1 プロローグ
1度、異世界ものを書いてみたくなって。。
俺は加賀 守、45歳になる。
バブル期に入社してちやほやされていたが、バブル崩壊後に会社はブラック企業へと変貌した。職業はプログラマーである。毎日残業で、終電で帰宅するのは普通の毎日だった。ある日、毎日の疲労が限界を超えて、椅子から立ち上がると同時に倒れた。享年45歳であった。
気が付くと、俺は真っ白な空間にひとりたたずんでいた。あ、これは駄目な奴だ。もしかして、俺って死んでしまったのだろうか。キョロキョロとあたりを見回すと、ひとりの女性が立っていた。
「残念ながら、あなたは過労で死にました。」
その女性は唐突にそう言った。小説ではよくあるシチュエーションなのだが、まさか自分がそうなるとは思いもしなかった。その女性をまじまじと観察する。髪は黒髪でロングのストレート。普通の人間のような容姿をしていて、とても整った顔つきで美しい。しかし、足元を見て考えを改めた。少し浮いているのである。これが神という存在なのか。
「はい、私は女神ウェヌス。この世界を管理する者。」
どうやら心を読まれているらしい。俺は恐る恐る挨拶をした。
「こんにちは、女神様初めまして。」
「はい、こんにちは。あなたは前世で無理をしすぎです。
もう少し体を大切にしてあげてくださいね。」
なんか怒られた。
好きで無理をしていたわけではないのだけど。
「それで自分はもしかして、転生とかするのでしょうか?」
「はい、あなたは不幸だったため、次の人生には幸せになれるように考えております。」
なんていい女神様なのだろう。これはあれか? チートとかいう力をもらえるのだろうか?異世界転生物のお決まりのパターンである。俺最強とか、俺、つえーーって奴だ。
「よくご存じですね、何か希望する力などはありますか?ひとつだけ願いを叶えます。」
きたーーー。これはよく考えて決めなくては。何がいいだろうか、魔法の才能をもらうか?剣の才能がいいか?不老不死とかもいいのかな?でも、不老不死は、小説では恋愛ができないとか知り合いを見送るのが辛いとよく聞くし、あまりよくないのかも。うーん、迷う。
「女神様、少しお聞きしたいのですが、次の世界には魔法はありますか?」
「はい、魔法が存在する世界です。」
魔法があるのか。不老不死になれる魔法とかないのかな。
「ありません。」
ないのか。自分で魔法を好きに作れる力とか駄目かな。でも、そんな力をもらっても、不老不死の魔法を作ることは不可能なんだろうと思う。うーん、悩みながら俺はもう一つ質問をする。
「女神様、次の世界は経験値があって、レベルが上がると強くなるみたいな世界でしょうか?」
「いいえ、レベルは存在しません。ゲームでいうところの、ステータスは存在します。」
ステータスは存在するのか。それは良いことを聞いた。
「ではステータスのすべてを、はじめから最大値でという願いは可能でしょうか?」
「可能ではありますが、種族が人間と限定されるので、人の中での最大値という制限が付きます。」
なるほど。たとえば、エルフや、魔族、ドラゴンなどには劣るわけだな。それだと、ドラゴンに出会った時に速攻で殺されそうである。うーん、なかなか良いのが思いつかない。
「えーと、新しい世界では種族は人間限定なのでしょうか?」
「いえ、あえて別の種族で生まれてみたいという希望も叶えます。」
「え、それは願い事の一つにカウントされるのですか?」
「いえ、それくらいはサービスです。」
この際、人間でなくてもいいのでは?たしかドラゴンって、人の姿になれるとか聞いたこともあるし。ドラゴンと言えば世界で最強な生物と思う。
「ちなみに、新しい世界で一番強い種族は何でしょう?」
「それは神ですけど、あなたはなれません。神以外ですと、竜神族という種族が一番強いと思われます。」
そりゃ、神にはなれないだろう。竜神族か。
「竜神族はひとの姿に変身とかできますか?」
「もともと人の姿に角が生えています。能力として、竜化というのがあって竜に変身できます。」
それが良くないか?強そうである。
「では、竜神族の男性でステータスを種族での最大値にお願いします。」
「わかりました。それで最終決定でよろしいですか?」
「はい、お願いします。」
あ、できれば次の人生はのんびりしたいな。
「すみません、次の人生は赤ん坊からですか?それともいまの年齢くらいからですか?」
「転生ですので、生まれ変わりとなります。赤ん坊からスタートですね。」
「では次の人生はのんびりと過ごしたいので、戦闘が無いような場所に生まれたいです。」
「わかりました、そのようにしましょう。ただ、赤ん坊からステータス最大値はさすがにおかしいので、成長と同時に比例的にステータスを上げていくようにします。最大値になるのは大体15歳くらいで設定しておきます。よろしいですね?」
「はい、それでお願いします。」
これで大体のことは決まった。女神さまは目を閉じて何やら呪文のようなものを唱え始めた。すると、自分の姿が光に包まれていく。まぶしくて目を閉じると、自分の体が自然と浮き上がる感じがした。もうこのまま転生させられるのかな。
「女神様ありがとうございました。次の人生はのんびり幸せになっていこうと思います。あと、女神様はとても美しいです。」
呪文を唱え終わると、女神さまはにっこりと微笑んだ。
「あらまぁ、ありがとうございます。幸運値はステータス最大値の恩絵は受けない予定だったのですが、サービスで最大に上がるように変更してあげます。」
そして、女神さまは手を振ってくれた。
次の瞬間、ふっと意識を失った。