは…。
「そしたら目の前に、上機嫌で鼻歌を歌ってスキップをしているキミを見つけたんだ」
ぐはっ!? みっ見られてはいけないシーンを、見られたくない人物に目撃されるとは…。
「それで声をかけたんだけど、ちょっとテンションがおかしくてね。その時のこと、覚えているかい?」
「あっあんまり…」
正直に言うと、鼻歌を歌ってスキップをしている頃から記憶がない。
彼は苦笑し、肩を竦めた。
「だろうね。それで少し話をした途端、キミは急に眠いと言い出して、フラフラし始めたんだ。だから駅前のこのビジネスホテルに寄った。ちなみにベッドのサイズはキミの希望だよ」
「えっ、ウソッ!」
「ウソじゃない。フロントの人に大声で『ダブルベッドで!』と言ったんだ」
下がった血の気が一気に上がってきた。
「まあ広いベッドで寝たかったんだろうと思って、わたしはとりあえずキミを引き摺りながら部屋へ運んだ」
「はい…」
「その後のこと、全く覚えていないのか?」
「えっと…」
おぼろげながら、この部屋に入ってきた時のことは記憶にある。
だけど…その後はプッツリ。
「そのまま寝ちゃったとかは…」
「うん、ないね」
僅かな期待は、すぐに潰されてしまった。
…そりゃそうよね。じゃなきゃ、素っ裸で寝ているはずがない。
「ベッドに寝かせた途端、キミはいきなり抱き付いてきたんだよ」