52 この町の産業
この屋敷に引っ越してきて初日。
それぞれのメイドに担当を決めて、一応夕方までは各自仕事をしてもらっていたのだが、今日の仕事を終わってもらおうとした時、早くも問題が発生した。エルエットが言うには、
「ご主人様、私たち三人は近くの小さな小屋に住んでいたのですが、国からのお金が打ち切られた為にその小屋の滞在費が払うことができません。住むところが無くなってしまうのですがどうしたらよろしいでしょう・・・?」
「あ、それじゃぁ二階の空いている部屋に住んでいいですよ。四部屋も空いているし、ひとり一部屋の住み込みで働いてもらった方が宿代が節約できるからね。」
俺は、メイドたちを二階に住まわせることにした。どうせ空いているのだ、お金は節約したほうが良いだろう。お客様が来た時は、宿を手配すればいいだろう。
「ありがとうございます。」
メイド長のエルエットは深く頭を下げた。
「シルフィー、小屋の明日までの滞在費をエリエットに支払ってあげてくれる?」
「はい、分かりました。」
シルフィーは会釈して答えた。
「エルエット、小屋のお金は日払いできる?」
「はい、可能です。」
「では問題ないね。シルフィー、明日はニーナを護衛につれてメイドたちの荷物収納してきてあげて。明日はメイドたちの引っ越しを優先的にお願い。」
「はい、分かりました。アレク様は明日はどうするのです?」
「ああ、俺は明日図書館にひとりで行ってくる。この町の歴史とか産業を調べたい。」
「はい、分かりました。」
翌朝、シルフィーとニーナを送り出すと俺は図書館に向かった。
図書館は、リオの町の中心から少し外れたところにある。中に入ると、紙の匂いが充満している。俺は、多くの書物からこの町の歴史についての本を探した。
本によると、この町は昔、竜神の森の奥から鉄鉱石を採掘していたらしい。おや、うちの村って鉄鉱石の鉱山でもあったのかな。そう言えば、父さんは鍛冶屋だ。鉄はあるはず。。今は採掘していないのは採掘量が減ったからかな?
俺は、思ったら即行動を実行した。図書館から出ると、そのまま飛び上がり竜神の森上空を飛ぶ。そして俺は上空から高圧の電流をパルスとして地中に発射。いわゆる金属探知である。電波レーダーと同じようにパルスに魔力を乗せれば地中に存在する金属を識別できる。やはり、竜神の森には鉄鉱石の層があるようだ。それも、かなり埋蔵量がありそうだ。何故、有効活用しないのだろう。
俺は、一旦竜神族の村に戻った。この時間なら、父さんは仕事中だろう。俺は、父さんの仕事場に向かう。
「父さん、いるー?」
仕事場に着くと、中に向かって声をかけた。
「おー、アレクじゃないか。どうした?」
「ちょっと聞きたいことがあってさ。このあたり、沢山鉄鉱石が埋まっているようなんだけど、今は採掘とかしていないのかな?」
「ん? 鍛冶に興味でも出てきたのか?」
「いや、ごめん。リオの町の産業について考えているんだよ。」
「なんだそうか。。昔は確かに人間がここに鉄を取りに来ていたぞ。でも、最近は危険すぎて他から買取しているんじゃなかったかな。なんでも、鉱山にモンスターが住み着いているとか?」
残念そうに父さんは答えた。あれ、父さん俺に鍛冶屋を継いでほしいのかな?
「何故退治とかしないの?」
「え、なんで退治する必要が?」
「鉄鉱石が取れれば産業になるのに。。」
「この村に金は必要ないんだよ。」
そうだった。この村は自給自足で多くの金は必要ない。お金が沢山あると、どうしてもトラブルが多くなるものだ。お金が必要のない生活の方が、幸せなのかもしれない。
しかし、リオの町には新しい産業が必要だ。今のリオは、自らお金を生み出さないのでみんな貧乏になってしまう。リオの町に自給自足できるほど畑を作るのも難しそうだし。。
俺は、父さんに気持ちをぶつけてみる。
「父さん、今のリオはセレネティア王国からの援助を断たれて自立しないといけない。俺はこの森の鉄鉱石を使って産業を興そうと思うのだけど、許してもらえるかな?」
「リオの町に必要ならば別に父さんは反対しないぞ。アレクの好きなようにすればいいよ。」
「ありがとう、父さん。できれば、村の会議で近いうちに鉄鉱石の採掘を再開するって報告しておいてほしい。」
「わかった。でも、リオはもう竜神の森の領土なんだろう? なら、もうリオの町の人間だって俺たちの仲間だ。だれも反対しないと思うけどな。」
俺は、父さんに礼を言ってその場を離れた。
屋敷に戻ると、お昼ご飯をマドリアがシルフィーと一緒に作っていた。マドリアが作って、シルフィーが後ろで指導している。料理の修行頑張ってほしい。どうやら、メイドたちの引っ越し作業は終わったようだな。俺は、書斎に入っていった。
書斎に入ると、俺はひとりで粘土を出現させ魔力操作で変形させていく。この町で産業を興すとしたら鉄の製品が良いだろう。俺は、前から改善させたかった馬車に板バネを取り付ける事を考えていた。あの馬車の酷い揺れをなんとかしたいのだ・・・。しかし、自分の得意分野は情報工学で、自動車工学は全くの素人だ。大学で、物理は専攻していたがサスペンションの仕組みなんか知らない。俺は、黙々と馬車の模型を作り始めた。ボディーや、車輪の模型は粘土を焼いて陶器で作れるが、板バネは鉄で作らないといけない。結局は鉄を取りに行かないといけない。明日は、坑道へモンスター退治に行こう。
お昼ご飯は食堂で三人で食べた。メイドたちも誘ったのだが断られた。主人たちと一緒は基本的に駄目だそうだ。マドリアの作った昼ご飯は流石にシルフィーの指導もあって美味しかった。引き続き頑張ってほしい。
「シルフィー、明日は竜神の森の坑道へ行くよ。ニーナは悪いけれどメイドたちの護衛を頼む。」
「えーー、ニーナも行きたい。私はご主人様の護衛のはずなのに。今日も別々でした。。」
ニーナが拗ねたように言った。
「すまない、メイド達だけ残していくのは心配なんだよ。。近いうちにメイド達用に護衛を雇わないと駄目だな。。」
「そうですね、護衛が必要だと私も思います。ニーナ、ごめんなさい。明日は我慢してください。」
シルフィーも同意してくれた。
お昼を済ますと、俺はまた一人で冒険者ギルドを訪れていた。一応、新町長になったので、ギルドに挨拶に来たのだ。受付には、いつもお世話になっているお姉さんが座っていた。
「あ、町長様いらっしゃいませ。」
「そんなにニコニコしながら言わないでください。からかってますよね?」
「いいえ。10歳で町長になってしまうなんて、尊敬しますよ。」
「ありがとうございます。えーと、ギルマスいます?」
「はい、二階にご案内しますね。」
俺は、二階に案内された。いつものギルドマスターの部屋にはアンさんが仕事をしている。
「こんにちは、就任のあいさつに来ました。よろしくお願いします。」
俺は、頭を下げた。
「ああ、これは町長様。こちらこそよろしくね。ふふ。」
また笑われたよ。
俺は丁度いいので、護衛を雇うにはどうしたらいいのか聞いてみた。
「ん?護衛を雇いたいのですか?数日なら依頼としてここでも雇えますけど、長期の雇用でしたら商業ギルドへ行ったほうがいいですよ。」
商業ギルドか。まだ行ったことないな。
「分かりました。商業ギルドに行ってみますね。ありがとうございました。」
俺は、礼を言って冒険者ギルドを後にした。
俺は、その足で商業ギルドに向かった。場所は以前から知っているのだが、用がなかったので入ったことがない。この町で商売をするならギルドに登録しないといけない。
俺は、商業ギルドに入っていって受付に声をかけた。
「すみません、今度町長になったアレクシスと申しますが、ギルドマスターさんいますか?」
「え?町長さん? あ、はい少々お待ちください。」
今絶対、こんな子供が町長!?って思ったね。。
すると、ギルドマスターに確認した受付が奥に案内してくれた。
「初めまして、ギルドマスターのエマと申します。新しい町長さんですね、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。一応挨拶に参りました。」
エマって、日本人みたいな名前だな。偶然かな。
少し雑談した後に、冒険者ギルドでも聞いた質問をする。
「長期で雇用したい護衛ですか? それでしたら奴隷を買うのがお勧めですよ。」
「ど、奴隷ですか。。」
「ええ、奴隷ですと絶対に主人を裏切ることができませんからね。逆に信頼できるのですよ。」
「なるほど。確かにそうですね。」
ふむ、奴隷の護衛か。主人の命令には絶対に忠実らしいからピッタリなのかも。
「それで、奴隷はどこで買うことができるのでしょう?」
「奴隷商人ですね。紹介状を書きましょう。場所の地図も付けておきますね。」
「ありがとうございます。」
俺は、礼を言ってギルドを後にした。
もう、夕方になるので今日は帰ろう。。
明日は坑道へモンスター狩り。そして、時間があれば奴隷商人の所へ行くか。
俺は、飛んで屋敷へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、目が覚めると寝室の外が騒がしい。どうしたのかと思い外に出ると、モネーラが羽交い締めに拘束されていた、植物に・・・。
「あ、アレク様。このメイドが夜中にアレク様の寝室に潜り込もうとしておりました。殺してもいいですか?」
シルフィーが怒っている。。
「ご主人さまー助けてくださいー。前のご主人様は私を夜に呼んで可愛がってくれたのですにゃー。」
おいおい、前の町長こんな子供に何してるんだよ・・・。
「いやー、シルフィー様怖いですにゃー・・・。」
仕方がないな・・・、あまり怒りたくはないんだが、すこし甘えすぎている。
「モネーラ、あまり怒りたくはないんだがな。俺は夜に呼ぶこともないし、君にも全く興味はない。二度とこのようなことはしないように。俺が心に決めている女性は、ここにいるシルフィーだけだから。」
そう言うと、少し威圧をかける。瞬間空気が凍りついた。。
「にゃ?」
「う。」
「う・・」
メイド三人が苦しそうに顔を歪める。
すぐに、拘束されているモネーラ以外が跪いた。二人とも俯いて震えている。
「エルエット、これはお前の教育の責任でもあるからな。十分に注意するように。。今日一日、モネーラは働くことを禁ずる。部屋にこもって反省してろ。以上だ。持ち場に戻れ。」
俺は威圧を解く。
シルフィーも拘束を解くとモネーラを解放する。
俺は、横目でシルフィーが真っ赤になってプルプル悶えていたのを見なかったことにした。
久しぶりに恥ずかしいことを言ってしまった。。




