世界で最も理想と思える異性
私にとっての世界で最も理想と思える異性って、いったいどんな人だろう・・・
その問いの答えが目の前にいる。
そう思えるほど、その人のそばにいるだけで、これ以上の人は現れることはないと感じた。
どうせこの場でしか話すことはないのだから・・・
きれいな言葉を並べようとは思わず、自分の感情をその人へぶつけよう・・・
緊張はしているものの、不思議と開き直って、気持ちを伝えることができる気がしていた。
その人は、少し微笑みながら、自分を見つめ、私に答えてくれた。
「もちろん」
たくさん話したいことがある。
いや、まずはこの人に見惚れていたい。
この人とずっと一緒にいたい。
「私のこと好きですか?私の世界で一番大事な人になってもらえませんか?」
初対面の人にいきなりこんな質問をするわけにはいかない。
しかし、我慢することができず、言葉が口から出ようとしている・・・
この人が私にそうさせている・・・
いくつもの感情が同時に混みあがり、すべてを満たしたかった。
ただ、そういった考えが頭をよぎるのとほぼ同時に、その人が話し出した。
「ここにはよく来られるんですか?」
「いえ、今日が初めてです。あなたは?」
「私は時々ですね。」
周りからたくさんの声が響き、少し相手の話が聞こえなくなる。
ただ、逆に大勢の中に自分たちだけの空間を作っている気がした。
その人の知り合いは、私がその人と話していることに気づくと、戻ってこようとはせず、別の人と話し続けている。
誰にも邪魔されることもない・・・
店内は薄暗かったが、意外に広く、たくさんの男女がいた。
みな、自身が興味をもった人物に話しかけている。
店の片隅には、音楽を演奏している人たちが時に穏やかで、時に場が盛り上がる曲をかなでていた。
この店の前には、フォーマルなスーツを着た体格の良い男性が立っていた。
この男性に案内され、客は店の中に入ることになる。
この店があるホテルの周りには、近未来的なビルの光が輝いていた。
左側には外壁がいくつもの透明の三角形のパネルで構成され、わずかに丸みを帯びたビルが、ネオンで三角形のパネル部分が赤く輝いていた。
そのすぐ前には、同じく屋根が複数の三角形のパネルで作られた、透明の丸い形の地下鉄への入り口がある。
またその道路を挟んだすぐ向かい側には、緑色の光を放つ、サーカスのテントのような形のエメラルド色のビルがあり、複数の人たち、主に若い男女が出入りしていた。
そんな異世界を思わせる街の中で、自分は今、世界で最も理想と思える人と一緒にいる・・・
これからその人とこの街を楽しみたい・・・
その気持ちが満たされていく・・・
大好きと思った人と一緒にいた時に今まで感じたことのある、どんな気持ちよりも満たされていた。
あの胸の高まりを抑えることができず、一緒にいるだけで気持ちいい・・・
おそらく、すべての人が求めるその気持ちを、ただこの場に、その人と一緒にいるだけで、今までのどの時間よりも速く、そしてはるかに満たされていく・・・