61 竜神族の村の代表者会議
実家に着くと、さっそく母さんに村の代表者会議に出たいことを伝えた。
「母さん、村の代表者会議に出たいんだけど。」
「またどうして?」
「リオの町はセレネティア王国と自由貿易することになった。その報告と。国を立ち上げたらどうかと思って、会議で提案しようと思う。」
「また難しいことを。。お父さんに話してみるわ。」
国を立ち上げる話は、セレネティア王国の外交官が言うには、周辺国からもう国と認められていると話があったからだ。それに、村と町がバラバラに独立して存在しているよりは、国内の町と村で管理した方が、色々とやりやすいと思うのだ。
その晩、シルフィーに晩ごはんを作ってもらった。家族全員からの希望であった。食事中に父さんから話しかけられた。
「アレク、代表者会議に出たいんだって?」
「うん、いろいろ報告とかあって。」
「明日、招集かけてみるか。」
父さんが明日声をかけてくれるようだ。
翌日、さっそく会議が開かれた。参加者は、村のすべての家の家主ではなく、それぞれの家系の長老とか呼ばれている年配者ばかりだった。この会議にはすべての家系の本家代表が参加している。分家は参加できないらしい。人数は12人であった。うちのミラー家からは父さんが代表として参加している。
「みなさん、忙しい中集まっていただきありがとうございます。ミラー家の代表、アルフレッドです。今日は、息子のアレクシスから報告があるので集まってもらいました。」
続いて、俺が外交官との協議で決定したことを報告した。
「こんにちは。ミラー家アルフレッドの長男、アレクシスです。今回、セレネティア王国とリオの町で自由貿易をすることになりました。その報告に伺いました。」
それを聞いた村の代表たち、なにやらおかしな雰囲気になっている。あれ?何か自由貿易にするとまずかったのだろうか? すると、ひとりの年配のおじいさんが言った。
「その自由貿易とはなんじゃろう?」
え? そこから説明が必要なのか? 俺はセレネティア王国と、関税をかけずに貿易を行うことができると説明した。すると今度は、関税とは何かと聞かれた。俺は、この村の外交についての知識を舐めていたかもしれない。俺が説明に困っていると、父さんが助け舟を出してくれた。
「難しく考えるな。今までとなんら変わらずに商品の売買ができるんだよ。これでこの話は終わりだ。他に何かあったか?」
それでいいのか父さん。。村はセレネティア王国と、どのように商品をやり取りしているのだろう? 俺は続けて国の立ち上げについて提案する。
「今現在、この竜神の森には竜神族の村と、リオの町が存在します。同じ竜神族が支配する村と町ですので、この二つを内包する国を立ち上げたらどうでしょうか? 領土は竜神の森全体です。」
俺がそのように提案すると、部屋のあちこちでザワザワと話し出した。いきなりこんな提案をしても困るだろうな。しかし、いずれは通る道だと思うので早いに越したことはない。
「国を立ち上げると、何か変わるのかの?」
国になると何が変わるのか、俺は考えてみた。
村では、税金を集めているという話は聞かない。国になると、税金を取られるようになるだろう。しかし、その税金を使って何か公共のサービスがあるのかと言うと、村にはそんなものはない。逆にリオの町は税金を徴収している。そして王国から支援金が出ていた。しかし、来年度は税金を徴収しても公共のサービスは無いし支援金も当然ない。これでは町民の不満が爆発するだろう。なんとかしなければいけない。
村での現状を見てみる。水道は山からの湧き水でそのまま飲める。下水はこの村にはない。排泄物は一杯になったら山に捨てに行く。消防署なんかもいらない。火事になると、その家は燃えて全焼してしまうが、家同士はかなり離れているので延焼する可能性はない。村人総出でバケツリレーで事足りるのである。警察も治安が良すぎていらない。公共のサービスがない現在、税金を徴収しても使い道は無いし、村民は不満ばかり溜まるだろう。
新しく公共の事業を作ればいいのではないだろうか。下水はリオの町では垂れ流しである。下水処理場を作って国営事業として運営すればいいのではないか? この村でも、排泄物を山に捨てに行くのは大変だし何より臭い。この村にも地下に下水道と、下水処理場を作ることができれば、そのような苦労とは無縁になる。
また、国営の病院と学校も作って、治療費、学費を無料にすれば良いサービスとなるだろう。
鉄の生産が始まれば、どこの国の鉄よりも品質には自信がある。貿易で大幅な黒字になれば、もしかすると税金も安くできるかもしれない。
リオの町に必要なのは軍隊だろうか? 当然、他国から侵略される可能性もあるだろう。俺がいれば守れるだろうが、不在の時にリオの町に攻められると、大きな被害が出てしまう。それに比べて、この村は守る必要はないだろう。。人間が戦争を仕掛けても、無駄なのは誰の目にも明らかだ。
俺は、これらの事を事詳しく説明していった。すると、あちこちから賛同の声があがってきた。
「ふむ、トイレの後処理がいらなくなるのは魅力的ですなぁ。」
「そうですな、あの山に捨てに行くときに、匂いが堪らんのだ・・・。」
「うむ、そのようなメリットがあるならば国にしても良いかもしれん。」
どうやら、トイレ事情はかなり困っているらしい。それならば、全部の家に水洗トイレをつければ、大変喜ばれるのではないか?
そこで、父さんから意見が出た。
「国を作るのは良いが、誰が国王になるんだ? そんなめんどくさいこと誰もやりたがらないと思うけどな。」
「え? 国王になりたくない人なんているの? 一番偉い人だし、お金持ちにもなれるよ。」
「・・・、この中で国王やりたいひと、いるか?」
全員が一斉に黙り込んだ。時が止まったように、あたりがシーンと静まり返った。なに!? 誰もやりたがらないの? 人間ならば、国王になりたくて血族でさえ殺し合うと言うのに・・・。すると、ひとりのおじいさんが言った。
「それは、言い出しっぺのアルフレッドの息子がやればええやろ。頭もよさそうじゃしなぁ。トイレの件、よろしく頼んだぞ。」
え・・・。いや、俺は町長をやっているのに国王なんてできるはずがないだろう。。
「いやいやいや、私はリオの町長で精いっぱいですよ。。」
「そんなもん兼任すればよかろう。リオの町でやることを、同じように村でもやればいいんだから。簡単じゃろ?」
「と・・・、父さん。。何とか言ってよ。。」
「俺は良い考えだと思うけどな? おまえ、空を飛べば、リオから村まで数分で来れるじゃないか。お前なら、適任じゃないのか?」
うう、なんか俺の扱いが酷すぎる。俺は何とか話をかわそうとする。
「しかし、まだ10歳の私に国王なんて務まるのですか? 誰も言うこと聞いてくれないのではないですか? 私には無理だと思うのですが。」
「何を言っておるのじゃ。御使い様の言うことをきかない奴なんておらん。安心せい。」
ここで御使い様を出されたよ。。しかも、全然崇められていない気がするし。
「ところで、御使い様が治める国って聖国になるのかの?」
聖国? そんな国名、小説の中でしか聞いたことがないが。たしか、教皇が治める国じゃなかったっけ?
「すると、ミラー家が治めるから、ミラー聖国になるのかの?」
「なんか、ダサくないか?」
「そうか?」
なんか、話が独り歩きしだした。
「竜神の森王国はどうじゃ?」
「おお、それは良いかもしれん。」
簡単に聖国から王国に変わってしまった。。そして、その時はやってきた。
「では、多数決をとるぞ。えー、アルフレッドの息子が国王に相応しいと思うもの手を挙げい。」
俺以外、全員の手が上がった・・・。おいおい。。
「では、あたらしい国名は『竜神の森王国』が良いと思うもの、手を挙げい。」
これは、俺を含めて全員が手を挙げた。
「はい、決定。それでは、国名は『竜神の森王国』、国王は・・・、おい、息子の名前なんだ・・・?」
「アレクシスです。。」
「アレクシスに決定じゃ。それでは解散。」
そして、ゾロゾロと出ていくおじいさんたち。。
おーい・・・。
どう考えても、皆が嫌がることを押し付けられたな。
しかし、言いだした手前やるしかないのか・・・。
こうして俺は、無理やり国のトップに祭り上げられたのである。
◇◇◇
家に帰ってからが、また大変だった。。父さんと俺が帰った挨拶をする。
「ただいま。」
「ただいまもどりました。」
「「「おかえりなさい。」」」
母親とシルフィー、ニーナがそろって返事をしてくれた。姉さんは部屋にいるようだ。すると父さんが家族全員を食堂に集めた。
「今回の代表者会議で、アレクが国王になることが決まった。国名は『竜神の森王国』だ。」
「ええええええええええええええええ」
そりゃ、驚くよな。。俺も驚いているのだから。
母が答えた。
「こ・・・、国王ってあんた。。どうしてそんなことに・・・。」
「・・・。」
姉さんが驚きのあまり呆然としている。
「まいったよ、国を立ち上げたらどうかと提案しただけなのに、国王をやれだなんて・・・。」
すると、父さんが言った。
「この村の住人は、みんな金には興味がないからな。。国王なんてめんどくさい仕事、誰もやりたがらないだろう。。会議で決まったのだ、もう覆ることはない。。腹をくくれ。」
「父さんだって反対しなかったくせに・・・。」
「そりゃ、俺は適任だと思ったからな。。」
「うぅ。。」
俺は、頭を抱えてテーブルに伏した。




