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幕間 異文化交流は慌ただしく

ほぼ二年ぶりという暴挙。もし楽しみにしていたという方、誠に申し訳ありません。幕間なのでいつも以上に短いです。

夜も深まり始めた為、とりあえずナターリアには風呂に浸かってもらう。一から溜めると少し時間がかかるので、魔法で沸かして風呂に流し込んだ。うむ、魔法は便利だ。

そして風呂上りに全裸でうろうろしない事だけを私は切に願う。

「お風呂なのに何でナタリーさんだけが入るの? 僕たちも入ればいいのに」

ゼルがきょとんとした顔で疑問を投げかけてくる。ええい実年齢2315歳、人間年齢換算19歳よ小首を傾げるな。

「……この世界での風呂というのは、普通は男女別々に入るものだ。一緒に入る場合もあるにはあるが、一般的ではない」

頭痛を覚えながら説明していると、ますます首を傾げてしまって、私もつられて思わず首を傾げる。

「ええと? こう、分かれてないの? 女性と男性とかでさあ?」

言われた言葉に対して暫し固まる。

そのまま反対側に首をもう一度傾げて、目を閉じ黙考。

風呂は風呂でも銭湯の事か……!

「ややこしい」

「え、何が!?」

「ほぼ全てが」

「え、何で!?」

ショックを受けているらしいゼルを放っておいて、どう説明したものかと考える。

今まで疑問に思っていなかったが、改めて考えてみると確かにそうか。『世界』によっては文明も環境も違う筈。喋る言葉も違う筈なのに気付かなかったとは私も大分平和的な考えに溺れているな……。

ちと不安になる。

「この『世界』でいう風呂というのは……そうだな、一人用の銭湯と理解したらいい。一般的な家は狭いので、風呂は一つあれば充分だ」

「あー成る程成る程ー。じゃあ順番こなんだね。え、でも凄いね、お家にお風呂があるんだ! 凍れる季も直ぐに温まれるねぇー。いいなー」

実年齢2315歳というのは嘘だろう。誰か嘘だと言ってくれまいか。

順番こという言葉に一瞬意識を遠くに飛ばしていると、耳に届いた言葉にハッとする。何だ? 凍れる時? 時間の事か?

「一つ聞くが凍れる時とは時間の事か?」

「時間? ううん、巡る季の事だよ。芽吹きの季、日照りの季、実りの季、凍れる季の四つの季の事を巡る季っていうんだー」

成る程、成る程。時ではなく、季という事か。音だけだと分からぬものだな。

「巡る季……把握した。こちらではそれを四季という。芽吹きの季は春、日照りの季は夏。実りの季は秋で、凍れる季は冬という。それら四つの季節が順に巡ってくるのだ。それだけでなく春夏秋冬という言葉もあって、非常にややこしいと私はいつも思っている」

「シキ……シュンカシュウトウ……うーん、なんか不思議な響きだね。呪文みたいだ」

「唱えたところで何も起きぬがな」

感心した声を出しているゼルを眺めながら、やはり冬は死活問題かと考える。

今は人の姿をしているとはいえ、竜王。突き詰めてしまえば爬虫類……寒いと活動停止するのだろうなあ。少し見たくもある。寒い所に行く機会があれば、貼るカイロを顔に貼り付けてやってもいい。

「……ねえリューヤさん。今なんか蜥蜴とか思ったでしょ」

「いや?」

爬虫類とは思いはしたが。

「…………うーん……気のせいかなぁ?」

年若い竜王は眉を寄せながら首をかしげる。残念。勘は鋭いが、捻りが足りぬな。

さてコーヒーでも飲もうかと立ち上がった瞬間、ナターリアの声が聞こえた。

「お風呂、ありがとぉー! いい湯加減だったわあ」

「あ、ナタリーさんあが……」

言葉を切ったゼルが、顔を真っ赤にして俯いてしまったのを横目で確認してしまった。空気と化してしまっていたルマンは呆れ顔でまたですかと言いたげだ。

嫌な予感しかない。半裸か!? それとも全裸か!? どっちにしても嫌だが。

ばっと声の方に顔を向ける……が、想像していたのとは違う光景が眼前に広がる。

ナターリアは、サイズの大きめな黒い長袖シャツを羽織りつつ、ズボンを履いていないままリビングに立っていた。

おや、これは……確か知っている気がするぞ? 何だったか……嗚呼、確か。

「思い出した。彼シャツという奴だ」

「ハルトくん、かれしゃつってなに?」

口に出てしまっていた。

「確か今のナターリアの姿の事を指した言葉だったような気がする」

私の言葉に自分の姿を確認し始めるナターリア。そしてとうとう顔を両手で覆ってますます俯くゼル。ふと気が付いたかのように口を開くルマン。

「ナタスウィーリア様……恐れ入りますが、貴女様がお召しになっている服は……不肖このルマンめの物にございます……」

「あれ? これルーくんの? ごめぇん、大分前から寝る時に着ちゃってたわあ」

この女神は常日頃からルマンの近くに居るのだろうか。それともルマンが付いて回っているのだろうか。

どちらにせよ普通は自分よりサイズの大きな服は着ないと思うのだが。

「は……破廉恥だよー……」

真っ赤な顔で力なく呟くゼルの旋毛を眺めながら、思わず呟いた。

「思春期竜王がいるのだから乳繰り合うのも大概にしたまえ」

「「乳繰り合ってない」」

女神と従者には即刻否定されたが、思春期竜王は、僕は今思春期なんだっていう顔をしている。

いや、信じ過ぎるのもどうかと思うぞ?

「とりあえず、ナターリアよ……きちんとした服を身に付けたまえ」

「これ以外まともなのないもぉん」

「……ナタスウィーリア様」

「ひえぇ……」

とりあえず誰か助けてほしいと思った私は悪くないと思う。

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