37 領都の冒険者ギルド
領都に来て四日目の朝。俺たちは、領都までの護衛任務の完了報告のため、冒険者ギルドに来た。
冒険者ギルドって、何かとトラブルに巻き込まれる可能性があるのが、小説での常識。リオで初めて入った時は、父さんと一緒だったから絡まれなかったけれど、今回は子供だけのPT。何か嫌な予感がする。実際、リオでも俺達の事を知らない男が、絡んできたこともあった。危うく、殺しかけたけど。。
「えっと、冒険者ギルドって結構トラブルに巻き込まれるので、結界を張っておくね。」
「はい。」
「うん!」
俺は、かなり強めに物理・魔法防御用の結界を張った。実は、もう何重にも結界を張り続けているのだけどね。以前かけた結界がまだ残っているのか、後からでは重なりすぎてよくわからないのだ。重ね掛けしたほうが防御力も増すのでべつに問題はないだろう。ニーナには二回しか掛けていないので、三度ほど掛けておいた。
さて、いよいよ冒険者ギルドへ入っていった。中に入ると一斉に視線が自分たちに集まる。リオでもいつもの事だが、今回は初めての顔のはずだからずっと見られ続けている。俺は無視してそのまま受付へと急ぐ。
「すいません、護衛の任務完了したので報酬を受け取りに来ました。」
そして、商人護衛の依頼完了書類を提出いた。
「あ、はい。確かに正式な書類ですね。手続きをしますので、少々お待ちください。」
どうやら、何事もなく報酬は受け取れそうだ。
すると、奥のほうから声が聞こえてくる。
「おい、護衛任務だってよ。あんな子供たちがか?」
「護衛任務ってCランクからだよな・・。インチキ使ってるんじゃねーか?」
「どう見てもあいつら、ランクFか、Eって感じだけど。」
やはり、俺達が護衛任務ってのは違和感あるよなぁ。。思った通り、嫌な雰囲気になってきた。。すると、ひとりの男がやってきた。
「おい、坊主。どうやってその護衛任務受けたんだ。確か、護衛任務はランクCからのはずだが?」
うわー、絡んできた。嫌な予感的中だよ。
「はい、自分たちはDランクPTなんですがね、領都までの街路は比較的安全と言う事で、特例で許可をもらったのです。書類を確認していただければわかると思いますよ。」
「Dランクだ!?普通は受けられないランクだぞ。やっぱり書類とか偽造したんじゃねーのか?」
すると、慌てたギルド職員さんが、
「待ってください、書類は正規の物ですよ。これは偽造できない特別なものですので。間違いありませんよ。ギルド内でのトラブルは厳禁ですよ。」
よかった、ギルド職員が味方してくれている。
「なんか、怪しいんだよな。。そもそもお前らいくつなんだよ・・?」
「8歳ですよ。」
「私も、8歳になったばかりです。」
「にーな、さんちゃい!!」
ニーナが元気に言った。
「さ・・・三歳。」
「い、いや。この子は違うのです。ただの子供です。冒険者ではありません。自分たちは8歳の二人PTですよ。」
「いや、それにしてもおかしいだろう。討伐は10歳から可能のはず。」
「それは、事情がありまして。要するに飛び級で討伐も認められています。それに、俺個人はもうCランク以上とギルドマスターからも認定いただきましたし。」
「そ、そこまで言うのなら、試してやろうじゃねーか。おい、職員。訓練場で決闘は別に禁止じゃないんだよな?」
「はい、しかし大人げないですよ。。こんな子供に絡むなんてやめましょうよ。」
「うるせぇ、不正を暴いてやろうと言ってやってるのに。どうせ、本当のPTが受けた正規の書類を拾ったとかじゃないのかよ。」
決闘?そんなシステムがあるんだ。それなら別に軽く痛めつければ言うこと聞くんじゃないかな。
「いいですよ、決闘受けて立ちます。」
「ほほう、いい度胸じゃねーか。」
そして、俺たちは訓練場までやってきた。審判はギルド職員がやるらしい。
「いいですか? ルールは相手を殺さないことです。あと、この円のステージから出ないこと。」
「それだけですか?」
「はい。」
「おい、武器はどうした。」
「え、武器なんて持っていないですよ。」
「はぁ!?」
「大体、人間相手に武器なんて使ったら殺してしまいます。」
「な!? お前だって人間だろう・・・・あ!?」
相手は、俺の角に気が付いたらしい。
「お、お前その角。。人間じゃないのか?」
「ええ、竜神族の子供です。」
「え?」
「え?」
あれ、竜神族の子供と聞いて、もう怖気づいてしまったのか?今までの勢いがなくなった。すると、周りでは、こそこそと話声がしだした。
「お、おい。竜神族の子供だってよ。そういえば、最近教会に捕まっていた御使い様も、確か竜神族の子供だったはずだぞ。。」
「え、それじゃぁこの子供が御使い様?」
「い、いやまさか御使い様がこんなところに居られるとは・・・。」
何やら、周りでは御使い様がどーのこーのと噂になっている。。うん、あれだけ国王が宣伝して、病人やケガ人を治しまくったのだ。領都でも御使い様の話は広がっているだろう。。すると男は言った。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。お前、まさか御使い様とか言うんじゃないだろうな・・?」
困った、もう決闘する雰囲気ではなくなってきたぞ・・・?
「いや、今はプライベートなので。御使い様として振舞うつもりはありません。」
「え・・」
「え?」
困った。話が進まないぞ。
「えーと、決闘はしないのですか?自分も、自分の実力を証明できれば、後々やりやすいのですが。大丈夫、手加減しますから。連れに手を出されない限りは怒りませんから。」
「は、はい。それではお手合わせお願いします・・・。」
あれ、随分としおらしくなってるぞ。。
「で、では試合開始です。」
試合になった。決闘は?? 始まったが、二人とも動かない。
「来ないのですか?では、こちらから行きますよ?」
俺は、飛翔魔法を使い、勢いよく敵の懐に潜り込む。そして、軽く本当に軽くボディーに一発。それだけで、相手は膝をついてしまった。
「ぐっ、なっなんだ今のは。。見えなかった。こっ、このっ」
男は、大きな斧を振り上げて、俺に向かって振り下ろす。俺は左手に小さな結界を張り、そのまま斧を受け止める。
「え?」
「その程度の力では、我は傷ひとつ付かないですよ。。それで本気ですか?」
「くっ、くそっ」
男は、斧を水平に振り回す。が、俺は斧の下をくぐり足を刈り取った。男はその場に倒れこむ。俺は、そのまま空に浮き上がり、氷魔法で槍を10本ほど作成する。そして、男に当たらないように、氷の槍を男のそばに振り下ろす。それを見た男は、顔が青くなっている。
「ま、まて。空に飛ぶとか反則だぞ。」
「え、ルールの中には魔法を使ってはいけないと言うのは無かったですけど。。」
「い、いや。空を飛ぶなんて、非常識だろう。」
「はぁ? 竜の俺からしたら、空を飛ぶなんて常識ですよ。だいたい竜は空を飛ぶものでしょうが。。」
「く・・・、そうだけど。。」
「仕方がありませんね。」
俺は、ゆっくりと地面に降りる。
「どうぞ、かかってきてください。」
「い、いえ。私が悪かったです。許してください。」
男は、跪いた。周りの男たちもポカーンと口を開けたままで誰一人言葉を発しない。
審判、何とか言え。。
さて、それではと言う事で、俺たちは依頼ボードの前へと移動した。俺の周りは何故か蜘蛛の子を散らすように人が避けていくが、まぁ気にしない。俺は、リオに戻る護衛任務がないか探した。
しばらく、隅々まで探したが、戻りのリオへの護衛任務は無いようだ。仕方がないので、Dランクで受けられる依頼を確認する。ゴブリン討伐、オーク討伐、薬草の採取、そんな依頼しかない。オークも俺からしたら雑魚だ。もっと金になるような魔物はいないものか。俺たちは、仕方がないので帰りは森の中を通って依頼を出した村へ行き、オークを倒したら完了のサインをもらって、徒歩でリオに帰ると決めた。距離にすると森を通るほうが直線距離なので、近いのだ。徒歩でもおそらく、十日もあればリオに着けるだろう。
俺は、オーク討伐の依頼用紙を受付に持って行った。
「えーと、お騒がせしてすみません。この依頼を受けたいのですが。」
「は、はい。えーと、すみません。その前に護衛任務の報酬がこちらになります。まず受け取ってください。」
あ、忘れていた。。俺は、護衛任務の報酬を受け取る。
「では、こちらの依頼ですね。ギルドカードの提示をお願いいたします。」
俺は、ギルドカードを出した。職員さんはまだ少し硬いが。まぁいい。しばらくすると、無事任務を受けることができた。俺は、軽く礼をしてギルドを後にした。
俺達は、今日はのんびり過ごして、明日領都を出発することにした。




