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17 エヴァ

 俺は今、寮の自分の部屋の前にいる。


 目の前には、領主の三女エヴァがいて、俺たちの帰りを待っていたようだ。何故かすごく被害妄想が酷いが、そんなに俺たちが野蛮な民族に見えるのだろうか?俺たちの村は、本当に平和でのんびりとした所だったし、好戦的な者など見たことがない。過去に、竜神族が人間に対して何かしたのだろうか?


「まったく、何を言い出すのかと思えば。全くの誤解だ。領都に行くのだって、家庭の事情で仕方なく行くのだ。行くメンバーも俺と、俺の身の回りのことをしてくれているメイドさんだけだ。二人だけで領都を滅ぼせると本当に思っているの?」


「そう、戦争とかじゃないのはわかったわ。私も少し考えすぎていた。それで、家庭の事情というのは何なの?」

「それこそ、大した用事じゃないよ。終わったらすぐ帰ってくるし、エヴァに言うほどの事じゃないよ。今日は旅の準備で疲れてるんだ。もう自分の部屋に入ってもいいかい?」

「駄目よ。ちゃんと理由を言って。本当のところを言うと、あなたがこの学校に入学することが確認できた時から、私があなたの監視役として送り込まれてきたのよ。隣国の伝説の戦士の村から子供が来たとなったら、普通は敵地の視察に来ていると思われるものよ。今、領都では竜神族の事でピリピリしてるわ。」


 そんな事、俺の知ったことじゃないのに。なんか、俺の知らないところで大変なことになっているらしい。メンドクサイ。うーん、どうしよう。仕方がないか、こうなったら女神様の話を打ち明けるか・・?

 それに、領主の娘はシルキーの捜索に使えるかもしれないな。領主の人脈を使えば、最近、妖精を手に入れた者の情報が掴めるかもしれない。そう、領都に捕らわれていると女神様から教えてもらったが、詳しい場所までは分かっていないのだ。それに、妖精を手に入れるだけの資金を持っているとなると、平民は考えられない。おそらく、貴族だろう。貴族相手だと、領主を味方につけたほうがやりやすい。


 俺は、芝居を打つことにした。まず、俺とシルフィーに魔法と物理攻撃を防ぐ結界をこっそりとかける。そして、エヴァの真横にほんの数滴のニトロを魔法で落とした。その透明の液体が地面に向かって落ちていく。。地面に接触した瞬間、大きな爆発音とともにエヴァは真横に吹っ飛んだ。もちろん、死なない程度にはしてあるが、少しの怪我は許してほしい。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 周囲にエヴァの声が響く。その声を聞いた彼女の護衛が後方から駆けつけてきた。どうやら、近くで様子を見ていたようだ。当然だよな、領主の娘をひとりでこんな所に来させるわけがない。俺は、護衛たちの靴を電極のマイナスに、地面をプラスにして思いっきり電流を流す。すると、強力な磁石となり、地面と靴が強力にに引き合う。護衛たちはその場で動けなくなってしまった。まるで、女神から足の自由を奪われたように。。


 さて、ここからは俺の芝居にかかっている・・・。上手くやれるかなぁ。。俺は、ゆっくりと膝を地面につけて、祈りのポーズをして大声で話し出す。


「め、女神ウェヌス様!! お待ちください。まだこの者たちが敵になるとは決まっておりません。この者たちの命だけは、どうか、どうかお許しくださいませ。。。」


 おれは、大げさに祈り、これらがすべて女神の力と思わせた。まぁ、本当に女神様が顕現されたら、間違いなく消されているだろうから、まだありがたいと思ってほしい…。女神様の神託を邪魔するなど、許されることではないのだ。。


 そして、俺の周りは音ひとつしなくなった。。まるで、別の世界に隔離されたように。。まぁ、俺が音を反射する結界を張ったんだけどな。これから話す内容は誰にも聞かせたくないしな。実際、エヴァも護衛の人間も声ひとつ出せないまま固まっている。


「女神様は、この空間を今ご覧になられております。音がなくなったのは、女神様が耳を傾けられていて、無駄な音を省いたためでしょう。女神ウェヌス様はあなた方に対して、お怒りの意思を力でもって示されました。女神様が自ら力を示したので、もう隠せないですね。。。エヴァあなたに神の神託を伝えます。そこに、ひれ伏して聞きなさい!!」


 エヴァは、泣きながら震えている。地面に土下座し頭を地面にこすりつけている。ちょっと、すまないと思ったが仕方がない。このまま続ける。


「女神、ウェヌス様は、わたくしに神託を授けました。あなたのお父様が領主をしている領都で、女神様の言葉を伝える存在のフェアリー族を監禁したものがおります。そのフェアリー族を助けよと私に命じられたのです。それをあなた方が邪魔をしたのです。あなた方は、このままこの世から消えたいのですか?誰であろうと、女神の神託の邪魔をすることは、許されることではありません。」


「すいません、すいません。。」

 エヴァは泣いて謝りだした。


「私をそのまま領都へ行くことを許すのです。そうすれば、きっと女神様も多目に見ていただけます。」

「はい、許します。ごめんなさい。ごめんなさい。。私は、あなたの邪魔をしません。」


 ちょっと、薬が効きすぎたかな…。ごめんよ。。

 このくらいでいいかと俺は思い、護衛の拘束を解いてやった。すると、動けると思ったのか護衛がその場で座り込んでしまった。護衛の者たちもみんな震えていた。


 ふと、後ろを振り向くと、シルフィーも両手を地面について土下座して震えていた。


 あっ、シルフィーのこと忘れていた。。

 ごめんなさい。。



 そして、エヴァたちに、今日の事は誰にも話さないでほしい。そうお願いして家に返した。はぁ、明日から大変になるかもしれないなぁ。今日はゆっくり寝よう。






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