15 女神ウェヌスからの神託
7歳になった俺とシルフィーは、毎日特にトラブルもなく平凡に暮らしていた。俺の変化はというと、5歳のころから二段階ステータスがあがり、力や素早さが格段に上昇した。シルフィーも、料理の腕を上げ今では数十種類の料理を作れるまでになった。すでにお給金は1500ゴールド払っている。
7歳になった俺は、冒険者ギルドで特例として討伐依頼を受けることが可能となった。シルフィーを雇い続けるためには自分も働かないといけないから。もっとも、実力的には十分討伐依頼を受ける資格はある。それは、ギルドも認めている。
そして、その時は突然やってきた。あたり一面真っ白な空間に俺はいた。そう、あの方がいらっしゃる空間だ。俺は、あたりを見回すと、なんとシルフィーまでもがその空間にいた。シルフィーは突然周囲の景色がかわってパニックに陥っている。
「シルフィー、落ち着くんだ。ここは、女神ウェヌス様のおられる場所だ。」
すると、シルフィーの向こう側から歩いてくるウェヌス様を見つけた。俺は、あわててシルフィーと一緒に並ぶと膝をついて頭を下げた。
「異世界からの旅人よ、久しぶりですね。」
「はい、お久しぶりです、女神さま。この世界に導いてくれたこと、深く感謝いたします。」
「そんなに、硬くならなくてもよろしいですよ?」
「いいのでしょうか?では、失礼します。」
自分は、ゆっくりと顔を上げた。シルフィーは、目の前の方が女神様と知って顔を真っ青にしている。。当たり前か。。俺でも怖いのだからなぁ。
「突然、呼び出してごめんなさい。ちょっとあなた達に頼みたいことがあるの。」
「もちろん、女神様の頼みであれば可能な限り全力をつくしますよ。」
「赤子だったころ、あなたはフェアリーに会ったと思うのだけど、覚えてますか?」
「はい、覚えてます。」
「その子が、少しまずい状況です。悪い人に捕まっております。」
「確か、また戻ってくると言っていましたが、現れないのはその為でしたか。。」
「あなた達に、その子を助けてあげてほしいのです。」
「はい、自分もあのフェアリー族のシルキー様には、魔法を教えてもらいましたし、恩があります。是非、自分たちにお任せください。」
「よろしくお願いします。あなた達に祝福を授けます。それを褒美と思ってください。」
「ありがとうございます。」
「魔法を使う要領でステータスオープンと唱えると、祝福の詳しい内容を見られます。あとは、捕らえられている場所ですね。詳しいことは、ステータスの備考欄に記載しておきます。」
「はい、わかりました。」
「それで、人間の可愛い女の子」
「は、はい!」
「あなたには、竜の子を助けてもらえませんか?」
「は、はい。で、でも助けられてばかりですが。」
「あなたには料理スキル最大を授けます。それでサポートしてあげてほしいです。あと、アイテムボックスもあれば便利でしょうか?同じく祝福として授けます。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、深く深く頭を下げた。
気が付くと、もとの場所に戻っていた。あ、焦ったーー。今いる場所は、寮の部屋の中だ。
「アレク様、さっきのは一体。。」
「今のお方が女神ウェヌス様だよ。」
「ひえー、私、女神様と直接会話してしまいました。」
シルフィーはまだ混乱しているらしく、それ以上は何も聞いてこない。
「女神様からの神託だ。すぐに出発しなければ・・。」
「でも、学校はどうするのです?」
「解決するまでは、休学にする。しかし、準備だけでも一日はかかると思うけど。学校にも届け出さないといけないし、馬車で移動だとすぐに出発できるかもわからない。シルフィーは、旅の準備をしてて。自分も、旅の荷物の整理をしてるね。」
「わかりました。」
俺は、女神様に言われた通り、魔力を確保しステータスオープンと心でつぶやいた。すると、目の前に四角いスクリーンが表示された。そこにはステータスの詳細がびっしりと書かれていた。ちなみに、シルフィーにはこのスクリーンは見えていなかった。おそらく、自分にしか見えないのだろう。
項目は、力、素早さ、知能、幸運があった。しかし、数値だけ見ても比べるものが無いので、こんなものかとしか思わない。おそらく、人間の成人よりは数値は高いのだろう。わかるのはそのくらいだ。
魔法の所にはこう書かれている。火魔法、風魔法、水魔法、土魔法、雷魔法、光魔法
回復魔法は、光魔法の中にあった。結界は、土魔法に分類されていた。氷魔法は予想通り水魔法に含まれていた。闇魔法がないと言う事は、まだ何も習得できていないと言う事だ。呪いとか、影関係の魔法だろうと思う。影移動とかできるのだろうか?
特殊能力という項目もあった。その中には、ステータス最大があった。それと、今回追加されたステータス視覚化。あと、女神の祝福というのがあった。そう言えば、俺とシルフィーに祝福を授けると言っていた。シルフィーには、アイテムボックスと料理スキル最大が、女神の祝福によって追加されたのだと思う。
俺は、どんな祝福を貰えたのかと思って詳細をみると、そこには
特殊能力:知識の泉
器用スキル:最大
鑑定スキル:最大
と書かれてあった。知識の泉?前世の記憶でもよくわからない。詳細情報をみると、どうやら一度読んだ知識は忘れない能力らしい。受験生が欲しがりそうな能力だ。器用スキルというのはなんだろう?あまり聞いたことはない。手が器用になったってことでいいのだろうか?物作りには良さそうなスキルだ。鑑定スキルは、よく小説に出てくる物の価値を調べるスキルだな。これは便利だ。
そして俺も、旅の準備を急いだ。
「アレク様、私の方は準備できました。お昼の時間ですけど、食べてから出発しますか?」
「うん、食べてから出発しよう。」
シルフィーには、女神様から鑑定スキル、器用スキル最大を貰ったことを伝えた。そして、知識の泉という能力も貰ったこと、一度覚えたことは忘れなくなったことを伝えた。早速、シルフィーに旅の荷物をアイテムボックスに入れてもらった。
シルフィーの作ってくれたお昼ご飯は美味しかった。流石料理スキル最大だ。食べた時は、言葉が出なかった。本当においしいと思った時って、逆に何も言えなくなるんだな。流石女神様の祝福だ。これなら、たとえ一人になってもお店を出して成功できるレベルだ。
「シルフィー、料理がますます美味しくなった。ありがとう。」
「いえ、女神様のおかげですよ。」
そして、昼からは二人で学校へ行って休学届を出し、冒険者ギルドにはシルキーが捕らわれている町までの馬車が出ているか聞いて来たり、旅に必要な食材や物資を買い込んだ。こんな時はアイテムボックスは便利だ。
商人たちも、シルフィーがアイテムボックスに収納するのを見て、羨ましそうに眺めていた。この世界にもアイテムボックスは存在する。しかし、この世界のアイテムボックスは魔法であり、シルフィーのそれは能力である。両者は全く異なるものだ。シルフィーのは魔力を消費しないし、容量も制限がない。これだけで、たぶんシルフィーは攫われるには十分な理由だ。。俺は、シルフィーには常時結界を張っておこうと決心した。。
さて、馬車の出発は三日後らしい。なかなかすぐ出発の馬車はなかった。場所はこのリオの領主のいる領都らしい。確か、領主といえば三女が同じクラスメイトだったな。名前はたしかエヴァと言った。まぁ、今回の件は、領主とは関係ないだろう。たぶん・・。