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40 森の精霊2

 

「シルフィー! シルフィー!」



 何度も呼びかけるが、返事はない。なんてことだ。。目の前でシルフィーが倒れているのに、俺自身は、全く動くことができない。近寄って抱きかかえることもできない。俺は、結界魔法用に集めていた魔力をすべて回復魔法でシルフィーに注ぐ。しかし、起き上がる気配はない。


 俺の試練なのに、俺を庇って、シルフィーが死んでしまった。何でこんなことになってしまったんだ。俺が死ねばよかったのに・・・・。シルフィーがいなくなってしまったら、これから何を楽しみに生きて行けばいいのだ。俺の心の中には、思っていた以上にシルフィーの存在が大きかったらしい。その存在が心の中からごっそり抜け落ちた気分だ。心が重い。心が闇に包まれていく。



 もう嫌だ。何もかも、どうでもよくなった。。



 何で、こんな辛い目に遭わなければいけないんだ。そうだ、全部あいつが悪い。試練とか言い出したあいつが悪い。あいつは一体何なんだ。いきなり現れて試練を受けろとか。あいつを殺して、もう俺も死んでやる。でも、もういいや。どうせ動けないんだから、次の魔法で死のう。俺も、シルフィーの元へ・・・。



「すー、すー。」


 でも、最後の女神様の神託。ニーナを無事に、リオの町まで連れて行かないといけなかったのに。。死んだら、また女神様に叱られるんだろうか・・。それとも、もう転生はできないかもしれない。


「すー、すー、アレク様ぁ。」

「・・・・・・。」


「すー、すー。」

「って、寝てるだけじゃねーか!!」


【あら、やっと気づきましたか?】


 よくよくシルフィーを観察すると、寝息をたてている。。シルフィーは笑顔のままぐっすりと眠っているようだ。背中は見えないが、命に別状はないのだろうか?


「どうなってるの?」


 俺は、頭が混乱していた。


【彼女は、見た通り死んではいません。眠っているだけで、命にも別状ありません。私がとどめに放った魔法は、実は睡眠誘導の魔法です。まずは、落ち着いてください。落ち着いたら、詳しいことを説明してあげますので。】


 謎の女は、そんな事を言いだした。ちょっと待て、俺の、今までの悲しみはどうしてくれるの?



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



【さて、そろそろ説明しましょうか。よろしいですか?】

「は、はい。」

【私は、森の精霊シルキーと申します。以前、あなたが助けたのは、私の分身です。】

「はい?」


 いきなり理解不能に。


【まだ混乱しているのですか?シルキーは私です。まぁ、この本体でお会いするのは初めてですが。通常、私は森の中から出られません。なので、外の事を知るには分身体を作って飛ばします。その分身体が、あなたを見つけて報告してくれたのです。まぁ、途中で分身体が意識不明になったり、人間に拉致されたり大変でしたけども。。】


「そ、そうですね・・。」


【ちなみに、分身体はいくつも飛ばしているので、何十体もいます。それで、分身体は私、本体の事を族長と呼びます。まぁ、精霊と言いふらす訳にもいかないので、ペンネームみたいなものです。ちなみに、テレパシーですので、受け取る側によって呼び名が違って受け取る場合もあります。】


「な、なるほどぉ。」


 あ、それで俺は日本語なのか。違う人は、フォレスト・エレメンタルとか聞こえているのかなぁ。まぁ、どっちでもいいか。


【それで、アレクさんと交流があった私に女神様がですね、神託を授けたわけです。】

「はい?」


【あの、真面目に聞いてますか?】

「すみません。いきなり女神様がでてきて、驚いてしまいました。」


 俺は、頭を下げる。女神様が神託を?そういえば、妖精や精霊は女神の使者だったな。。


【神託の内容はですね、『竜の子が近々そちらを通る。そのPTの人間の女にお前の加護を授けてやってくれ。』だそうです。】

「それと、今回の試練がどう関係しているのでしょうか・・・?」


【それは、通常、精霊が加護を授ける時は、試練を与えるものですよ。】

「いや、それはわかりますけども。何故、シルフィーの試練なのに、俺の試練になったのでしょう?」


【いえ、あなたの試練だと芝居をして、私はシルフィーさんの試練を行ったのですよ。簡単に言うと、アレクさんを動けなくしてシルフィーさんがアレクさんを本当に命を懸けて庇うのか確かめたのです。まぁ、厳密にはあなたの成長も見たかったので、あなたも試しましたがね。。】

「それで、シルフィーは合格なのでしょうか・・?」


【自分が犠牲になっても、主を守りたいと言う忠義、そして格上の相手に一歩も引かないその勇気。すばらしい女性です。まぁ、彼女の場合は忠義と言うより愛情でしょうかね。当然合格です。】

「おお、ありがとうございます。シルフィーも喜びます。」

 俺は、頭を深く下げた。


【大まかな事情は理解していただけたでしょうか?】

「はい、詳しい説明をありがとうございました。」


【しかし、本当に加減が難しかったです。ミスをして殺してしまったら、逆に私が女神様の神託を受けた使者から、命を狙われることになっていたかもしれません。それだけ、シビアな試練でした…。上手くいってよかったです。殺してはいけない条件のある試練なんて、初めてですよ。】

「そこまで試練の内容を女神様から受けていたのですか?」


【そうですよ。。あなた達は女神様のお気に入りみたいですからね。どうやら、女神様はシルフィーさんがどこまで本気で、アレクさんの盾になると言っているのか知りたかったのでしょうね。女神様にも意見をしたらしいじゃないですか・・・。本当に恐ろしい人間です。。】

「そこまで頻繁に会話しているのですか?」


【そりゃ、そうですよ。女神と精霊は似たような存在ですからね。。友達みたいなものです。】

「そうですよね、前世でも精霊とか妖精は、神の使者だと言われておりましたから。」


【んー、こちらの世界では、精霊が神に昇格することもありますから、使者とは言えないですが。まぁ、似たようなものですよ。】

「では、シルフィーにはどのような加護が与えられるのでしょう?」


【それは、彼女が起きてから本人も参加してもらって話し合いましょうか。】

「ああ、それは良いですね。シルフィーも喜ぶと思います。いろいろありがとうございます。」


 俺は、もう一度深く頭を下げた。

 はぁ、とにかく、シルフィーが無事でよかった。


【それで、いつまでその女性達を、そんな土の上に寝かせるのです?】

「しかし、この神通力を解いていただかないと。」


【・・・・。そんな事だからあなたは試練を突破できなかったのですよ。いいですか?私は神ではないのですよ?その私が神通力使えると思うのですか?】

「え・・・。」


【私があなたに使用したのは、闇魔法、影縫いです。魔法であれば、あなたでも解呪できたはずですよね?私は、あなたが古代魔法の解呪の魔法を、女神様から授かったと聞いてたのですが。一度も解呪を試みないとは思いませんでしたよ。。】

「あ。。」


 そうだった。俺は以前、女神様から解呪の魔法を授かった。それを使っていれば、シルフィーを救えていたのか。。なんて事だ、俺は神通力が神の技だと言われ、もう頭から諦めていたのではなかったか?その結果、シルフィーを殺される事になったのだ。俺は、自分が情けなくなった。正直、解呪の魔法を使うことすら頭に浮かばなかった。俺は思い知らされた。シルフィーの心の強さには、全くかなわないと。


 おれは、魔力を確保して解呪の魔法を使った。俺は自由になった。



【ちなみに、解呪の魔法を使って自由になっていたら、あなたの試練は合格でした。その後、本物の神通力であなたを拘束しましたけどね。じゃないとシルフィーの試練ができませんから。】

「って、神通力使えるのですか?」


【使えないとは言ってませんよ。別に神だけの力ではないのです。人間にだって、仙人と呼ばれるものは使うと聞いたことがありますし。ただ、マスターするまでには、何十年と修行が必要ですが。】

そう言ってシルキー様は、にっこりと笑った。



俺は、シルフィーと、ニーナを原っぱへ寝かせた。ニーナは真っ先に寝かされたらしい。











女神様の話し方が、プロローグと違いすぎていたので、作中のセリフ全て修正しました。もっと女神様らしく、優しい感じにしました。すみません。

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