8 生活費がたりないよ。
無事に魔法学校の入学も認められた翌日。俺と父さんは宿で頭を抱えていた。
「まさか、冒険者ギルドに預けてあったお金が無くなっているとはな。このままでは、生活費が足りないぞ。毎年の学費9年分は、ギルドに今ある450万ゴールドで足りるけれど。」
学校の、年間授業料は50万ゴールドらしい。前世の記憶からだと随分と安い。ああ、でも最近は義務教育は授業料無料だったな。それから考えると、年間50万は高いな。
「父さん、冒険者ギルドで俺が依頼を受けて働くことってできるの?」
「いや、無理だ。討伐依頼は確か10歳から許可が下りる。一番下のランクのFでも、7歳からだったか。うちの村でも見習いは7歳からだからな。Fランクの仕事は、町の中の安全な仕事に限られる。郵便配達とか、清掃作業とかだなぁ。」
まだ二年も働けないのか。うーん、生活費がないと生きていけないしなぁ。
「そもそも、ギルドの致命的な法令違反なのだから、ギルドがお金を払うべきだ。アレクが働く必要なんかないんだぞ。アレクには勉強に集中してほしいし。とりあえず、今日もギルドへ行ってくるよ。」
「あ、俺も行くよ。」
俺たちは、宿で朝食を済ませて冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドでは、いつものように多くの人が来ていた。俺たちは、まっすぐに受付へ向かう。
「すみません、今の責任者の方とお話がしたいのですけど。」
「はい、見えられたら二階に通すように言付かっております。」
俺たちは、二階に向かった。前回俺が来た時と同じ部屋に通された。
「アレフレッド様、副ギルドマスターのアンです。先日は席を外しておりまして、対応できませんでした事、深くお詫びします。」
「いえ、あなたが悪いわけではありませんから。それで、ギルドマスターの行方はわかりましたか?」
「申し訳ありません。ギルドマスターの行方はいまだに不明です。現在、すべてのギルドで指名手配して行方を捜索中でございます。」
ギルドマスターは逃走中のようだ。代わりに副ギルドマスターが対応してくれるようだ。女性の役員は珍しいな。
「そうですか。現在ここの口座に残っているお金は、先日聞いた600万から150万引いた額、450万ゴールドで間違いありませんか?」
「はい、間違いありません。」
「では、3600万から150万引いた金額が3450万円。そのうち、450万円は残っているので、ギルド側の借金は3000万ゴールドで間違いありませんか。」
「はい、間違いありません。」
「では、3000万の借用書を用意してください。」
「はい。」
「450万は魔法学校の9年分の授業料なので、毎年50万を、魔法学校に支払ってもらえますか?それを依頼としてギルドに発注しますので、その依頼料は残りの3000万から相殺してくれませんか? ああ、その際に、毎年の返済状況の報告書をうちの村まで送ってください。それも依頼に含めます。できれば、うちの村に唯一来ている商人がいるので、そいつに頼んでやってください。」
「はい、問題ありません。」
「あと、毎月息子に生活費として10万ゴールドを渡してください。毎月、月頭に取りに越させますから。その生活費の10万を毎月の返済額とします。」
え、3000万ゴールドの毎月返済額が10万?おかしくない?まあ、家を購入した時の住宅ローンと思えばありか。
「え、返済額は毎月10万ゴールドでよろしいのですか?」
うん、副ギルドマスターも唖然としている。
「ええ、息子の生活費さえ問題なく支払われるならば、私は何も問題ありませんから。それで、9年後の息子が卒業した時に再度残高の返済計画を相談しに来ることにします。それで何か問題ありますか?」
「いえ、こちらにはかなり良い話です。ご配慮に感謝いたします。」
「はい、もともと200年も放置していたお金ですし、うちの種族は基本自給自足なのでお金はあまりいらないのですよ。」
「えーと、それで利息とかの方はどうすればよろしいでしょうか・・・。」
「え、利息ついてたの?いや、うちは息子の生活費さえしっかりしてくれれば、あとはいらないですよ。」
なんか、太っ腹だぁ。いいのかそんなんで。まぁ、父さんが良いなら俺が口出すことではないけれど。
「ただし、息子の生活費が支払われないという状況が発生した場合、容赦はしませんよ?その時は、すべての竜神族がリオの町の敵となります。あ、冗談ですけどね。あはははは」
いや、シャレにならないから。副ギルマス硬直して動けなくなっているから。やめたげて。
俺と、父さんは、ギルドから3000万の借用書をもらってそのままギルドを後にした。
帰り道、父さんは少し買い物があるとかで、俺は一人で宿に向かった。帰り道、もうすぐ宿に着く所で、小さな路地から男に腕をつかまれて引きずり込まれた。
あららら、これってもしかして誘拐ってやつかぁ。俺は、すぐさま袋のようなものを被らされて、馬車に押し込まれたようだ。見えないからよくわからないけれど。まいったなぁ、父さんキレないと良いけど。。こんな時になっても、犯人の心配をしてしまう俺って、よほど父さんが怖いのかもしれない。しかし、こいつら俺が竜神族だって知ってて攫ったのかな。
俺は、いきなり殺されることはないだろうと思ったけれど、念のために体全身を膜のような結界で覆った。物理、魔法攻撃を防御する結界である。もちろん、息ができるように空気は通すようにしてあるし、光も通す。外から見ても、結界の存在には気が付かないだろう。ああ、昔の練習をしていた結界とはまた違う優れた点がある。この結界の維持には自分の魔力は消費しないのである。結界の周辺にある魔力を補充して結界の効力が持続するのである。つまり、時間無制限に結界を維持できる。
しばらく、馬車のような乗り物で揺られていると、目的地に着いたようだ。俺は、降ろされて袋を被らされたまま連れていかれる。うーん、どこに連れていかれるんだろう。しばらくすると、ドアの開く音がして部屋の中に入ったようだ。そこで、袋を剥がされた。
「そこでおとなしく座ってろー。」
犯人さんは、そう言ってドアに鍵をかけて出て行った。