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35 ニーナ

 俺達は、ニーナを連れて宿まで戻ってきた。


「すいません、今日からひとり増えることになったのですが、宿泊費はどうなりますか?」

「あ、はい。食事の費用のみ追加で必要になります。二日目の夕食からでよろしいでしょうか?」

「はい。」

「それでは、本日の夕食分と、残り5日間の食事代で合計こちらになります。」

 フロントの人はあたらしく用紙を提示してきた。シルフィーに頼んで清算してもらう。


「はい、これで問題ありません。ごゆっくり、おくつろぎください。」

「ありがとう。」

 俺達は軽く礼をする。


 部屋に戻ると、真っ先にシルフィーに、ニーナを風呂に連れて行くようにお願いした。結構汚れていたのだ。

「いやーーー、ニーナ水浴びきらいーーーー!!」

「駄目ですよー、綺麗にしていないと、アレク様に嫌われてしまいますよ。」


 なんか、嫌がっている。その辺りをパタパタと走り回って逃げている。狐は濡れるのが嫌いなのだろうか?でも、それくらいでは嫌いにはならないぞ。数十分待っていると、シルフィーたちが出てきた。


「アレク様、すいません。なんか、色が落ちてしまったみたいなんですけど?」

「あの茶色いの全部汚れだったのかよ!!」


 出てきたニーナは、尻尾も耳も真っ白だった。思わず突っ込んでしまった。いったい、いつから風呂とか入っていなかったのだ・・・。しかし、ニーナ本人はなんかスッキリした顔をしていた。


「おふろ、思ったよりあったかくて、きもちよかったー」


 いままで、水浴びしかしていなかったのかな?



 晩御飯の時間になった。正直言って、シルフィーの食事のほうが美味しい。でも、宿に泊まってまでシルフィーに料理させるのは駄目だ。我慢だ。。ご飯を食べようと、みんなで椅子に座ろうとすると、ニーナだけが何故か、地べたにぺたりと座っている。あ、奴隷の時の習慣か。


「ニーナ、もう奴隷ではないので、一緒にテーブルでご飯食べていいんだよ?」

「あっ、そっかぁ。」


 ニーナも椅子に座りなおして、みんなで食事をいただいた。


「おいしー。ニーナ、こんなおいしいごはん食べたの初めてー。」

「そうか、良かったな。ゆっくりと食べような。」

「うん!!」


 ニーナは、夢中でご飯を食べている。これで美味しいと言っているのなら、シルフィーのご飯を食べたら泣き出すのではないかな…。


 俺は、明日の予定を考えていた。とりあえず、ニーナの着る物だよなぁ。


「シルフィー、お金結構使ったけれど、あとどのくらい残ってる?」

「えーと、あと600万ゴールドくらいです。」

「まだ結構残ってるんだな。明日はニーナの服を買いに行こうか。」

「はい。」


 まだお金は残っているけれど、討伐の依頼もしないと。これからは二人を養っていかないといけないのだから。二人の娘のためにはおとーさん、がんばるよ。お父さんじゃないけど・・。


 食事が終わったら、ニーナに色々と話を聞いていた。シルフィーもお茶を入れてくれて、ニーナのそばに座っている。


「じゃぁ、ニーナ色々と今までの事、教えてくれるかなぁ?」

「うん!」


「お父さんと、お母さんの事、何か覚えてる?」

「んーん、わかんないー。」


「何処に住んでいたのかもわからない?」

「うん、わかんないー。」


「兄弟とかはいなかったのかな?」

「うーー、わかんないー。」


「んー、今が三歳だから、売られたのは一歳か二歳か。覚えているわけないか。」

「うん! それでね、どれいって言うのもよくわかんなかったんだけど。わたし、ここにいてもいいんだよね? 前に住んでいた所では、買われるとご主人しゃまって呼ばないといけないって、言われてたの。」


「うん、ずっとここにいていいんだよ。ああ、ここは仮の住まいだけどね。これから俺がニーナの事を守るおにーちゃんだよ。名前は、アレクシス。呼び名は何でもいいよ。」

「じゃぁ、ご主人しゃまって呼ぶ!」


「それは・・・、どうなのかな。。」

「私は、ご主人様でいいと思います。親しき仲にも礼儀ありです!! 大体、私が『アレク様』と呼ばせていただいているのに、ニーナが『アレク』とか呼んだら許しません!!」


 シルフィーは賛成したようだ。でも、何か変な対抗心を感じたけど、まっいいか。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 次の日の朝。俺たちは、ニーナの服を買いに中心部の商店街に来ていた。


「とりあえず、ここに入るか。」

 俺は、いかにも高そうなお店に入ることにする。ここなら白金貨でも喜んで受け取ってくれそうだ。俺が扉を開けると、ニーナが嬉しそうに店の中に入っていった。おいおい、走るなよ。


「ちょっと、その子何処から入ってきたの? あなたのような貧相な子供に買える服なんかないわよ。。」

 店の店員さんらしい女が言った。なんか、カチーンときた。。シルフィーも怒った顔をしている。。俺とシルフィーが店に入ると、その店員さんは機嫌良く言った。


「あ、いらっしゃいませー。どのような服をお探しでしょうか?」


 明らかに、俺たちの服をみて上客だと判断したらしい・・。


「あ、いえ。こちらには、この子の似合う服はないらしいので、もっと高級なお店に行くことにします。失礼しました。いこっ、ニーナ。」

「うん!!」


 俺達は、その店を後にした。二度と来るか。店員さんはポカーンとしていたが、知らない。


 俺達は、もっと高級そうなこれでもかって店は無いか歩いていた。少しメインストリートから離れた路地に入ったところに、少しシックな洋服店があった。どうやら、オーダーメイドの専門店らしい。オーダーメイドかぁ。時間はかかるけれど、サイズもぴったりになるし、ひとつくらいは持っていたほうがいいかなぁ。そう思い、試すわけではないのだが、さっきと同じようにニーナに先にお店に入らせた。すると今度は、


「おやおや、お嬢ちゃん。服を買いに来たのかね?ご両親は?」

「うん、服を買いに来たのー。」

「そっか、どんな服が良いのかなーー?」

「えーと、よくわかんないー。なんか、高いの買うみたい。」


 流石にこれ以上はまずいので、俺たちも続いていく。客の対応はキチンとしているようだ。

「おや、いらっしゃいませ。この子の両親・・・って訳ありませんよね。。おや、何処かでお会いしましたっけ…。」

 じっと、俺の顔を見ていたおじさんが、驚愕に顔を染めていく。おや? どうしたんだろう。


「そ、その角。銀色の髪。竜神の子供。。あ、あなた様は。。」

 突然、そのおじさんが土下座してしまった。。おい、おい。


「あなた様に、子供の目を治していただいた夫です。あれから何度も、何度も、礼を言うために教会に伺ったのですが、病がある者しか入ることを許されず、結局、礼も言えないままでいました。子供の目を治していただきありがとうございました。ありがとうございました。ううぅぅぅぅぅあ・・、ありがとぉぅぅぅぅ。。。。。」


 その男は、頭を地面にこすりつけて泣きながら礼を言ってくれる。よほど、嬉しかったのだろう。本当に良かった。俺は優しい声で、その男に答えた。


「バレてしまいましたか。一応プライベートでやってきたのですが。まぁ、一応神託もあったしいいか。あの失明していた子供の旦那さんですか。病気が治って良かったです。これもすべて、女神様のお力ですよ。頭を上げてください。汚れてしまいます。」


 おれは、跪いて男の肩をゆっくりと上げる。土下座までされると流石に困る。。


「ああ、御使い様ーーー。」

 後ろから声がしたとおもったら、あの時に教会に来られた母親と、目が見えるようになった子供が立っていた。すぐに二人とも旦那さんの横に並んで、頭を下げた。うん、三人とも泣き出した。うーん、困った。


 後ろで、シルフィーは跪いて。ニーナは何が起こっているのかわからないでボーっとしている。シルフィーはプライベートと御使い様モードをはっきりと区別してくる。いまは、御使い様モードなどだろう。。


 しばらく泣いていた旦那さんが、話し始めた。


「御使い様、今回は服を作りに来られた様ですが、是非、私たちに作らせていただけないでしょうか。どうか、私にお礼をさせてください。もちろん、お代はいただきません。」

「だ、駄目ですよ。きちんと対価は支払うべきです。お金はお支払いいたしますから。それに、あの時は私は、捕らわれていた身で、この街の皆さんが本物の御使い様だと信じていただいたから、牢屋から出ることができたのです。お礼をするのは自分の方ですよ。」


「しかし・・・。」


 そこに、シルフィーが提案をしてきた。


「それでは、お言葉ですが洋服を材料費のみの原価で作っていただくというのはどうでしょう?それなら、旦那様の負担もありませんし、御使い様にお礼もできます。御使い様は原価ですが対価には間違いありません。きちんと原価を支払っていただきます。」

「私どもはそれでかまいません。」

「シルフィーがそう言うなら。。うん、それでお願いします。」

「ありがとうございます。最高級の服を作って見せます。」

「い、いや。普段着がほしいのですが。。」

「わかりました、最高級の普段着を作ります!!」


 駄目だこりゃ。









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