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56 試しに馬車を作ってみた。

 俺はリオの町の産業として製鉄事業を考えている。生産した鋼で板バネを作り、すべての馬車の乗り心地を良くしてやろうと企んでいるのだ。試しに板バネを装着した町長専用馬車を作りたいと思う。


 まずは馬車を引くための馬を手配することにした。しかし、馬ってどこで買うのだ? 牧場に行けば買えるのだろうか。わからないことがあれば、とりあえず商業ギルドだろう。


 商業ギルドへ到着した俺たちは、早速受付で質問する。


「すみません、馬車を引く馬を購入したいのですが。売っている人を紹介してもらえませんか?」

「少々お待ちください。町長さんが来られた場合、ギルドマスターに報告するように言われておりまして。」


 受付はギルドマスターへ報告に行った。しばらく待っていると、俺たちは奥に通された。


 軽く挨拶をすると、ギルドマスターのエマさんが言った。


「町長さん、今回は馬をお探しのようですが。馬車の購入ではなく馬だけです?」

「はい、馬車を作ろうと思いまして。馬車を引く馬だけ入手したいのです。」


 そう話した瞬間、エマさんは金の匂いを感じ取ったのか目がギラリと光った。


「わざわざ馬車を作るのは、何か考えがあるのですよね?」

「ええ、乗り心地を改善するアイデアを思い付きましてね。その試作第1号を作ろうかと。」

「面白そうなお話ですね。完成したら私も乗せてもらえないですか?」

「はい、かまいませんよ。」


 エマさんに、試乗の時は招待することを約束した。

 そして、馬の手配ができたら連絡してくれるようにお願いした。


 屋敷に帰ってくると、馬車を作るのに必要な材料を調達する。


 まず必要なのは、馬車の車体を作るための木材である。最近、木材の使用が増えてきているので、先日庭にログハウスを建てた時に、余分にかなりの木を伐採して庭で自然乾燥させている。何故在庫を抱えるような事をするのかと言うと、一番初めに野営用のログハウスを作った時に急激に乾燥させたせいか、サイズは短くなるし、表面が割れたりしてしまったのだ。なので、普段から自然乾燥しておき、必要な時はマイクロ波で乾燥させるようにしている。乾燥させた材木は、シルフィーに収納してもらえばかさばることもない。今回は乾燥済みの木材を使うことにした。木を伐採することが多いので、近いうちに苗木を植えに行かないといけないと思う。


 次に、板バネの材料となる鉄鉱石を鉱山に取りに行こうと思う。


 ここで秘密兵器を紹介しよう。実は、ログハウスを作った時の木材の余りで、シルフィーたちを乗せるゴンドラを作ったのだ。

 もちろん、木材同士をしっかりと組み合わせてあるし、あちこち金具で固定して補強してある。空中分解することはない。ゴンドラの四方の角からは四本の大きな鎖が伸びている。それが一つに束ねられた大きな金具をベルトのフックに固定する。

 俺は娘二人をゴンドラに乗せると、ゆっくり浮上していく。ゴンドラは簡単に持ち上がった。そのまま低空を維持してゆっくりと空を移動していった。ニーナ、嬉しいのはわかるけどあまり騒がないように。落ちるぞ。


 鉄鉱山に着くと、俺は坑道に入っていって鉄鉱石を採掘していく。それをまとめて錬金術で石から鉄の成分だけを分離していく。鉄の純度は極めて高い。鋼と言っても良いくらいだ。俺はどんどん鋼を作って、シルフィーに収納してもらった。十分に鉄を入手するとまたゴンドラで屋敷まで帰ってきた。


 早速、俺は馬車を作り始める。曲線が多い車体は難しいので、まずは直方体の車体を作る。柱となる木を何本か組み合わせると、隙間を薄い板で張り合わせていくだけなので比較的簡単にできた。横に乗る部分と、前方に穴をあけ御者が座る部分を作る。

 車輪はT字型の木のパーツを8個円形に並べてひとつの車輪にする。車輪の外側が木だとすぐに損傷するので、外周を覆うように薄い鉄板を巻いていく。


 二つの車輪を一本の軸で繋げて固定するのではなく、四つの車輪が独立して上下する方が良いだろう。全部の車輪に板バネをつければ乗り心地はかなり改善するはずだ。自動車工学が詳しくない俺でもそのくらいはわかる。早速鉄を板状に加工し少し反るように曲げる。それを重ねて板バネ本体を完成させると、車体に取り付けた。車輪軸は直接板バネに固定する。もちろん車輪が回転するように、鉄製のベアリングを軸に組み込んでいる。


 仕上げに馬車を白く塗装した。ムラが出ないようにできるだけ均等に、乾いたらまた上から塗装。三度ほど塗装を重ねて乾かすと馬車の完成だ。ちなみに塗装についても素人なのだが、器用スキルで恐ろしく綺麗に仕上がった。

 馬車ができるとやっぱり車庫も欲しくなる。あと、馬小屋も必要だろう。俺は簡単なガレージと、馬小屋を数日かけて作り上げた。前回余分に伐採してきた木材がもう全て無くなってしまった。ガレージと馬小屋が完成すると、もう屋敷に庭は無くなっていた。まぁ仕方がない。


 馬小屋が完成して数日が経過したある日、屋敷に孤児と思われる子供がやってきた。


「町長さん、馬の売り手が見つかったって。商業ギルドまで来てほしいそうです。」


 メッセンジャーの子供である。孤児たちはたまに連絡係として雇われることがある。当然、電話やスマートフォンはこの世界には存在しないので、連絡する為だけにも人を雇うことがある。この連絡係の仕事は、孤児たちにとって重要な収入源となっているのだ。


 どうやら馬が手に入るらしい。俺はすぐにでも商業ギルドへ行こうとしたが、思いとどまった。馬がいても扱い方がわからない。御者の経験もないし、乗馬もしたことがない。困った。普通に家に連れて帰るのも大変だぞ。力任せに肩に担いで帰ってもいいのだが、暴れられそうだしな。

 急遽、メイドと護衛たちを集めると聞いてみた。


「突然集まってもらってすみません。この中で御者の経験がある者はいませんか?」

「はい。」


 すると、幸運にもクレアが手をあげた。もともと、貴族のたしなみとして乗馬を学んでいたらしいのだが、何度か馬車で移動中に御者から走らせ方を教えてもらったのだそうだ。


 クレアと俺は、早速商業ギルドへと向かう。商業ギルドに着くと、早速ギルドマスターのもとへと案内された。軽く挨拶を交わすと、俺は本題をきりだした。

「馬の売主が見つかったと聞いたのですが。」

「はい、今度行商人をやめて店を開く商人の方がいましてね。その方が馬車を馬ごと売却希望なのだそうです。それをギルドとして購入しまして、馬を町長さんにお売りしようと思います。」


うん、悪い話ではない。何なら馬車も買い取って板バネを取り付けて売ることも可能だ。


「エマさん、馬車も買い取らせてもらいますよ。」

「そうですか? 馬だけでもギルドとしてはよろしいですよ?」

「はい、同じように乗り心地を良くして再度売れば利益が出ますからね。」


エマさんは、微笑みながら目をギラリとさせる。


「わかりました。それで例の馬車はできたのですか?」

「ええ、なんでしたらまた馬車で本日伺いましょうか?」

「いいえ、今から町長さんのお屋敷までご一緒しましょう。」


 驚いたことに、ギルドマスター自ら馬車を見に来るそうだ。それでは帰りはギルドまで送ってあげよう。俺は馬車の購入手続きを済ませると、エマさんは質問をしてくる。


「町長さん、もしよろしければ商業ギルドに加入しませんか? 商売をするのであれば登録していた方が色々と便利ですよ。ギルドメンバーになれば、町の通行税が免除になったりする特典などもありますよ。」

「ああ、その件も聞きたかったのですが、町長も登録できるのでしょうか?」

「可能ですよ。町営の商会として登録してもらいますけどね。その代表がアレクシス様ということになります。」

「わかりました、しかし登録は後日にします。」

「はい。よろしくお願いいたします。」


そのまま購入した馬車で屋敷まで戻った。屋敷までクレアには御者をしてもらい、簡単な馬車の操作法を教えてもらった。


感想で乾燥の事を指摘されたので、38話のログハウスの話を少し加筆修正しております。

本文後半の『町営の法人』を『町営の商会』に変更いたしました。2019/3/31


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