34 奴隷市と、白狐ニーナ
俺達は領都に着くと、シルフィーに馬車と積み荷を出してもらった。商人さんから依頼達成の用紙にサインをしてもらい、礼を言って別れた。商人さんは、シルフィーの事が気掛かりみたいだったが、俺がいる為か、結局誘ってくることはなかった。やはり、アイテムボックスの存在は大きいらしい。
俺は領都に着くと、まず宿を探した。奴隷市が開かれるのは明日だ。まず、寝床を用意する必要がある。ただ、その宿選びが少し難しい。同じ部屋で寝るのは駄目だ。二つ借りれば良いけれど、シルフィーの部屋に誰かが押し入ったら困る。なので、可能であれば二つ小部屋のある広めの部屋を借りたいのだ。つまり、2DKの部屋がいい。しかし、その様な宿はいわゆる高級宿である。俺たち子どもを泊めてくれるだろうか?
考えていても仕方がないので、俺達は高そうな宿に入っていった。ホテルのフロントのようなところへ行くと声をかけられた。
「いらっしゃいませ、二名様でよろしいでしょうか?」
「あ、はい。部屋は空いてますでしょうか?できれば、ひと部屋で、中に寝室が二部屋あるところが良いのですが。。」
「はい、空いておりますよ。条件に合う部屋もございます。では、こちらの紙に必要事項をご記入ください。」
あらら、思ったより簡単に泊まれそうだ。よかった。俺達は、一週間分の宿泊費を支払った。
「もしも、一週間で足りなくなりそうであれば、不足分を追加で払いますので。。」
「はい、了解しました。ではご案内します。」
俺達は、部屋まで案内された。部屋まで食事も運んでくれるらしい。うん、いい宿だ。
翌日、俺達は気持ちよく朝を迎えた。
実は、経費削減のためか、任務中はずっと野営だったのだ。久しぶりのベットでの眠りに、思わず寝すぎてしまった。朝食の時間になって、シルフィーのノックの音で起きた。
今日は、奴隷市が開かれる日である。場所は、中央広場のど真ん中。イメージとしては、裏路地の暗いところで開かれると思っていたのだが、だいぶ違うようだ。その会場に行ってみると、奴隷と言うよりは、労働者というイメージが強い。頭の良さそうなメイドとして雇いたくなる女性や、筋肉がムキムキになっている、強そうなお兄さん。護衛向きかな。
しかし、目当ての白狐がいない。受付のようなところで座っている男に聞こうとした。しかし、何と言えばいいのだろう。。まさか、女神様から神託がありましたので、白狐を引き取らせてくださいとは言えない。
考えた末に、俺は、このように切り出した。
「すいません、小間使いに雇えるような小さくてかわいい女の子はいませんか?」
うーん、なんか怪しいおじさんのような聞き方だな・・。
「はい、えーとそうですね。あまりにも幼すぎて使えないと思って、今回は表に出していない子がいますが、見てみますか?」
たぶん、その子だな。。俺は了解する。
「はい、是非。」
その男は奥に引っ込んでいくと、その女の子を連れてきた。
「この子、まだ3歳なんですけどね。可哀想に、親に売られまして。この年なのでまだ働くにも体力的にもきついようなんですよ。愛玩奴隷とかにしないと誓ってくれるならお譲りしても構いませんよ。」
男はそんな事を言った。いやいや、子供に愛玩奴隷とか言わないでくださいよ。。シルフィーも困惑しているじゃないですかぁ。よく見ると獣人の狐の女の子だ。狐と言っても、耳と尻尾が無ければ狐とわからないくらい人間に近い。けれど、白くないぞ?これって白狐ではないだろう?
「すいません、ほかに獣人で小さな女の子はいます?」
「いえ、今回連れてきている中では、獣人の小さな子はこの子だけですよ?」
うーん、この子でいいのかなぁ。成長すると、毛が白くなるとか?
たぶん、この子だろうと思い俺は購入することに決めた。
「では、この狐さんを買います。おいくらですかね?」
すると、不思議そうな顔をして、
「坊ちゃんが買うのです? ご両親は?」
ああ、ほかにも両親がいると思っていたんだな。
「いえ、両親はいま家にいます。小間使いのできるような子を買ってきてほしいと頼まれました。」
「そうですか。それでは、この子は350万ゴールドになりますね。」
「え、そんなに安いんでしょうか・・・。」
「え?これでも、高いと思うのですけど。。ほとんど力もありませんし。。ほんとうに、小さなお使いくらいしかできませんよ?」
それでは、この子を奴隷の身分から解放するためにはどうすればいいのだろう?それも聞いてみた。
「それでは、同時にこの子を奴隷の身分から解放するには、おいくらですか?」
「え?そんなことをすれば、逃げられたりしますよ? それにこの子はひとりでは生きていけません。奴隷の身分の方が、法律で衣食住を保証されていますから、安心なんですよ。この子も奴隷でいたいと思うはずですよ?」
「いえ、私は、あ、いや私の父は、奴隷から解放したとしても、きちんと衣食住を与えますし、責任をもってこの子を保護すると誓いますよ。それも、女神様に誓います。」
多少は方便として嘘も許してほしい。
「そ、そこまでおっしゃるのでしたら・・。えーと、少々お待ちください。」
そういって、奴隷商人は奥へと入っていった。
しばらくして戻ってくると、男はこう言った。
「えーと、この子の借金の総額が解放のための金額になりますからね。えーと、この子はと・・・」
男は、帳面をパラパラとめくっている。
「ああ、ありました。この子は1000万の借金で売られていますね。なので、この子を解放するためには、総額で1350万必要ですよ。」
「わかりました。シルフィー?」
「はい。」
シルフィーは何もないところから革袋を取り出した。奴隷商人の男がギョッとしている。
「えーと、白金貨で135枚ですね。。」
シルフィーは10枚ずつ数えてテーブルに置こうとすると、
「ちょっ、ちょっとまってくれ。悪い、冷やかしだと思ってたんだ。こんなところで金を積まれても困る。中に入ってくれ…。」
と言った。いや、冷やかしじゃないから・・。
俺達は、テントの中に案内された。そこの中の椅子に座ってもう一度シルフィーが白金貨を並べていく。白金貨10枚の束が13列並んだ。
「それと、残り5枚ですね。いち、にー、さん、し、ご。。これで全部で間違いないですね?」
「お、おう。確かに。おい、ニーナ。お前を奴隷から解放してくださるんだってよ。挨拶しろ。」
話を黙って聞いていたニーナと言うその幼い子供は、小さく挨拶した。
「お、おにーちゃん、ありがとう。」
そして、ぺこっと頭を下げた。すると、男は、
「確かに、お前は自由になったがな。だからといって、親の元に帰ろうとか思うんじゃないぞ。一度、子供を売り飛ばした親は、また同じ過ちを犯す。家に帰ってもまた売られるだけだからな。それよりは、このにーちゃんの家族にしっかりと面倒をみてもらったほうが、お前は幸せになれるだろう。」
「うん、わかった。それに、わたし、お母さんの顔もお父さんの顔も覚えていないし。。どこがお家なのかわからないもん。帰れないよ。わたし、おにーちゃんと一緒にいたい。」
俺は、ニーナに挨拶をする。
「ニーナと言うのか。よろしくな。」
「うん!!」
「わたしは、シルフィーよ。よろしくね。」
「うん、おねーちゃん!!」
その女の子はにっこりと笑った。
俺は、この子をしっかり守ろうと決めた。シルフィーは可愛いと思ったのか、ぷるぷる震えている。おねーちゃんと呼ばれたのが嬉しかったのかなぁ。
それから俺達は、ニーナの奴隷解放の儀式なんかをして、宿に戻った。




