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3話 頂点、現る

 しかし、レントはやってきた。チヒロがとうに捨てた約束を果たすために。


「久しぶりだな、チヒロ」


こちらに歩み寄ろうとするレントと、茫然として動けずにいるチヒロの間に割って入ったのは、ケイコだった。すでにほかの生徒と先生は姿を消し、あたりにはレント、チヒロ、ケイコの3人しかいなくなっていた。


「お前、チヒロの友達か?」

「気安く話しかけるな。勝手に学校押しかけて騒ぎ起こして、あげくチヒロに何するつもりだ」


ケイコに笑いかけるレントに対し、ケイコは強気の姿勢に出る。さっきまで逃げようといっていたのがウソみたいだ。


(なんかよくわかんねえけど、チヒロと戦いたいとかなんだよこいつ……ここでチヒロを置き去りにしたら間違いなくチヒロがやばい)


守らないと。その思いが、ケイコの中の恐怖を押さえつけていた。


「勝手に騒いだのはそっちじゃないか…」

レントは困ったというような表情で頭をかいた。チヒロはそんなレントの腕を見て、初めて気づいた。レントの腕に、薄くだが多くの傷跡が付いていることに。


(ううん、あれって……)


チヒロは目を凝らす。レントの腕には傷跡ではなく、魔法陣が描かれていたのだ。


 魔法は、魔法陣を介して力を行使することによって発動する。基本として魔法陣が描かれたものには本などの紙媒体や、金属に掘られたものが主流だ。人体に描くというケースは極めて珍しい。


「とにかく、あたしはこれでも風紀委員のはしくれだ。お前を黙って見過ごすわけにはいかない」

「勘弁してくれよ。俺はチヒロ以外と戦うつもりはないし、まして相手を傷つけるだけの勝負なんかしたくねえよ」


胸ポケットから生徒手帳を取り出すケイコに、レントは困惑したように両手を顔の高さに挙げている。魔道学園の生徒手帳には、簡易ではあるが護身用の攻撃魔法陣が描かれている。

「あまりあたしらを……魔法学園の生徒をなめるな!」

ケイコが生徒手帳をかざすと、生徒手帳から青白い光が灯る。その光は炎へと変わり、レントに襲い掛かった。


「レント‼」


赤い炎がレントを包んだ……ように思われたが、炎が消えたとき、そこにレントの姿はなかった。目を見張るケイコの肩を、誰かの手がやさしくたたく。


「これでわかったか?」


「……チヒロに何する気だ」


額に汗をにじませながら、ケイコはなおもレントに対する敵対心を弱めない。両足を包む魔力を消滅させてから、レントは答えた。


「それは、チヒロが一番よく知ってるさ。なあ?」

レントはそういうと、視線をチヒロに視線を飛ばす。チヒロはレントと目が合うと、視界を遮る前髪を手でかきあげる。

「レント……」

「さ、勝負しようぜ。一緒に入学できなくてごめんな。なんせ、去年俺は……」


「雄射場レント君、だね?」


ふいに、レントの話を遮る声がした。厳かで風格があり、それでいて悪寒を感じるような声。声のほうを向くと、そこには一人の女子生徒がいた。


「なんで俺のことを知っているんだ、とでも言いたそうな顔ね」

「驚いた、俺はエスパーと会うのは初めてだぜ。誰だお前?」


腰まで届く長い黒髪を揺らしながらこちらに歩いてくる、一人の女子生徒。背後には数人の生徒を従えている。蒼色の瞳は鋭くレントをとらえている。


「失礼な男だ。彼女のことをご存じないとは」

「その程度の情報量で入学させてくれなど、厚顔無恥甚だしい」

女子生徒の後ろにいた男子生徒と女子生徒が、それぞれ口を開く。二人ともレントに厳しい視線を向けている。


「仕方ないわ、二人とも。この男は一年間、ある事情で情報の一切を遮断だれていたのだから」

「……どこまで知ってやがる」

「さあ、どこまでかしら?試してみる?」


女子生徒の態度に、レントは眉間にしわを寄せ舌打ちする。チヒロとケイコはただ茫然と成り行きを見守るばかりだったが、ここでケイコが口を開く。


「あ、あの、会長……こいつ……じゃなくて、この人は一体……?」

「会長?」


ケイコの言葉委反応したのはレントだった。

「あら、失礼。自己紹介がまだだったわね」

蒼い瞳の女子生徒はつややかな唇をわずかに吊り上げると、自らの名を口にした。


「私は凛城亜矢。この国立魔道学園の生徒会長よ」


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