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3 また妖精さんがきた

妖精の話口調を修正しました。2019/04/10


 俺が魔力を感じる練習を始めて、約半年が過ぎたころ。あの妖精さんはやってきた。


【さてと、約束通りきたわよ。私がわかるかしら?】


 別に、約束なんてしていないが、俺はさっそく覚えた言葉を一生懸命しゃべった。


「よーせーたん、よーせーたん、よーせーたん」


 俺は最近できるようになった、つかまり立ちで妖精に向かって左手をぱたぱたと動かす。


【私はテレパシーでしか話せないのよ。テレパシーで話せないかしら? それに、よーせーたんとは何? 私のこと?】


 俺は、肯定の意味を込めて頭を上下にこくこくと動かす。妖精さんは口がないのか、テレパシーでのみ会話ができるそうだ。そんなの初耳である。すると、正面で俺を見守っていた母さんが不思議そうな顔で俺に言う。


「アレク、〇〇〇誰かいるの? よーせーたん? 」

 俺の名前はアレクシス(Alexis)、母さんの名前は、ノエル(Noel)という。苗字はたぶんミラー?(Miller)まだ自信はない。まだ聞き取れないところはあるけれど、大体の意味は理解できだした。母には妖精さんが見えていないらしい。俺は、とりあえず妖精さんがいるよって伝える、つもりだが・・・。


「ままー、よーせーたん、よーせーたん」


 うん、まだこれが精いっぱいである。

「おかしいわね、何も見えないわ。」

【そりゃそうよ、普通は見えるはずがないの。何故、あなたは見ることができるの?】


 そう言って、妖精さんはパタパタと周囲を飛び回る。そんなこと言われても、何故見えるのかなんてわからない。魔力が普通より多いせいかなとは思うけど。


【魔法の使い方がまだよくわかっていないから、テレパシーは聞き専なのかしら。】


 聞き専なんて言葉がこの世界にもあったなんて。いや、これは日本語に翻訳されるときに勝手に変換されているのかもしれないけれど。


【少し、魔法の使い方を教えてあげるわ。まず、自身の魔力を感じるのよ。その魔力を必要な分だけ確保するイメージをしてから呪文を唱えてみて。テレパシーの呪文は、○○○○○○よ。どう? やってみてくれるかしら?】


 駄目だ、呪文の部分がまったく理解できない言語みたいだ。でも、魔力を感じることはできるはず? 魔力を必要なだけ確保するイメージ? それは初耳だなぁ。呪文は無詠唱の場合イメージで置き換えればいいのか? そもそも、必要な魔力の量とかわからないんだけど。。テレパシーとかすごくむつかしそうな魔法だし。魔力足りるのかな。練習してきたみたいに、まわりの魔力も使ってできるかな?


 俺は、テレパシーの魔法を使ってみることを決心した。まずは、魔力を感じる。と言っても、部屋の中の魔力くらいしか感じることはできないけど。今使える最大の魔力を、俺は周囲の魔力も含めて体内に取り込む。うん、母さんや妖精さんの周りにも魔力が集まっているみたいだ。その魔力まで借りるとまずいかもしれないのでやめとく。周囲の魔力を足のほうから吸い込むようなイメージで、背中から頭へ。そして、頭から胸、おなか、おへそに。おへそに魔力を集めて圧縮するように魔力をかき集める。


【・・・。え? あなたの魔力がどんどん増えていく? な、何で? とてつもない魔力だわ。】


 いや、だからあなたにテレパシーを送る練習を。間違っているのだろうか。え、もしかして魔力が多すぎる?しかし、いまさら魔力の量を減らすなんてむつかしくて無理である。俺は、イメージする。妖精さんに言葉を伝えたい。妖精さんに届けたい。言葉を届けたい。そして俺は、心の中で言葉を叫んだ。


【妖精さーーーーーーーーーーーーーーーーーーんーーーーー、聞こえますかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!???】


【きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!】


 あ、妖精さんが耳を塞いでその場に落ちた。。


 う、うん。声が大きかったのだろうか。どうやら気を失ったようだ。。


「よーせーたん!!」

 俺は、必死で妖精さんの元までハイハイする。


「な!?、私にも見える。本当に何かいた!?」


 どうやら、母さんにも見えているらしい。意識を失ったために、いままで見えないようにしていた魔法か何かが解けてしまったのだろうか?


「ままー、よーせーたんたすけーすけー」


「お母さん、妖精さんを助けて」って言ったんだけど、うまく喋れない。でも気持ちは伝わったようで、母さんは癒しの魔法を妖精さんにかけてくれた。


 しばらく、俺のベットの横で妖精さんを寝かせていたら、目を覚ました。


【あ、妖精さん目を覚ましましたか?】

 静かに話しかけたつもりだったが、妖精さんはびっくりして飛び上がった。ええ、まだ声が大きいのだろうか。


【まって、まって。。お願いします、一度テレパシーの魔法を解いて。

 もう一度、今度は魔力をほんの少しだけ使うイメージでやって。

 私、頭がどうにかなりそう。】


 どうやら、テレパシーの魔法は一度相手とつながると解除するまで繋ぎっぱなしみたいだ。しかし、どうやって魔法って解除するのだろう。とりあえず、心の中で魔法を解除すると唱える。切断をイメージする。切断、切れる。ぶっつりと回線を切る。あ、イメージしていると本当に魔法が解除されたようだ。いままの相手とつながっている感覚がなくなっている。


【いいわ、解除できたみたいね。テレパシーの魔法はそんなに魔力はいらないのよ。さっきの魔力だと、きっと星の裏側にだってテレパシーが届いてしまうわよ。。それにしても、無詠唱でいきなり魔法を放つとか何なのあなた・・・。】


 俺は教わった通り、ほんの少しの魔力でテレパシーを使った。


【もしもし、これでいいでしょうか?】

【はぁ、やっと普通になったわね。ちゃんと聞こえてるわよ。】


 おお、初めて普通に会話ができている。ちょっと感動。

【初めまして、俺はアレクシス・ミラー。たぶん、もうすぐ1歳です。

 妖精さん、よろしくお願いします。】


【妖精さん?私のこと?妖精って何? 私は、フェアリー族のシルキー。妖精とか言うのとは違うわよ。そもそも、なんで赤ん坊がテレパシーで会話をしているのか謎だわ。あなた、本当に赤ん坊なの?】


 たしかに、普通赤ん坊が話したりはしないよね。どうしよう、ここは正直に話してみるか?この世界のことや、魔法のこともいろいろと知りたいし。敵になるとは思えない。もし俺をどうにかしようと思っているのなら、きっととっくに殺されているだろう。しかし、フェアリー族か。たしか妖精の英語がフェアリーだったっけ。なんか、前世の記憶がそのまま使える場合もあるみたいだ。


【シルキー様、自分は女神ウェヌス様に導かれて、別の世界から転生してきた元人間です。なので、前世の記憶を持って生まれたためにテレパシーでは前世の言葉で会話できているようです。フェアリー族は、前世では女神様の言葉を伝えたり、手助けをする存在だったと思うのですが、女神様をご存知ですか?もしよろしければ、この世界のことをいろいろと教えてほしい。あ、もちろんこの事は自分とシルキー様の間だけの秘密でお願いいたします。】


【え? 転生者なの? 確かに、女神様は私たちの信仰する神だけど。ごく稀に、あなたのような転生者がこの世界にやってくることは以前にもあったわ。竜神族の子は初めてかもしれないわ、人間として生まれてくることが多いのよ。そういう人間は、大体勇者とかになっていたわ。あなたもとんでもない力を持って生まれてきたようね。】


 俺は勇者になったりする気はさらさらない。スローライフを楽しみたいのが第一目標だ。もちろん、トラブルの時に対処できるように武術や魔法を習得したいとは思う。でも、それで強くなったからといって、魔王を倒せとか言われても俺には関係ないし、行く気もない。そうだな、冒険者とかになってこの世界を旅するとか、そういう生き方は嫌いではない。よし、とりあえず冒険者になってお金を稼いでのんびり暮らすのが今後の目標にしよう。って、赤ん坊の俺が何を考えているのやら。


【たしかに、特別の力を女神様から授かりました。しかし、それで勇者になれとか言われたわけでもありませんし、自分はのんびり暮らすほうが好きです。赤ん坊の俺か考えるのはまだ早いけど、将来は冒険者になって、この国を自由に旅でもしたいですね。】


【女神様から力をいただいたのね? それも、女神様と直接会話をしたの? 普通は、転生者だとしても女神様に会ったり力を授けてくれることは無いわよ。女神様は何も言われなかったようだけど、あなたには何か使命があるのかもしれないわね。族長に報告することにするわ。また会うこともあるかもしれないけど、よろしくね。】


 そういうと、シルキーはふっと姿を消した。え?、、、族長に報告する?この事は秘密にしてほしいってお願いしたのに。。聞いてくれなかったようだ。。





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