1/5
プロローグ
いつの事だっただろうか…
朧気にしか思い出せない。
しかし、忘れられない。忘れてはいけないとさえ
思えるそんな
「思い出」
見事なまでに咲き誇った花畑で、
一人の女性が私の事を呼んでいる。
聞いていると自然と落ち着く。そんな温かい声に
つられて駆け寄って行く。
勢い余って飛び込んできた私を
その人は優しく、それでいてしっかりと受け止めてくれた。
(温かい、良い匂い)
そんなことが頭の中に浮かんだ。
「―――――」
その人が私に何かを言っている。
そして優しく私に微笑んでいる。
このときに言っていた言葉がどうしても
思い出すことができない。
そこがどこであったのか何時の事だったのか。
ただ思い出すことができるのは、
咲き誇った花々とそのひとの笑顔だけだ。
あぁ、この夢をいつ思い出すことができるのか。
そんないつもと同じ夢を見ながら
いつもと同じ朝を迎えた。