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5 アレクお手伝いをする、そして学校へ

 初めて魔法を発動させた、あのフェアリーのシルキー様が来た時からもう3年が経った。俺は、4歳になっていた。1歳のころから魔法を使っていた俺は、もう日常的に魔法を使っていた。


 もちろん、戦闘とかに使うためではない。日常生活で使うのだ。朝には、桶に水魔法で水を溜め、火魔法でほんの小さな火の玉を作成したら、ゆっくりと水の中に沈める。これで丁度いい湯加減になる。このお湯で顔を洗ったりする。昼は庭で水魔法で木々に水をやり、夕飯時にはかまどに火をつけるのも俺の担当。夜には、お風呂に水を張り同じように火の玉を沈めてよい湯加減を作る。お風呂は少し熱めにすると喜ばれる。


 あと、収穫後のみのお手伝いだが、畑に出向いて土魔法で耕したりしている。これは、村人にも非常に感謝されて自分も少し照れ恥ずかしい。あくまで、自分の魔法の練習のために始めたことなんだけどな。本当は、肥料とかも混ぜたりしたらいいのではないかと思うんだけど、この世界では当然化学肥料とかないし、鶏糞とか肥料自体の認識が無いようだ。下手なことをして、怒られても嫌なのでただ畑を耕した。一日にひとつの畑のみでやっている。思ったよりこの耕す作業は魔力を消費するのだ。


 魔力についてだけど、毎日魔力を限界まで消費していて気づいたことがある。だんだんと、自分の魔力の最大値が増えているようなのだ。これは、小説でも読んだことがあるけれど、限界まで魔力を消費すると、次からは魔力の総量が増えるらしい。3年間も毎日魔法の練習をしてきた俺は、すでに大人の魔力総量をはるかに超えてしまっている。もちろん、普通の人と比べたらだけど。毎日魔法を使う職業のひととかにはまだまだ叶わない。


 そんなある日のことだった。父さんから部屋に来るように呼ばれたのである。あ、父さんの名前はアルフレッドという。誰に説明しているのだろう、なんかそんな説明がいる気がした。何の話だろうと思って行ってみるとそこには母さんも一緒にいた。あれ、なんだこれ。何か怒られるようなことをしたかな? 最近は真面目におとなしく過ごしていたはずだけど。歩けるようになった頃は、よく魔法を使って部屋を水浸しにしてしまったりしてよく叱られたものだった。


「アレク、実はお前には隣町の学校に行ってもらおうと考えている。5歳から入学できる、魔法学校だ。基礎からじっくり教わることができるぞ。といっても、無詠唱で魔法が使えるお前は、もう基礎なんか必要ないかもしれないが。」


 なんと、俺が魔法学校に行けるのか?本当だろうか?でも、俺はこう言った。


「父さん、それは嬉しいことだけれど、姉さんも働いているのに、自分だけ学校に行くなんてできないですよ。自分もなにか魔法でお役に立てる仕事があると思います。」


 そう、姉さんはもう10歳になる。もう働いているのだ。自分だけ働かないという選択肢はないと思う。たしか、魔法学校は全寮制で9年間もじっくりと学ぶ場所である。例えるならば、前世の小中一貫校のようなところだ。


「アレク、お前の気持ちもうれしい。だがな、村人たちからも感謝されていてな。アレクが希望するなら、是非魔法の才能を伸ばしてほしいと、学校に行くためのお金までカンパしてくれたのだ。いつも、農作業を手伝ってもらっているからって、ほんとうなら自分たちがお金を払って耕してもらわないといけないのにってね。父さんも断り切れなくてな、お前がもし学校で魔法を学びたいなら、しっかり勉強してきてほしい。」


 母さんも同じ気持ちらしい。

「アレク、母さんはお前の魔法の才能は普通じゃないと思うの。本来ならこんな村にいてはいけないほど魔法の才能に恵まれている気がするのよ。昔、フェアリーにも会ったでしょ?あんな事は普通の竜神族ではありえないことなの。将来、この村で働くにしても、一度はきちんと魔法の勉強をしてきてほしいのよ。それから、自分でどうしたいのか、村に帰るのか、またはなにか魔法の重要な仕事に就くのか決めてほしい。」


 たしかに、昔は冒険者として世界を自由に回りたいとも思った。でも、この村は居心地が良すぎるのだ。みんないいひとばかりだから。ひとではないか、いい竜神ばかりだからな。村は小さいし、竜神族の人口も少ないけれど、それは長寿の種族だから子供が少ないのもあって仕方ないことだし。竜神の誇りだってある。いままで、ひっそりと竜神の森で暮らしてきたけれど、こんな生活もスローライフで大好きなのである。


 うーん、困ったな。たしかに、魔法の勉強はしたいけれど。両親とも離れたくないな。


 そこに、システィナ姉さんが口をはさんできた。


「悩んでいるんじゃないわよ、とっとと魔法の大臣にでもなって、家に沢山お金を仕送りしなさいよ。こんな村でちんたら仕事しててもろくな給料でないわよ。アレクは魔法の才能あるんだからさー。」


 うわぁ・・・、俺っていらない子みたいじゃねーか。。とりあえず、俺は魔法学校への入学を決めたのだった。でも、なんか寂しい。できれば、卒業しても村に居場所を残しておいてほしい。。


 そして、時は過ぎ5歳になった。隣町の魔法学校へ行く日がやってきた。隣町と言っても、竜神の森はとてつもなく広大で、今いる竜神の村からは馬車で三日はかかる距離であり、実は国も違う。確かに隣接はしているのだけれど、竜神の森と隣の国の境界にある町にその魔法学校はあった。人間の国である、国名はセレネティアと言う。


 俺は、両親と姉に最後のお別れを言った。

「父さん、母さん、姉さん、俺を学校へ行かせてくれて本当にありがとう。俺、一生懸命勉強するから。絶対、絶対、魔法で一番の成績取れるくらいがんばるからね。寂しいけどがんばる。長期の休みには帰ってくるからね。」


 そういった俺の頬には涙が流れていた。


 家族もみんな泣いていた。もらい泣きかな。なんか、返事してよ。なんでそんなにガチ泣きなの。


 ほんと、離れたくないなぁ。



 馬車が、ゆっくりと発車した。村に唯一商売をしに来る商人さんにお金を払って乗せてもらっている。父さんは護衛兼、親としてついてきてくれる。そりゃ、三日も森の中を進むのだ。魔物もいるし、盗賊も出るかもしれない。


 村をゆっくり進むと、村人たちが総出で手を振ってくれていた。


 もうやめてほしい。涙が止まらないよ。




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