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異世界召喚魔女人生  作者: 春浦 徹
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異世界転移

書き始めたは良いもののファンタジー知識が殆どないという残酷な無知さですがどうぞお付き合いください


「なんてのどか何だろう。」

 愛子は雲ひとつない、真っ青な空を眺めながら、もしかするとこれは私の夢が叶ったのかも知れないと考えることしかできなかった。時間は少し前に遡る。






 ――毎日が嫌だった。

 愛子にとって嫌なことはこの世の全てであった。学校に行けば真っ黒に染まった机が待っているし、椅子には白い液体が広がっていて床に落ちている。持ってきた雑巾でソレを拭いて座るも机の中はゴミ屑だらけで何かが動き回っている。幸いなことに虫に対して苦手意識は無いのでこれくらいはどうってことはない。

 愛子の様子を傍観しクスクスと笑う生徒はいるが、愛子を助けようとする生徒はいなかった。背中に投げられる消しゴム、シャープペンシルの芯で刺された傷跡、助けないのは生徒だけではなく教師もであった。だからといって家に帰れば救われるという訳でもない。家庭内環境すらも破綻している彼女には誰一人味方がいなかった……――それが日常。

 放課後になれば愛子をいじめている主犯格の三人が人気のない場所へと誘い、飽きるまで罵声や力を振るう。毎日、毎日飽きもせず繰り返される行為。


あぁ、こんな時に何か一発逆転になりそうな事でも起こればいいのに。


 愛子はフと、自嘲気味に口角を上げる。

 その時、愛子を含めた四人の立つ真下が突然光り出した。金色の眩しい光と共に、金色の線が彼女達を囲み、地面に何重もの線と円を描く。不気味な現象に逃げ出そうにも動くことが出来なくて、ただ叫ぶことしかできない主犯格の三人は愛子の仕業だと思ったらしい、「テメェ、何した!」なんて見当違いの罵声を浴びせてきた。

 勿論この状況についていけないのは愛子も同じであった。愛子から言わせてみると、こんな状況初めてだしファンタジーにでもありそうな展開を目の当たりにして驚いているところだというのに……いや、実体験中とでも言うべきかもしれない。そんなところではないだろか。

 喚いても叫んでも不思議な線は止まることなく地面に複雑な魔法陣を書き上げ、最後に愛子の周りを小さく囲ってから一層眩い光を放った。お互いが見えない程の眩しさに目を開けることが困難になりギュッと力の限り目を瞑る。その時、地面が揺れる音がしたが不思議とその感覚はなかった。

 次に目を開けた時には漫画や小説の展開よろしく全くの別空間にいたのだ。地面も土からツルツルとした硬い石が敷き詰められているし、壁も天井もそこかしらが白く時折金色の装飾が散りばめられていた。続いて目を開けた主犯格三人も口々に不安と期待の声を上げる。いうまでもない、彼女達は先ほどの魔法陣のようなもので違う空間へと移動させられたのだった。


「おい、テメェの仕業じゃねーだろうな!」

「ち、違う、私もしらない」

「じゃあ何でこんなとこに私たちいるのよ?!」

「そ、そんなこと言われましても……」

「こいつが何かやったんじゃ……」


 不安から怒りへ、三人の矛先は愛子へと向けられた。私だって正直意味がわからないのにたまったもんじゃない! と愛子が必死に否定している時、大きな咳払いと共にけたたましいラッパ音が鳴り響く。とても広いこの空間で音が反響し、彼女達は耳を塞いで兵隊達と、彼らが敬礼をする先を見た。そこには普段ではお目にかかれないような大きな階段を、これまた普段では到底見れるはずのない煌びやかなドレスやマントで着飾った男女がいたのだ。

 呆然とその様子を眺めている間に、だだっ広い空間の中、目の前に金色の豪勢な造りをしたテーブルと椅子が用意されて行く。燕尾服の紳士達がよく磨かれた銀食器を用意し、席に着いた男女の前に背の高い帽子を被ったシェフが甘い匂いのする菓子を並べて、メイドがカップにティーポットの中身を注いだ。優雅に階段をおりた男女はゆっくりと椅子に腰掛け、出された飲み物を口へと運ぶ。その動作はとても上品で、こんな状況でなければ何時までも見惚れてしまっていたかもしれない。

 暫くしてカチャリとカップが皿の上に置かれた音とともに、見事な髭の生えた貫禄のある男が私たちを見てニコリと笑った。その笑みは彼女達の不安を取り除くような安心感を得れるようにも感じられ四人は力を抜きその場にしゃがみ込む。


「ようこそ、勇者様方、よくおいでくださいました。我らの城へようこそ! 歓迎いたしますぞ!」


 愛子達を勇者と言い、自らを王だと名乗る男はとても嬉しそうに笑い歓迎の言葉を口にする。そして両手を叩くと先程と同じように、燕尾服を着た紳士たちが赤い絨毯を運び、王の前に広げた。メイド達は腰が抜けて立てない彼女達を支えながら絨毯の上に座らせる。その様子に愛子は時代劇によく出てくる、まるでお奉行様に会うとき時みたいだななんて考える余裕は出来てきたようだった。


「伝説の勇者がこんなに若い者達だったとは」

「おや、王よ。一人多くありませぬか?」


 王は愛子達一人一人の顔を見ながら簡単な国の情勢に、何故勇者なのか、何故召喚されたのかそんなお国事情を自慢混じりに話す。一通り満足した様子で、王は髭を触りながら彼女達の容姿から自身が思っていたよりもずっと若いことを漏らした。その時ようやく隣で黙って聞いていた妃が口を開ける。彼女の言葉からすると、どうやらこの国が行った召喚術で召喚される勇者は三人のはずだったらしい、現に歴史書には四人との記載がなかった。しかし、実際この世界に召喚されているのは愛子を深めて四人だ。愛子と、愛子をいじめていた三人は確かにここに居た。


「おかしい、四人であるはずがないのだ……」

「王様、一つよろしいでしょうか。」

「申してみよ」


 場内がざわめく中、四人のうちの一人、唯一の男子である馬渡修平が声を上げる。王から発言の許可を得た馬場の顔は先程までの眉の下がりきった情けない顔ではなくなっていた。それどころか臆することなく、何故か自信ありげな様子で馬場の左手に座っていた愛子を一瞥し……――嫌な笑みを浮かべた。その様子に彼の右手にいた女子二人が把握しきれていない顔をしてたのできっと、彼の独断なのだろう。


「この中のはみ出し者はこいつでございます」

「なんだと?」


 してやったと言わんばかりにニヤリと笑った馬渡は愛子を指差し、愛子がこの世界に不必要なものであると主張したのだ。その内容は出鱈目であったが彼はそれらがさも真実のように声色を変えて喋りつくし、最後に「私どもはこいつを罰していた所でした。こいつは普段からとても素行が悪く、重罪ばかりを犯しながらのうのうと生きており、人にとって害しか与えない者なのです。」と締めくくった。それを聞いた王は言葉を鵜呑みにしてしまう。


「そのような大罪人であったか」

「私どもを鑑定すればその証拠が分かるでしょう」


 わかってる、私に不利な方向に進んでることだけは分かる。愛子は冷や汗を流す、この状況で何も反論できないのは彼女の性格も関係しているのだが、実際は馬場が愛子の三つ編みを思い切り引っ張っているからだった。王に見えないように、しかし強く千切れそうな程の力で。反論すればどうなるかくらい彼女には簡単に予想できた。だから痛みに耐えて黙っているのだ。

 馬場が口にした「鑑定」という言葉が今この場でどのように使われるか分からないが、とにかく馬渡の言う出鱈目を信じた王は、後ろに控えていた神官達に愛子達を鑑定するよう命じた。神官たちは身の丈以上の杖を私たちに翳して一斉に声を揃えて呪文のような言葉を唱えた。すると愛子達の前にA3ほどの大きさになる透明なモニターが現れる。そこには國枝愛子……彼女自身の名前が書かれていた。さらにその下には年齢に身長体重……個人情報がびっしりと記載されていたのだ。そして彼女の職業欄には魔女の二文字が。


「本当に勇者様だ……!」

「本当に、本当なんだな」

「勇者様万歳!」

「じゃあ後の一人は?」

「こいつは……魔女?!」


 ステータスというらしい、馬渡たちの透明なモニターをみた神官たちが口々に声を上げて勇者の誕生を再認識し歓喜する。鑑定という魔法によって馬場を含めた三人が勇者であることが証明されたのだ。順番に三人が勇者だと確認した神官の一人が、愛子のステータスを見て小さな悲鳴をあげた。場内の視線が愛子のステータスに集まる。誰もが愛子の職業欄を見て唖然とし、口をあけ顔色が悪くなっていく。この世界の事情を全く知らない愛子でも彼らの動揺っぷりで、悟った。

――魔女とはこの国にとって、厄介な存在なんだということが。


「魔女て……」


 場内は混乱し、すぐさま愛子を衛兵が囲み、神官達が杖を突きつけ戦闘態勢に入った。焦りと沈黙の中、不安の色を隠せない王たちを宥めるかのように、愛子の隣にいた馬渡が左手で私の頭を強く掴んで地面に押し付けた。愛子はそれに反応できずまともに地面にたたきつけられてしまった。馬場はさらに力を込めて愛子をねじ伏せる。馬場の内心は喜びにあふれていた。愛子のことを貶めるための出鱈目だったが、まさか本当に愛子がこの世界にとって排除すべき存在だとは思っていなかったのだ、なんて好都合なんだろうと。そうと分かればこの場で排除するべきだと考えたのだ。彼にとってそれ程彼女は消してしまいたい存在であった。

 馬場は深呼吸をし、顔をあげ満面の笑みを作る。それは愛子を排除できる喜びなのは場内を安心させるためかは分からないが、「王よ」と震えが伝わらないようゆっくりと声を大にして宣言した。


「ご安心ください、王様。この勇者である私にお任せください」



そんな大層なものはまだ書けません

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