32 女神様の神託
寮に戻ると女神様がいた。流石に驚いた。
俺たちはあわてて跪く。
「突然呼んでしまってごめんなさい、戻ったらここに転送されるようにしていたのです。」
「いえ、何か急用でしょうか?」
「はい、これから一週間後に領都で奴隷市が開かれるのですが、その中に獣人の白狐がいるはずです。その子を保護してもらいたいのです。」
「はい、わかりました。必ず保護します。」
「間違っても、女神の神託だからって、お金を払わないで手に入れる事は考えないでください。その奴隷商人も確かな資格を持ったまともな商人です。ちゃんと、法を厳守している商人なのです。まぁ、まだ小さい子供だし、値はそれほど高くはないと思います。」
「わかりました。」
「それでは、よろしくお願いしますね。」
「「はい!!」」
すると、元の玄関に戻ってきた。
「お、驚いた。。」
「びっくりしたですー。。」
二人はその場で座り込んだ。
俺はすぐにシルフィーと相談する。
「また領都に行かないといけなくなった。一緒に来てくれるか?」
「もちろんです。来るなと言われても付いて行きます。」
「学校、また休学しないといけないなぁ。出席日数とかどうなっているんだろ。」
「仕方ありません、女神様の神託です。御使い様の本領発揮です!」
「なんか、張り切っているな、あはは。」
しかし、今度は奴隷かぁ。この世界にも奴隷っているんだな。犯罪奴隷はいるのは知っていたけれど、一般の奴隷は見たことが無かった。聞いたところによると、一般奴隷に落ちる理由は何通りかあるらしい。ひとつは、犯罪奴隷になるほど重くない犯罪を犯したものが落ちる。ふたつめは、親が犯罪を犯して、連帯責任で奴隷に落ちる。みっつめ、お金を返せなくなって奴隷に落ちる。四つ目、親が子供を売る場合。ちなみに犯罪に関係する奴隷は、引き渡し時に、奴隷商人に犯罪についての説明責任が生じる。
領都に行く手段だけれど、少しでもお金を増やすために護衛の任務を受けることにした。奴隷を買うためのお金が足りなかったりしたらいけないからだ。
俺たちは、護衛任務が無いか確認のため冒険者ギルドを訪れた。依頼が張り出されている場所に行き確認していると、後ろでシルフィーが誰かから話しかけられた。うん?何の用だろう。
「お嬢さん、アイテムボックスを持っているってのは本当かい?」
「え!? はい、持ってますけど?」
「まじか、どうだ俺たちのPTに入らないか?俺たちはCランクPTで、今のパーティーよりは多く稼げるぜ。」
おいおい、俺がいるのにいきなりPTの勧誘を始めやがったぞ。俺は慌てて言った。
「ちょっ、ちょっと。シルフィーは俺のPTに既に入ってますよ。駄目ですよ。」
「ん? 俺は嬢ちゃんに話があるんだよ。黙ってな。」
こいつら、俺の事を知らないのか。。まぁ、シルフィーの返事は決まっている。・・・たぶん。
「い、いえ。私は、アレク様の相方ですし。。アレク様と離れるつもりなんてありません。」
うんうん。そうだろうそうだろう。俺はシルフィーを信じているぞ。
「そう言わずに、少し俺たちと話をしようぜ。」
そう言って、男は奥の食堂エリアに連れて行こうとした。おいおい。
周りでも、俺が怒るのではないかと数名の男たちが慌てて出て行った。トラブルは避けて通るのが一番だ。だが、俺はこんなことではもう怒ったりしない。うん。大丈夫だ。
「ちょっと、何処に連れて行こうとしているんですか。離しなさいよ。」
俺は、あくまでも話し合いで解決を試みた。
「るっせーなぁ。子供のくせに大人につっかかってくるんじゃねーよ。」
そんなことを言って、まだシルフィーを引っ張っていく。イラッ
「待てってば。嫌がっているでしょう?」
誰か止めてよ・・・・、俺はあたりを見回すが全員サッと目をそらした。
お・・・おまえら。。誰か止めろよ。。
俺は、男の腕を掴んで止めた。軽くだ。強く掴むと潰してしまうかもしれない。
「待てって。」
「いてて、離せ。」
男は腕に力を入れて振り払おうとするが、当然、ぴくりともしない。
「おにーさん、やめなよ。ケガするよ。」
「なめた口きくんじゃねーよ!!」
イラッ・・・イラッ・・・
シルフィーも困ったように言った。
「止めてください。離して!!」
ギルドの職員も、あわてて席を立つ。
「お、おい。そこの男やめんか!!」
「く、くそっ、なんて馬鹿力だ。どけっ」
俺の頭を手で叩いた。男はとうとう手を出しやがった・・。俺が仕方なく手を出そうとした時だった。
ばしーーーーん。
シルフィーがキレた。
シルフィーが、男の頬を思いっきり平手で打った。
「え?」
「え?」
男も俺も一瞬何が起こったのか理解できないでいた。
「アレク様に何をするの?アレク様が我慢して穏便に済ませようとしてくださっているのに、いい加減にしないと私も許しませんよ。。」
言葉遣いはいつもと変わらない気がするのに、なんというか怖い。
「いてぇ、何するんだこの女ぁ~」
男はシルフィーを思いっきり突き飛ばした。
「きゃっ」
シルフィーが、床にゆっくりと倒れていく・・・・ぷちんっ
ズドンッ、ばきっ!!!!
気が付いたら俺は男を思いっきり蹴り飛ばしていた。俺は、慌ててシルフィーのもとに駆け付けた。
「シルフィー、大丈夫か!!」
「大丈夫です。それより、アレク様。あの男の手当てを・・・。」
「あ。」
俺は、男を探すと壁に思いっきり叩きつけられて倒れていた。やばい、思いっきり蹴ってしまった。内臓破裂しているかもしれない。くそう、護身術の授業で手加減の練習をずっとやってきたのに。。俺は、シルフィーをゆっくりと椅子に座らせると男の元へと急いだ。
男の周りには数人の冒険者たちが集まっていた。
「すいません、手当てします。離れてください。」
男を見ると、気を失っているようだ。一応、皮の防具を装備している。死んでいることはないだろう。俺は、男に向かって魔法を唱える。
「診断」
男の体は、内臓破裂、肋骨骨折、血圧低下していた。このままほっておくと死ぬ。仕方がない…、俺は周囲の魔力も使用して、高レベルの回復魔法をかける。俺は、イメージする。まずは内臓の修復。不要細胞の除去。細胞の分裂活性化。血管の修復。血管外の血液の除去。肋骨の接合、固定。赤血球の増殖。血圧正常値まで上昇。神経の損傷部分修復。ここまでイメージすると俺は魔法を発動させた。
俺の周りでは魔力が濃縮し、キラキラと輝きだす。次第に俺の体も発光しだした。俺の右手からは輝く光が男の体を包みこむ。光が拡散し、消滅すると男は目を覚ました。。
「んあ、あれ俺は何をしていたんだっけ。」
少し記憶の混乱はあるかもしれないけれど、命に別状はないだろう。周りでは、俺の回復魔法を見て御使い様の奇跡だと勘違いして跪く人多数。確かに、今現在このレベルの回復魔法は存在しない。
「すまない、シルフィーが倒されるのを見て力の制御ができなくなった。危うく殺すところだった。まだ血液が足りないと思うので、しばらくは休養しておくように。」
男は、まだ状況が掴めないでいた。何故俺は倒れていたのだろう? 何故、周りの連中は跪いているのだろうと不思議そうな顔をしている。俺は一旦、シルフィーを連れて外に出た。
その後、男は周りの連中に事情を聞き、顔を青くしていたそうだ。
困ったな、落ち着いたころにもう一度ギルドに行かないと。。護衛の任務が受けられないよ。




