12 魔法学校の授業。
宿屋でお腹一杯ご飯を食べた俺たちは、寮に帰ってシルフィーのお給金の話をした。
シルフィーは、日給1000ゴールドで納得してくれた。前世の給料の感覚だと、日給千円である。物価の違いもあるが、完全にブラック企業である。しかし、こちらの相場が1500ゴールドだと言うのだから、それほど悪い金額でもないと思う。もちろん、料理のレシピが増えてくると相場の1500ゴールド払うつもりだ。
ちなみに、こちらのお金は白金貨、金貨、銀貨、小銀貨、銅貨の5種類である。銅貨、10ゴールド。小銀貨、100ゴールド。銀貨、1000ゴールド。金貨、1万ゴールド。白金貨、10万ゴールド。前世では、金貨一枚が約10万円くらいだった気がする。こちらの世界は、金貨一枚1万ゴールドとかなり安い。金の含有量が少ないのかもしれない。
「シルフィー、台所とかはもう確認したの?」
「うん、でもご飯とかを炊くかまどとかはないみたいですよ。お水も川がないので、どこから汲んできたらいいのか・・・。」
うん、とりあえず台所に行こう。
台所に来てみると、現代の形とほぼ同じ台所だった。ガスコンロのようなところには、魔石がある。ここに魔力を送れば火が付くような感じなのだろうか?しかし、俺は魔力を体外に送り出したことなんかない。どうやって火をつけるんだろう。よく見ると、コンロの下にボタンがあった。それを押すと火が付いた。
「火が付いた!!なんですかこれはー。」
シルフィーが驚いている。そうか、これは魔道具だ。
「ここのボタンを押すと火がついて、もう一度押すと火が消えるみたいだね。俺も初めて見たよ。」
「すごいです。びっくりです。」
ということは、蛇口のように見える所のボタンを押すと・・・。
「今度は水が出た!!」
便利な魔道具だ。さすが、魔法学校だね。
「私、川までお水を汲みにいかなくてもいいのですか。こんなに楽をしてお金を貰ってもいいのでしょうか・・・。」
「いいんだよ。シルフィーは今まで苦労をしすぎだったから、女神様が助けてくれたんだよ。」
「いえ、私にとってはアレク様が神様です!!」
「いや、そこは女神様に感謝してね・・。俺はただの村人だからね。」
お風呂の方も確認したけれど、全部魔道具が付いていた。ボタンを押すだけで、お湯が出てきた。シルフィーはここでも驚いていた。洗濯も、お風呂場でお湯でやってねって言ったら泣いて喜んでいた。洗濯機があれば買ってあげたいんだけど、流石にそんな物はない。
しかし、調理の道具やお皿、タオルや石鹸、無い物がたくさんあった。明日、学校が終わったらシルフィーと一緒に買いに行こう。
「今日は、お風呂は俺がやるよ。」
と言って、俺が魔法で水をドンと湯船に出現させた。そして、火の玉を沸騰させない程度に調整して湯船に沈めた。少し熱かったので、また水を足す。
「よし、シルフィーから風呂入っていいぞ。すまんが、タオルは大きいのがない。このフェイスタオルで体を拭いてくれ。必要なものは全部、明日買いに行くから。」
シルフィーの方をみると、驚いた顔で固まってた。どうも、魔法を見たのも初めてらしい。こんな当たり前のことで驚かれると、反応に困る。
その後は、アレク様から先に入ってとか。風呂に入っていると、お背中流しますとか。色々あったけど、さすがに疲れてたので、風呂から出たらすぐに眠った。もちろん、背中も流させなかったし、寝る所も別の部屋だからな。
翌朝、俺が目覚めるとシルフィーはすでに朝ご飯を用意していた。と言っても、まだ何も道具がないから昨日の帰りに買っておいたパンとミルクだけの朝食である。
お給金は毎日渡すほうがいいのか、月末にまとめて渡すか聞いたけど、月末でいいらしい。俺は、朝食を終えると、服を着替えて学校に行く。シルフィーには体が調子が悪いときはすぐに言う事を徹底させた。無理は絶対に良くない。無理に仕事をして、あとで倒れたりして働けなくなったら元も子もないだろう?と言ったら納得していた。
さて、今日から初めての授業である。初めてと言う事で、特に実力のある者同士で模擬戦をするらしい。1人は俺だ。あのエルフの先生、俺に恨みでもあるのだろうか。
授業が始まり、俺たちは野外の練習場に来た。俺の相手は先生だった。確かに、普通の人間とだと多分相手にならないからかな。そして先生が何か呪文を唱え出した。すると、練習場の地面に魔法陣が浮き上がり何かの魔法が発動した。
「この中にいれば、本来のダメージを7割ほどカットします。死にはしないので全力でやっても大丈夫です。」
いや、3割で死ぬダメージだったらどうするのか!
「それじゃ、アレクシス君前へ。」
俺は、いやいや前に出る。
「では、ルールを説明しますね。使用していいのは魔法のみ。体術などでの、直接手や足で攻撃するのは禁止です。あくまで、魔法の授業ですから。それで、この魔法陣の外へ出たらその時点で終了です。棄権する場合も外に出てください。いい?」
「はい。」
「では、10秒数えたらスタートです。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10スタート!!」
俺は、魔法陣の直系の長さで、縦が3メートルほどの馬鹿でかい結界を真ん中に張った。これで、魔法陣の半分ずつ二つのエリアで分断される。
「な!? こんな事する生徒は初めてよ!!」
先生は、ファイアボールを2、3発打ち込んだが、結界はびくともしない。よく考えてみれば、先生の魔法も威力が7割減なんだよな。だったら、この結界は壊せないだろうと甘く考えていた。
「ふふふふふふふふ、なんか、楽しくなってきちゃったわ。ちょっと本気で行かせてもらうわよ」
先生は足を止めて呪文を唱え始める。すると、地面に魔法陣が浮き上がってきて上空に巨大な岩石が出現した。え・・・、あれってもしかして隕石とかそう言う魔法では・・・。
「これで壊れなかったら、大したものよ!!いけー、メテオ!!」
「ちょっ、ちょっとー、5歳の子供に何ムキになってるんですかぁ!!」
「うっさいわ、5歳の子供がこんな結界張らんわ!!」
「いや、5歳ですから!!紛れもなく俺5歳ですからーーー!!」
俺は、魔力を少し多めに使って、前方に結界を10枚ほど重ねていく。やばいやばい、あんなん食らったら3割でも死ぬわ!!
隕石が巨大な結界にぶつかると、すぐに粉々に砕け散った。うは、まじか。そのまま地面に突き刺さって爆発した。衝撃波が10枚ある結界をバリンバリンと軽々と砕いていく。あと、五枚ほど追加で結界を作ったが残り二枚まで砕け散って何とか助かった。俺の後ろにいたクラスの生徒も無事かな、と思ったら衝撃波は魔法陣の中だけで外には出ない仕組みらしい。
お返しに、俺は先生の足元に土魔法で大穴を開けてやった。落ちたところに大量の土砂をぶち込む。これでどうだ。しかし、結界を張ったらしい先生は何事もなかったように飛び上がってきた。
「落とし穴とか、セコイ技ね。」
「う、うるさいよ。。子供らしいでしょ。」
というか、俺ができる魔法は落とし穴、ファイアーボール、結界、水の塊を出す。このくらいしかないのだ。ああ、あと回復魔法で悪いものを除去するやつも使える。ああ、まだ竜巻があったな。俺は、イメージして、竜巻を作って先生に向けた。
「そろそろネタ切れかな?」
先生は、同じ竜巻で風を相殺してしまった。
しかたがないので、俺は魔法陣の外へ出た。負けだー。
「えー、逃げるとか無しでしょー」
「いや、もう使える魔法は全部使いましたし。。最も自信のあった落とし穴と、結界であっさり砕かれたらもう無理ですよー。怪我する前に、とっとと逃げますから。」
「わかったわ、これで終了にします。」
俺は、クラスのみんなのところまで戻ると、誰かが言った。
「先生、僕たちにはレベルが違いすぎて、全く参考になりませんでした。」
ですよねー・・。