44 不思議な植物。
ディジー村を出発した俺たちは、また精霊の森の中をリオに向かって歩いている。
もう後は帰るだけなので、飛翔魔法で飛んで帰ろうかとも思ったけれど、一人だけならともかく、今は三人である。一度に二人を両手に抱えて飛ぶのは、流石に危ないかもしれない。それに、シルフィーはあまり空を飛ぶのが好きではないようだ。高い所が苦手なのかもしれない。リオまでは徒歩であと8日はかかる。
シルフィーは、歩きながら魔法の練習をしている。彼女の属性は土属性なので、今は手のひらの上に小さな小石を出現させる魔法の練習である。周りに土がたくさんあるので、比較的簡単なのだがなかなか上手くいっていないようだ。石にならずに砂のまま出てきたりしている。
「できるだけ、正確なイメージをしてみて。石の形、色、大きさ、重さ。すべて頭でイメージをしてここに出ろって念じるの。」
「はい。」
ちなみに、シルフィーの隣では小石をぷかぷかと浮かして遊んでいるニーナがいる。ニーナは魔法の適性が高そうだ。あっという間にできてしまった。流石神獣様である。
もちろん、二人とも無詠唱で練習してもらっている。そのほうが実践的だからだ。
「ん・・・・、石よでろっ!!」
シルフィーが一生懸命イメージをして魔法を発動させた。しかし、手のひらの上には何も出てこなかった。俺はもう一つアドバイスをする。
「シルフィー、君は森の加護を受けているのだから、魔力を集める時に、森の魔力を少し分けてもらうイメージをしてみたらどうかな?」
「は、はい。やってみますね・・・。森の魔力を分けてもらうイメージで・・・。森さん、私に力を貸してください。森の力を含んだ小さな石、出てきてください!」
すると、シルフィーの体内の魔力が少し減ったと思ったら、手のひらの上に小さな土の塊が出てきた。イメージをするところがすべて口から出てしまっているが、これで成功するのは加護のおかげかな。
「あ、やりました。石じゃないけど、今までで一番大きな土の塊ができました。」
「おおー、やったじゃないか!」
俺はシルフィーの頭を撫でて褒めてあげた。
「え、アレク様。ちょっと恥ずかしいです。。でもありがとうございます。」
シルフィーは恥ずかしがりながらも、嬉しそうだ。
すると、その土の塊に小さな双葉がぴょこっと生えた。
「え?」
「え?」
「おねーちゃん、なんか生えたよ。」
なんか生えてきた。とりあえず植物だよな。でも、いきなり土から出てきたぞ。。なんだこれは。それに、この植物から何かオーラのような物を感じる。
「そういえば、さっき魔法を発動させる時、森の力を含んだ石とか言ってたよね。この植物が森の力を含んでいるのかもしれないなぁ。。」
「ええー!? 私、まずい事をしてしまいましたか?」
ふと見ると、その謎の植物は四つ葉になっていた。
「え、成長した?」
「シルフィー、これはこのまま捨てていくのは何か嫌な予感がする・・。とりあえず持って帰ろう。目の届くところに置いておきたい。」
「は、はい。。」
その日の晩、ログハウスを出してもらい、不思議な植物をリビングに置いた。土魔法で植木鉢を作ってあげて、そこに森の土と一緒に植えたのだ。まだ水もあげていないのに、すでに五センチくらいに成長している。異常な成長速度だ。そういえばシルキー様が、森の加護を受けた者が食物を育てると成長が早くなると言っていたな。この木は将来、食べられる実でもつけるのだろうか?
晩御飯を食べた後、俺は外に出て一本の木を引っこ抜いた。それを根っこと枝葉をすべて切り落とし、50センチほどのブロックに切っていった。かまどに使う薪だ。そして、70センチくらいの木を祭壇用に家の中に持って帰った。
リビングで俺は風魔法を上手く使って木を削っていく。祭壇は、教会に捕らわれていた時に見ている。それを参考にさせてもらった。そして高さ60センチくらいの立方体の祭壇ができた。
扉の部分は、金属の金具などなかったので、扉の部分に穴をあけ、そこに木の棒を突っ込んで回転するようにした。ただし、閉じた状態で固定ができなかったので、開きっぱなしで使う。アイテムボックスにしまう時だけ閉じればいいだろう。
その祭壇に、先日作った女神様の像を中心に置いた。うーん、祭壇を作ったおかげで、ますます神々しくなってきた。。今にも動きそうである。俺たちは、女神様の像に向かって感謝のお祈りをした。
【凄いですね、このお人形。私の意識を受け止める事ができるなんて。】
「ん?」
「え?」
「う・・。」
ん?何処かから声が聞こえた。直接頭に話しかけてくる。こ、この声はまさか、女神様では?
「め、女神様ですか?」
【熱心に祈ってくれているので、少しだけこの人形さんに意識を飛ばしてみたのです。】
うげ、俺の作った像に女神様が本当に顕現されたらしい。。俺はすぐに頭を下げて謝った。
「も、申し訳ございません。素人の私が女神様の像など、作るべきではなかったです。。」
女神様の像から出ているオーラが普通ではない事を感じたのか、ニーナは跪いたまま固まっている。流石に神獣、女神様の凄さを肌で感じているのだろう。シルフィーも俯いて緊張しているようだ。
【いえ、普通は私が意識を飛ばすと、脆く崩れ落ちてしまうのです。この依り代は、器としては小さいですが意識だけでしたらなんとか収まるようですね。これはすごい事ですよ。ご神木で彫られた神器に近いレベルの器です。自信を持ちなさい。まぁ、私が授けた器用スキルの力が大きそうですが。ふふふ。】
「褒めていただき、ありがとうございます。これからも、毎日祈りを捧げようと思います。」
【それと、森の加護を受けた子よ。】
「え? は、はいっ。」
【あなたの竜の子に対する愛情、聞きましたよ。これからも、竜の子を支えてあげてくださいね。】
「は・・・はいぃ。。」
シルフィーは、顔を真っ赤にしてもっと頭を下げた。
【あと、今日持ち帰った幼木ですが、人間のところで育てるのは危険です。竜神族の村で健やかに育ててください。頼みましたよ。あなたがあの木を発芽させるなんてね・・、驚きました。】
「? わ、わかりました。必ずその様に致します。」
シルフィーは、よく理解できていないようだ。幼木とは、あの不思議な葉っぱの事だろう。やはり、普通の植物ではないようだ。
【あと、白狐を助けてくれたこと感謝します、ありがとう。あ、あまり長くここにいると像が壊れてしまいそうです。。それでは戻りますね。道中気を付けて。】
そう言うと、女神様の像は言葉を発せなくなった。
「帰られたのでしょうか?」
「いきなり話しかけられると焦ってしまう。」
「はい・・・。」
すると、ニーナが俺に抱きついてきた。
「ご主人しゃま、こわかったーーー。。」
「こら、女神様に感謝をしないと駄目だぞ。女神様がニーナを奴隷から救い出すように俺たちにお願いをしたから、ニーナは助かったんだよ。」
「めがみ様がニーナを? わかった、ニーナかんしゃするー!」
「うんうん。今日は大変なことがあったからもう寝よう。」
「はい。」
「うん!」
俺たちは、それぞれの部屋で眠りについた。
翌朝、俺は目覚めてリビングに行くと驚いた。。あの不思議な葉っぱはもう1メートルを超えていた。もう立派な木になっている。どう考えても成長が早すぎるだろう。。このままだと、ログハウスの中に入らなくなってしまう。。これはもう早急に竜神族の村で植え替えないといけない。
「シルフィ、これほど早くこの木が成長するとは思わなかったよ。。これは女神様が仰っていたように、早く竜神族の村に行かないといけない。」
「はい、私もそう思います。では、やはり空を飛びますか?」
「うん、でも多分生き物はアイテムボックスに収納できないので、植木も一緒に運べるような何かを考えるよ。。」
俺たちは朝食を済ませた後、ログハウスから出た。シルフィーに植木ごとログハウスを収納できるか試してもらったが、やはり無理だった。やはり、生きている物は収納はできないようだ。
俺は、気球のゴンドラのような箱を作ってみんなを空輸しようと思った。しかし、ここには釘がないので、途中でゴンドラが分解して皆が落ちたら困る。結局、俺がひとりずつ村へ飛んで運ぶ事にした。
俺は、ニーナ、シルフィー、植木鉢の順で運ぶ事にした。まず、ニーナと俺を命綱で結ぶ。これは以前シルフィーと空を飛んだ時にも使った奴だ。そして、シルフィーには申し訳ないがログハウスで待っててもらった。もちろん、結界は張ってある。
「シルフィー、すまない。すぐに戻ってくるから。家の中にいれば安全だから、絶対外に出ないで。」
「はい、大丈夫です。気を付けてくださいね。」
俺は、ニーナを抱っこするとそのまま全速で飛んだ。風の抵抗はないので、いくらスピードを出しても危険はない。景色が流れるように後ろに飛んでいく。ニーナは、腕の中で喜んでいる。強い子だ。
俺は、10分もかからずにリオの町を飛び越え、竜神族の村に到着した。自宅に着くと、母さんがいた。
「母さん、説明はあとでするから、とりあえずこの子を預かってて。20分で戻る。」
「え?え?」
俺は母さんにニーナを託して、そのままウルトラマンのように飛び上がる。俺は全速力で戻る。シルフィーが心配だ。いくら結界を張ってあっても、心配なものは心配なのだ。仕方がない。
俺は、森の上空で電波レーダーでシルフィーを探す。ログハウスの近くに魔物の反応はない。ログハウスの前に着地すると、俺は大きな声でシルフィーを呼んだ。早く安心させたい。するとシルフィーがドアを開けてくれた。
「よかった、大丈夫かい?」
「はい。アレク様の結界なら、安心して待っていることができました。」
今度はシルフィーと俺を命綱で結ぶ。そして、植木鉢に結界を張ってからシルフィーを抱き上げた。
「きゃっ」
「ごめんね、シルフィーはあまり飛ぶのが好きではないよね。怖かったら、目を閉じてていいからね。」
「い、いえ。怖くはありません。むしろ、アレク様を近くに感じられて嬉しいのですが、すごく恥ずかしいのです。」
「そっか、俺もうれしいよ。シルフィーから暖かい体温を感じるよ。」
「うぅ、止めてください。恥ずかしくて死にそうです。。」
「じゃ、行くよー。」
俺は、もう急ぐことはないのでゆっくりと空を飛んだ。30分くらいかけてのんびりと空の散歩を楽しむと、自分の家に到着した。また母さんにシルフィーを預けてとんぼ返りする。詳しいことはシルフィーから伝えてもらおう。俺は、また植木鉢を取りに森へ戻っていった。。




