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39 森の精霊

 ログハウスでの初めての朝、俺は快適とはとても言えない目覚めだった。まず感じたのが背中の痛みだった。毛布に包まって寝ていたのだけど、やはり木のベットは固かった。他の者も例外はなく、みんな寝不足気味だった。


 俺たちは、朝ごはんを済ますとすぐに出発した。もちろんログハウスは収納してもらった。目指すは依頼を出したディジー村という所である。依頼内容は、最近周辺で出没するようになったオークの討伐である。俺は電波レーダーで周辺の状況を確認する。不思議な事に魔物の反応は無い。実は、昨日からずっと反応が無いのだ。敵がいないのは、悪いことではないのだが、全くいないのも不自然すぎて不気味である。


 しばらく歩いていると電波レーダーに突然、凄まじい魔力の集まりを捉えた。

「な!? みんな止まって!!」

 俺は、みんなを慌てて止めた。前方に何かいる。。今までに経験したことのない反応だ。魔物ではないのか?


「前方に、凄まじい魔力の塊みたいなのがある。魔物とも女神様とも違う不思議な存在なんだけど。なんだろう。。」

「魔力の塊ですか?」

「まりょくのかたまり?」


 俺は、すぐに二人に結界を張ろうと思い、周辺にある魔力を集めた。すると、その魔力の変化を察知したのか、その何かは突然目の前に現れた。

「え?」

「うっ・・」

「う・・。」


 その何かは、人のように見える。しかし、肌の色は全体的に緑で、緑のオーラをまとっている。。そして、何故か体が透けている様に見える。


「何故だ、体が動かない!?」

 俺は、目の前の異常な存在を前にして、二人を守ろうと前に立とうとしたが、体が言うことを効かない。女神様の時間を凍結した時に似ているが、声は出るようだ。すると、後ろでドサッと大きな音がした。目線を後ろに向けると、かすかに見える所にニーナの右手が見えた。倒れているのか!?


「ニーナ!!」

 俺は叫んだが、返事がない。あまりのオーラに意識を刈り取られてしまったのか!?


「シルフィー!?」

 シルフィーの名前を叫ぶと、後ろで物音がする。


「大丈夫です、意識がないだけで傷などはありません。」

 あれ、シルフィーは動けるのか?


「シルフィー、動けるのか?」

「はい? 動けますが? ニーナは大丈夫です。私が抱いています。」


 え、何がどうなっているのか?シルフィーは動けるようだ。それなら言う事は一つしかない。


「シルフィー、ニーナを連れて逃げてくれ。」

「な!?何を言っているのですか?」


「駄目だ、すぐに逃げるんだ。俺はいま体の自由が効かない。目の前のあれは、女神様に近い存在だと思う。俺ではとてもかなわない。逃げるんだ!!」


【人間の女、聞くのです。】

 な!?テレパシーだと?

「え?何これ。頭に直接声が聞こえます・・・」


【そなたは、ただの人間です。竜の子に付き従う必要はありません。その幼き神獣を連れて去りなさい。我は試練を与えるもの。そなたは去りなさい。】


 よ、良かった。どうやらこの謎の者は、俺に用があるらしい。シルフィーは見逃してくれるだろう。


「嫌です。私はここを離れません。試練であれば、私も受けます。」

「な!?何を言っているんだ。シルフィー!」


「当たり前のことを言ってますよ。私は、アレク様と共に歩くと決めたのです。そして、敵が女神様であろうと私はアレク様を守る盾になろうと誓ったのです。」


【わかりました。我は忠告はしましたよ。死んでしまうかもしれませんよ?】


「私は、アレク様を信じていますから。」

「くっ、くそ。。何で動けないんだよ。。二人を守るにも動けないと何もできないじゃないか。」


【では、試練を与えます。竜の子よ、あなたを縛っている力は、神通力と言う神の力です。その縛りを自ら破ってその二人を見事に守って見せよ。】


 な・・・、この動きを止めているモノに対抗しろと言うのか。神の力だと?そんなの勝てるわけがないじゃないか…。転生する時に聞いた。竜神族より強いのが神なのだ。基本的にスペックが違いすぎる。。。


 すると、その謎の女は右手を左から右へ軽く動かした。それだけで膨大な魔力が向こうから飛んでくるのが感じる。なんだあれは、風の魔法か?そして、まだ動けない俺はそのままその膨大な魔力を体に受けた。その瞬間、すべての結界が脆くも崩れ落ち俺の体に突き刺さる。


「ぐっ、ぁ」


 いままでに、受けたことのない痛みが体を走る。ぐっ・・、な、なんて膨大な力なんだ。今まで重ね掛けしていた結界が全て崩れ落ちてしまった。まずい、あんなの次にまともに食らえば、無事ですまない。うごけ・・・動け俺の体。くっ、くそう。


 俺は、魔力をとにかく集めた。なにか魔法を・・・そうだ飛翔魔法を・・・。

 俺は集めた魔力を体内で圧縮しすぐにイメージする。今すぐ、全力で飛び上がれ!!


 何故か、俺の体は地面で縛られたままだ。何故だ。動けない。。俺はとにかく、再度結界を張ろうとまた魔力を集めた。


 そして、それはまたやってきた。女はまた右手を左から右へ動かす。また膨大な魔力が俺に向かって飛んでくる。くそ、まだ結界は間に合わない。


 動け、動け、うごけ、うごけ、うごけ、うごけ、うごけうごけーーーーーーーー!!


 すると、後ろから何かが前に走り出た。そして、その膨大な魔力は前に走り出たその者の体にぶち当たる。え!?うそだろ!?


「シルフィーーーーーーーーー!?」


 俺の前に飛び出たシルフィーは、その圧倒的な暴力に体をくの字に曲げ、前にゆっくりと倒れた。

「シ、シルフィー!! おい、シルフィーー」


【なぜ、人間が前に出る。人間、まだ息があるなら下がれ。】

「い、嫌です・・・。」


 シルフィーは、両手、両膝を地面につきながらも言った。何故、シルフィーは前に立ちはだかるのか。


「シルフィー、やめてくれ。お願いだ。俺は動ける気がしない。逃げてくれ。」

「い、嫌です…。」


 シルフィーはゆっくりと立ち上がり、俺の前に立ちはだかる。


【先ほどの我の攻撃で、その人間の結界は砕け散っているはずだ。次にもろに我の攻撃を食らうと死ぬぞ。邪魔をするでない、下がれ。】


 そうだ、シルフィーが今立ち上がれたのは結界のおかげ。俺が何度も重ね掛けしたから、ダメージが少なかったのだろう。。でも、今はシルフィーを守る結界が何もない。。


「駄目だシルフィー、次に同じ攻撃を受けたら死んでしまう。。逃げてくれよ。頼む」


「アレク様、何を甘えたことを言っているのです。これは試練なのです。アレク様だって、同じように結界が砕けたのでしょう?ダメージを負ってしまったのでしょう?さあ、動いて私を助けてください。」


「だ、大丈夫だ、ダメージは大したことはないんだ。。でも、体は動けないんだよ。どんなに力を入れても動けないんだよ。くそっ、どうすればいいんだよー。」


「私が、あなたが痛がっているのを、気づかないとでも思っているのですか? アレク様だって、アレをもう一度受ければ、かなりのダメージになるはずです。もしかしたら死んでしまうかもしれません。でも、私が盾になれば。もう一度、試練を受けるチャンスがあるはずです。」


「嫌だ、それは、シルフィーが死んでしまうって事だろう!! やめろシルフィー。お願いだ。逃げてくれ。にげてくれー!!! にげてくれよーーーー!!!!」


【人間の娘よ、最後の警告だ。死にたくなければ、この場から立ち去れ。】


「嫌です。私は、アレク様の盾。アレク様を守りサポートする者・・。そして、同じ女神を信仰する者であります。」




 彼女はクルリと俺の方へと向いた。俺のすぐ前まで来て、満面の笑顔を俺に見せてくれた。そして、俺を守るように大きく両手を左右に広げて言った。。


「・・・・、アレク様。私は、嬉しいのですよ。こうして、最後にあなたを守れることが嬉しいのです。がんばって、試練を超えてください。アレク様、大好きです。」



 そして、目をつむった。

 直後、彼女は謎の女からの攻撃を背中で受けた。





「シルフィーーーーーーーーーーーーー!!」





 彼女は、笑顔のまま風圧によって俺のところまで飛ばされてきた。


 俺に抱き着くようにして、しがみつくが、徐々に力尽き、ずり落ちていく。


 そして、俺の足元で倒れた。


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