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折り目正しく自己紹介から

初投稿です。至らない点ばかりですが、よろしくお願いいたします。

俺の名前は夕凪穹。

あ? 知ってるって? いいんだよ、改めてなんだよ。物事には順序ってものがあるんだから黙って話を聞きなさい。

それでだな……ちょっと俺の話をしたいんだけどいいかな? いいよな? いいって言えよ。

うん、ありがとな。

そして、基本情報として俺達がいるこの世界は、剣も魔法もない、不思議な生き物とか、魔法生物がうろうろしていない、極々平和な世界っていうのは、よく知っているよな?

え? 実は連れて来られてるのもいるって? 誰だ連れてきた奴。剣や魔法がないんだから、暴れだしたらどうするんだ。

あ、お前が何とかする? ああ、うん、だろうね……。

雰囲気どや顔するんじゃない。何なんだお前の表情筋。死滅してるんじゃないのか。

……話を戻すな。で、面白い事に……というより不思議な事にってなるのか? 剣も魔法もないのに、必要のない自分自身のステータスが見れるんだよ。あ、自分自身のステータスしか見れない、が正しかったな。この世界では。本当に必要あるのかなあ、このステータス。

まあいいや。でな、俺が言いたいのはここから。俺は、自分自身のステータスが見れない。その代わりに、周囲のステータスが見れる。だから、うん、お前がこの世界の人間じゃないっていうの、実は俺にはバレバレですー。あ、隠すつもりもなかっただって? お前って本当いい性格してるよな……。そういえばあの人も隠す気一切なかったみたいだし……なんなの異世界の人達って。

……昔は俺が幼いのを良い事にぽろぽろ他の世界の話とか、魔法とか行使しがって。俺は大きくなったら魔法が使えると思い込んだんだからな!! まあ、いいや……。とりあえず今、誤魔化す方の身にもなれよ。

……ちっちゃい頃から俺の世話を焼いてきたなら……やっぱり知ってたんだよな……。

なあ、これからも黙ってて欲しいんだよ。この能力。

うん、今まで黙ってくれててありがとな。何かお礼が出来れば……パパって呼んでくれだって? はは、顔面を重点的に殴るぞこのパードレめが。その無表情イケメンフェイスをぼっこぼこにしてやるよ。

……うん、まあ、ありがとな。また、俺の話を聞いてくれると嬉しい。





……そんな事を言ったのが3日前。あれはフラグというものでしょうか。

この世界は今は何故か、剣や魔法の世界に変貌しています。顔も知らない天国の父さん、母さん元気ですか? 俺は元気です。相変わらず人のステータスばかりが見える毎日です。わーたのしー。

原因は隣にいるこいつ? 無実無実。変貌した時は、俺達は本屋で単行本を選んでた。あいつは何かよく分からない本を手に取ってた。何とか写本だとか言ってたけど何なんだアレ。訳の分からない絵が……え? あれ文字なの?

まあ、そんな話はどうでもよくて……こいつが言うには魔王レベルの奴が動いたなとか言っていた。どうやら動いたのは複数の模様。穏やかで平和な世界を返しやがれ。

全く悪くないのに、俺は思わずこいつを殴るのであった。ごめん。




私の隣で酷く唸っているこの世界の親友兼養い子は、いきなりの『世界』の変貌に戸惑っているようだ。可哀想に穹。

因みに今はカフェなうと言ったところだろうか。……うむ。私にはいまいち似合わぬようだ。物凄い顔で見られた。その顔で私を見るのはやめようか。

因みにここの店はカフェオレがとても美味である。どうでもいい話だが、カフェラテとカフェオレの違いとは何だったろうか。

とりあえずそれは置いておく事にして、何故今になってという気持ちでいっぱいではある。正直……冥王、魔王、魔王、竜王、異世界の神が一気に動いたらこんな事になるのは自明の理だろうに。何も考え無しに動きおって。だが、もしや…………いや、まさか、な。

私も? 随分なご挨拶だな。私は無実だ。何もしていない。

寧ろあの穏やかな世界が好ましかったというのに。まあ、残念ながらと言うべきか、やはりと言うべきか……このような世界でも、何処かで戦争は起こっていた。まあ仕方あるまいな。生きとし生ける者は、争いをするものだ。それがどんなに些細な事でも。

まあ、いいだろう。

とりあえずここが剣と魔法の『世界』となった。それ自体はどうする事も出来ぬので仕方がない。仕方がないのだが……『世界』がそれに急速に順応しようとしている事が問題だ。順応するにしても、普通ならもう少し日数がかかる筈なのだが……。やはりあれらが一斉に動いたのが原因だろうか。

これは由々しき事態だ。穹がそれに適応してしまったら、穹が傷付いてしまう可能性が跳ね上がる。それは非常に困る。

何故? 考えてもみたまえ、この『世界』は自分自身のステータスしか見れぬ『世界』の筈なのに、唯一他者のステータスが見れるという事の異常さを。

そう。人は、自分達とは違うもの……異端や異常なものを排除したがる。

彼は他者のステータスを見れる代わりに、自分自身のステータスを見る事が出来ない……他者に、自分自身のステータスを見せてしまうという異常を抱えて生きている。まあ、私が上手く隠しているのでそこら辺を歩いている普通の一般人となんら変わりなく見えるがね。

因みに穹はレベル3。攻撃力10、防御力12、魔力0、素早さ13という、まあ一般的な人間だ。……人外の者や、剣や魔法が使えたり出来るようになった人間が牙を剥いて来ても、対処できぬまま命を落としてしまうような、ただの人間なのだ。

私はこのどうしようもないくらいこの『世界』から嫌われた穹を、守ると誓った。

不必要極まりないが、平凡な人間の一人や二人を守り抜く力が、幸い私には備わっ痛っ?

……今、何故に私は殴られた……? 私の心の声が聞こえたのか?

とりあえずじいと見詰めたら、おぼぼぼぼとか訳の分からない声を出し始めて戸惑う。……大丈夫か?




うわあびけいのむひょうじょうこわいよ。

思わず走馬灯が流れかけた。

え、そんなに痛かったのか? めっちゃこっち見てる。感情の見えない瞳がめっちゃこっち見てる。無表情のままめっちゃこっち見てる。怒った顔じゃないのが、より一層怖い。

「おぼぼぼぼ」

やばいよ、怖いよ、こっち見んなよ。悪かったよ、殴ったの。謝るからこっちを見んなよ。怖いよ。

「……大丈夫か?」

「お前の顔が怖い」

顰めっ面をされた。わざとか。怖さが二割増したぞ。

やばいよびけいのしかめっつらこわいよ。むひょうじょうよりかこわいよ。

深いため息一つをついて、気を取り直したように話しかけてくる。

「……で、いきなり私を殴ってどうしたというのだ?」

「八つ当たりです」

「……?」

「八つ当たりです」

「解せぬ」

私の耳がおかしいのかなみたいな動作をされたので、二回も言いました。

ため息をつかれた。怒られないだけ、ましだよな!

「八つ当たりで人を殴るものじゃない。私だから咎めはせぬが、下手に私達のような者の矜持を傷付けてでもしてみろ…………うむ、想像したくないな」

やめて! 俺も想像したくない! 良くない未来しか見えてこない! 粉微塵になってる未来しか見えてこない!

「まあ、何にせよ」

肘をつき、アンニュイなため息を溢しつつ、お洒落なカフェの窓際席で、変貌してしまった世界を見ながらあいつは呟いた。

「今まで通りお前の子守りを続けていくつもりだから、案ずるな」

子守り発言に再び殴った俺は悪くないと思う。

「痛い」

「大して痛くないくせに!」

「いや、流石の私でも全力で殴られたら多少は痛い」

「何か腹立つ。何様なの? ああ、いやいや魔王様だったね」

「それ以外の何者でもないぞ」

「腹立つ」


コイツの名前は皇龍夜。本名はラインハルト・ルーズィン。

俺の親友兼育て親であり、ここじゃない異世界の魔王様だ。

そんな俺達の、お話。

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