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23 国王がやってきた。

 リオの町に国王様がやってきた。


 どう考えても、俺に会いに来たのだろう。。困った、会いたくはないのに。しかし、王ならば普通は城に呼びつけるものだが、自ら足を運ぶとは・・・。普通の王とは違うのかもしれない。


 学校に行くと、やはり国王様が待ち構えていた。すぐに俺は会議室に呼ばれた。おいおい、授業は出席にしてくれるんだろうな。。俺が部屋に入ると、国王様が話しかけてきた。


「おお、あなたが御使い様でございますか?」

「あ、はい。一応、女神様からのお言葉を授かったことがあります。」


 国王様は、おおーっと感激の言葉を漏らす。

「で、では、今は女神様は何と申されておりますか?」

「いえ、何も聞いておりません。」

「え?」

「え?」


 何かおかしいことでも言ったかな?

「この国の事とか、政治の事とか、私の事とか話されたことはありませんか?」

「まったくありません。」


 うーん、困った。国王様も困った顔をしている。

「えーと、自分が女神様から神託を受けた内容は、『フェアリー族が捕らえられています。助けなさい。』と、この一言だけです。そして、その件はもう解決しましたので。」


「他には何も?」

「はい、何も。」


「御使い様から女神様に話しかけられてはどうなのです?」

「そんなことはできません。女神様からの声を聞くだけです。」


 国王様は、「うーん」と、頭を悩ませております。どうも、俺からも女神様に願い事とかできるのだと思われていたらしい。こちらからは、全く連絡手段は無いのにね。あれ、テレパシーって女神様に届くのかな? いや、なんか届いてしまったら怖いのでやめておこう。。


「そうですか。わかりました。それでは、御使い様には是非、我が城に滞在していただきたいと思うのですが。もちろん、滞在中は宮廷料理を毎日食べられますし、好きなものを王都に買いに行くことも可能ですよ。是非お越しくださいますよう。」


 うん。やっぱりそうなるよね。小説などでもお決まりのパターンである。

「嫌です。私は、ここの学生ですし。」


 それを聞いた王直属の護衛たちはざわついた。


「な、何を申される。王の言葉であるぞ。」

 うん、これもパターン通り。。


「いや、俺はこの国の住人ではありませんし。俺はここの隣の村人ですから。。ここの王様の命令なんて聞く義務はないでしょう?ただの留学生ですから。」

 返しもこれでいいはずだ。うん、小説読んでいてよかったなぁ。


「なにを・・、この者無礼であるぞ!!切り捨ててやろうか!?」

 いきなり、剣を抜きやがった。


「ほほぅ・・・、お主、我を切れるのか?」

 もちろん、結界は前もって張っている。


「くっ、この野郎・・。」

「やめんか、すぐに剣を収めよ。御使い様、部下が申し訳ありません。」

 あら、国王様自ら頭を下げた。。この国王、一味違うな。。頭を下げた国王に部下も驚いている。上に行けば行くほど、なかなか頭は下げられないものだ。


「いえ、部下が怒るのは当然です。もしも、次の神託があって国王様に協力していただく必要がありましたら、その時は、私自ら城に伺いますので。神託があると言う事は、問題ごとがあると言う事です。無いならばそれは、この国が平和であると言う事です。胸を張って良いと思いますよ。」


「そうですな。ありがとうございます。仕方がない、我らはこれで城に戻るとします。御使い様、体に気を付けて。また会える日を楽しみにしております。」


 それでお互い礼をして、別れた。うん、なかなか良い王じゃないか。俺は、思ったほど嫌な気分にはならず、そのまま教室に戻った。学生の本分は勉強である。


 そして、王様が去ってから数か月がたった頃、リオの町に御使い様がおられるという噂が流れていた。たぶん、俺がその御使い様だとは気づかれてはいないが。そして、その日の晩からシルフィーがいなくなってしまった。


 おいおい。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 シルフィーがいなくなって数日が過ぎた。おれは、はっきり言って怒っていた。当然だ、シルフィーが俺の前から何も言わずに消えるわけがない。何かあったのだ。最近は、買い物にはひとりで行ってもらってたのだが、それがいけなかったらしい。。まさか、王の指示ではないだろうな。。俺は学校も行かず、シルフィーを探していた。今日は、運がよかった。犯人からの接触があったのだ。


「アレク様と言うのはお前か?」

 アレク様と呼ぶのはシルフィーだけだ。間違いない。

「そうだが?」

「一緒に来てもらおう。」

「シルフィーは無事なんだろうな?」

「いらんことは言わなくていい。ついて来い。」


 俺は、その男に案内させるため素直について行った。今は、こいつが唯一の手掛かりなのだ。男におとなしくついていくと、しばらくすると馬車が止めてあった。

「乗れ。」

 どうやら、行先は遠いらしい。


 あれから、どのくらい経っただろう。シルフィーの事を考えると、勝手に威圧が発動するようになった。俺はイライラして、まだかまだかと心の中で呟く。近くに座っていた男も俺の異変に気付いて一番遠くの座席まで離れている。仕方がないので、心を落ち着かせるためにも眠ることにした。あまり寝てなかったのだ。寝ているところを襲われても困るので、結界を張っておく。


 俺は、ふと目を覚ました。俺の目の前には三人の男がいた。俺が目を覚ますと、すぐに離れていったが。たぶん、何をしても起きないので困り果てていたのだろう。


「ん?やっと着いたのか?」

「お、おう。やっと起きやがったか。降りるぞ。」


 馬車から降りると、そこには大きな教会があった。教会か・・・。俺は、敵が誰か大体わかった。そして、怒りがメラメラとこみあげてくる。まだだ、まだ我慢しろ。シルフィーの姿を確認してからだ。。


 教会の中に連れていかれると、大きな部屋に通された。そこには、教会のお偉いさんらしき者が揃っていた。そして、その中にずっと探してきたシルフィーがいた。。しかし、シルフィーの首にはナイフが近づけられている。脅されているのか。。俺は、一瞬発狂しそうになるが、何とかこらえる。深呼吸をする。落ち着け。落ちつけ、おれ。俺は無詠唱でシルフィーに俺のほぼすべての魔力で物理・魔法用防御結界をかけた。もちろん、今現在もかかっているだろうが、念のため重ね掛けだ。もちろん、半永久に効果は続くやつだ。ふぃーーーー・・。これで、シルフィーは何があっても安全だろう。メテオが降ってきたらやばいが…。エルフのあの先生くらいの魔術師となると、なかなかいないだろう。。い、いないでほしいな。。安心していると、偉い人が話しかけてきた。


「そなたが御使い様を名乗っている、アレクと言う者か?」

 ん、もうどうでもいいぞ。。あとは、どうにでもなる。俺は冷静になった。


「はい、確かに女神の神託を授かったことがあります。アレクシス・ミラーと申します。」


「たわけが、女神様は人間の巫女にのみ神託を授けられるのだ。」


 うん、いかにも人間の腐ったやつが言いそうなセリフだ・・。俺を偽物にして捕らえるつもりだろう。自分たちの神託が女神様からの神託ではないと思われるとまずいのだろう。


「この者は、女神の言葉と言って戯言を言う偽物だ。拘束しろ。地下の牢屋にでも放り込んどけ。」


 うーん、このまま暴れて力任せにシルフィーを救い出すのは簡単だ。でも、教会は大きな組織だ。今ここを抜け出して逃げても、しつこく追ってくるだろう。今度は、暴行の罪をつけて正当な理由があると正々堂々と。それはメンドクサイ。。おれは、わざとここに捕らわれることにした。


 な、なんと。捕らわれてみると、隣にシルフィーがいるではないか。ついている。女神様の計らいか?普通仲間同士は離して牢獄するものだと思うのだが。


「シルフィー、大丈夫か?何処か痛いところとかないか?」

 俺は尋ねた。

「アレク様、申し訳ありません。私のせいでアレク様にご迷惑を。。」

「いやいや、全然迷惑ではない。俺がシルフィーを守るのは当たり前だ。」

「しかし、捕らわれてしまっては・・・。」

「ん?大丈夫だぞ?こんな牢屋、出ようと思えば、すぐに出られる。」


 そう言って俺は牢屋の鉄の棒を掴んでぐにゃりと曲げた。そうして、シルフィーの牢屋に入った。

「よかった、心配したぞ。シルフィーに何かあれば、大変なことになっていた。この教会の者全員皆殺しだったぞ。。俺も大人になったものだ。だいぶ我慢できるようになった。あはは」


 そういって、シルフィーの頭を撫でた。シルフィーはうつむいて喜んでいるようだ。


「さてと、とりあえずシルフィーは助けられた。これからどうするかなぁ。。」


 俺は、途方に暮れた。









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